テラーノベル
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しばらくすると、屋台が並ぶエリアがみえてきたので、席をとって休憩することにした6人。
「なんか買いに行く人いる?」
「あったかいの飲みたいかも。私、並んでくるけど、みんなは?」
「私もほしい!」
「じゃあ、俺も」
「みこととなつの分な。じゃ、らん行こうぜ」
「え、一緒に来てくれるの?」
「当たり前だろ」
らんといるまはちょっと行ってくる、と席を立った。
「こさめ、お手洗い行ってくるね」
「あ、一緒に行くよ」
「ん、じゃあ、俺ら待ってるな」
その後こさめとみことも席を離れ、ひまなつとすちは席の確保に残った。
いるまとらんがメニュー表を見ながら並んでいると、あれ、と後ろから声がかかった。
「いるまじゃーん!と、らんさん?」
「なんだよ、びっくりしたわ」
突然のクラスメイトの登場に、いるまは軽くため息をつきつつも「よ」と短く会釈を返す。
「ふーん、 そこふたりねぇ。うん、なんか解釈一致だわ」
お似合いじゃん、とにこにこされ、らんはこの状況がほとんどデートみたいなものだと気づいた。
もともと仲はいいので、好きな人ととはいえ普通に遊びに来ている感覚だっただけに、恋人だとみられていることを妙に意識してしまう。
「はいありがとありがと。お前、どうせ彼女さんと来てんだろ。早く行ってやれよ」
「うわ、照れ隠しじゃん」
「っせーな」
いるまがぷいと横を向くと、彼はくすりと笑い、らんに耳打ちをした。
「あれ、絶対脈あり。甘えてやれよ」
それだけ言うと「お邪魔しました〜」と楽しそうに退散していった。
「嵐みたいな人…」
らんがぽつりとつぶやく。脈ありだと言われ、余計に緊張する気持ちを隠すようにそっと視線を落としながら。
「いつもだろ」
いるまはいるまで顔が熱くなるのを抑えられずに、でもいたって平然を取り繕いながら、それっぽい返事をするのだった。
ひまなつとすちは、隣に並んでスマホをいじりながら恋バナで話を弾ませていた。
主にこさめやみことが可愛いというエピソードばかりであったが。
それぞれの想い人と確実に仲が深まっているのはお互いに感じていた。
互いに「頑張れよ」と励まし合い、こつんと拳をぶつける。
すると、ひまなつがぽつりと口を開いた。
「俺、今日告ろうかな」
「………、え?!」
突然すぎる告白にすちが固まる。
すちの覚えている限り今日1日の中で、告白しようと考えているような雰囲気は無かったように思う。だから思いつきで言っているんじゃないかと疑った。
「え、そんな今思っただけじゃ、やめといたほうが…」
すちの言葉に対して、ひまなつは意外にも真面目に首を振った。
「いや、わりとずっと考えてた。いるまとすちに言ってなかったけど、結構前からこさめのこと好きでさ。とられたくないとは思ってたんだよね」
すちはひまなつの決意の固まっていそうな瞳をみて、これは本気だと悟る。
「そっか。ひまちゃんが勇気だすなら、応援してるよ」
「ありがと」
やわらかく微笑んだひまなつは、すちの目には輝いてみえる。
いまの彼なら大丈夫だと、心から恋路を願うと同時に、自分の気持ちを伝える決意をしたひまなつに尊敬の思いを抱いた。
「お待たせ!」
「戻りました」
「ん、おかえり」
両手にカップを2個ずつ持って戻ってきたいるまとらんが息をついて椅子に腰を下ろす。
「はい、これ。なっちゃんの分」
「ん、サンキュ」
カップを受け取って軽く持ち上げてみせたひまなつ。
少々キザな仕草に思えるが、妙に様になっていると、らんは変に感心してしまう。
なんとなく、こさめがなつに惹かれているのもわかるような気がしていた。
「あれ、ていうかみこととこさめは?」
らんが問いかけると、すちがあっち、と指さした。
「お手洗い行ってる。らんらんたちが行ったあと行っちゃった」
なるほどねと頷きながら指さされた方向に目を向けたらん。
奥のほうをしばらく見つめて___
眉をひそめた。
「ねぇ…こさめとみこと、なんか絡まれてない?」
「「「え?」」」
3人の声が重なった。
慌てたようにふたりを探すと、確かに男性に声をかけられているのを見つける。
ひまなつとすちの顔色が変わった。
「まじかよ。俺、行ってくる」
「俺も行く。今すぐ止めないと…」
そう言い残してあっというまに走っていったふたりの目は、明らかに怒っていた。
それに気づいていたらんといるまはお互いに顔を見合わせ、小さく笑顔を浮かべた。
「あの、すみません!お姉さんたち、時間ありますか?よかったら一緒にコーヒー飲みません?」
こさめとみことが席へ戻る準備をしていると、前から近づいてきた大学生くらいの男性2人に声をかけられた。
おしゃれで落ち着いた雰囲気があり、さわやかな印象を受けるが、その裏にある下心をふたりが見逃すはずがなかった。
「…すみません、一緒に来てる人いるので」
やや怪訝な目を向けるこさめであったが、男性はそんなこと微塵も気にしていないようににこにこと話しかけてくる。
「ちょっとだけだよ〜!その子も一緒でいいからさ。ね、行こうよ」
何度断ってもしつこく食い下がってくる相手に、こさめもみこともさすがにまずいと思い始める。
笑みを崩さないところに恐怖さえ感じ、どちらからともなくぎゅっと手を握り合う。
適当に返しつつ、逃げるタイミングをうかがうみことと、らんたちに連絡を入れようとスマホを探すこさめ。
こさめがスマホを取り出したとき、めざとく気づいた男性が今度は連絡先を求めてくる。
こさめはしまったと思った。直感的にもう逃げ出すタイミングは完全に失ったと悟り、どうしようかと目を泳がせる。
そのとき___
「やめてもらえますか」
「俺らの連れなんですけど」
こさめとみことをそれぞれ庇うように一歩前に現れたひまなつとすち。
急いで来たせいで多少息があがっているまま、けれど確かに静かな怒りを込めて告げる。
「いやいや、俺らは仲良くなりたいだけだし。てか急に来て誰だよ?この子たちのなに?笑 」
相変わらずの笑顔を浮かべてひまなつとすちを見定めるように眺める男性たちに向かって、ひとことひまなつが言い放った。
「ふたりは少なくとも俺らにとっては大事な人です。じゃなきゃ来ないでしょう」
すちも無言ながら頷き、目で圧をかける。
その言葉を聞いて、息を詰まらせていたこさめとみことは身体の力が抜けるのを感じた。
ふたりが駆けつけてくれたという安心が心いっぱいに広がる。
こさめはひまなつ、みことはすちだけを見つめ、目が離せなくなった。
その視線に気づいたすちはみことの手を軽く握り、小さく微笑む。
ひまなつのきっぱりとした物言いと、すちの行動に、男性たちがひるんだ。
しばらく4人を眺めたあと、ため息をついて肩をすくめる。
「しょうがないなぁ〜笑 俺らはそもそも入れなかったみたいだわ。ごめんね」
へらっと笑って意外にもあっさりと離れていく。
それを充分に見送ってから、ひまなつとすちも肩の力を抜き、はぁっと大きく息を吐き出した。
男性が去ってから、こさめは改めてひまなつを見上げる。
ひまなつもこさめを振り返り、瞳をしっかりと見つめ___
ぎゅっと力強く抱きしめた。
突然のことにこさめは驚き、どきっと心臓が高鳴る。
しかしそれも一瞬で、すぐにひまなつの大きなやさしさとあたたかさに包まれ、完全に緊張がほどけていく。
「…焦った。まじで。」
少し掠れた声で耳元に囁かれた言葉は、シンプルだがまっすぐにこさめの心に届いた。
「ごめん、遅くなって」
「ううん…なつくん、来てくれてありがとう」
ぎゅっとひまなつにしがみつき、腕の中でそっと彼を見上げた。
その微笑む顔は安心しきって警戒心など全くない純粋な笑顔で___
それを見た瞬間、ひまなつの中で想いが弾けた。
抱きしめていた力を緩め、真正面からこさめに向き合う。
「こさめ。好き。ずっと前から好きでした。」
こさめの目が見開かれた。
「俺今、本気で焦って…めっちゃ独占欲働いた。もう離したくない。こさめ、俺と付き合ってほしい」
いつになく真剣に言葉を紡ぐひまなつ。
こさめを捉えたまま、目を逸らしたり照れたりせずにいつものようにまっすぐだった。
その一途な想いと揺るがない態度にこさめの胸がきゅんと高鳴る。
こさめがひまなつを好きになった理由を全部詰め合わせたような告白だった。
こさめの瞳がすこし潤んだ。
「こさめもなつくんのこと好き…!いっぱい甘えさせてね…? 」
こさめがにこっと笑うと、ほっとしたようにひまなつも表情を緩めた。
「あたりまえ。いくらでも甘えろ」
そう言って、静かにこさめの唇にキスを落とした。
「見せつけられちゃったね」
ひまなつとこさめのすぐ横で、口を開くこともできないような雰囲気に肩をすくめながら見守っていたすちとみこと。
一部始終見届けて、ようやくすちが口を開いた。
みことは顔を赤らめながらも、嬉しそうな声で返す。
「でもこさめちゃん嬉しそうだから…よかった」
すちを振り向いたみことに軽く微笑んで、すちは上を見上げた。
ひまなつがちゃんと自分の想いを伝えるのを目の前でみたことで、すちの中でも考えが変わってきた。
自分はもうちょっとゆっくり自身のペースで、と思っていたが、伝えるなら今だと思う気持ちが芽生える。
なんとなく、怖い思いをした弱みにつけ込むようで嫌だと感じる気持ちも強いが、覚悟を決めることにした。
「…すちくん?」
「みこちゃん」
「「あ」」
固まったすちに困惑したみことと声が重なってしまい、お互いにびっくりして吹き出す。
これから告白をしようと気を強く持っていたのが一瞬で緩むが、さっきまで不安がっていたみことの笑顔を見られたことに安心した。
そのやわらかい雰囲気のまま、すちはやさしい目でみことを見つめ、彼女の手を両手で包みこんだ。
「みこちゃん。俺、みこちゃんが好きです。」
「…ぅえ!?」
驚くみことをみて、少しだけ照れくささを感じるすち。でも、伝えたい気持ちは自然と言葉になった。
「俺と付き合って」
余計な言葉はない、けれど穏やかにゆったりとしたすちらしい雰囲気が甘く漂う。
みことは驚きを隠せずに「あ」とか「えっと」を繰り返す。
だんだんとすちの言葉を飲み込んでくると、同じ気持ちであることに幸せが込み上げる。
ドキドキする胸をそっとおさえた。
「よろしくお願いします…!私もずっと好きだったよ!」
思わずぎゅっとすちに飛びつくと、そっと頭を撫でられた。
その落ち着く温度に、みことは目を細めた。
「離れちゃだめだよ」
「離れないよ。すちくんだけ」
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