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「……マナ、今日も来てくれたんだ」
放課後。
伊波ライが嬉しそうに笑う。
「まあな、暇やったし」
そう言いながらも、足はもう慣れたように隣へ向かう。
「ふふ、ほんと?」
「……ほんまやって」
軽く返しながら。
自然と距離が近くなる。
——前より、だいぶ。
⸻
教室の端。
いつもの席。
「マナ、ここ見て」
「ん?」
ノートを覗き込む。
肩が触れる。
少し前なら意識してた距離。
でも今は——
「……ここ、こうやろ」
「正解」
「やろな」
普通に話せる。
でも。
「……近ない?」
ふと気づいて言うと、
「近いね」
ライはあっさり頷いた。
「離れへんの?」
「離れない」
即答。
「……ほんまお前」
呆れるふりをしながらも。
嫌やない自分がおる。
⸻
放課後の帰り道。
少しだけ人通りの少ない道。
「マナ」
「ん?」
呼ばれて振り向いた瞬間。
軽く腕を引かれる。
「……っ」
そのまま、近づく距離。
「……またか」
「嫌?」
少しだけ覗き込まれる。
「……嫌ちゃう」
もう、わかってるやろ。
⸻
そっと触れる唇。
前よりも自然に。
前よりも、少し長く。
「……っ」
離れたあと。
ほんの少しの沈黙。
「……慣れてきたな」
ぽつりとマナが言うと、
「うん」
ライが優しく笑う。
「でも、毎回ドキドキする」
「……それは、わかる」
否定できへん。
⸻
「ねえ、マナ」
「なんや」
「もう一回いい?」
「……さっきしたやろ」
「したけど」
距離が、また近づく。
逃げる気なんか、最初からない。
「……しゃーないな」
ほぼ許可や。
⸻
今度は、少しだけ深く。
触れて、離れて。
また触れて。
呼吸が混ざる。
距離が、さらに近くなる。
「……っ、ライ」
思わず名前を呼ぶ。
「なに?」
すぐ近くで返ってくる声。
「……やりすぎや」
「そう?」
少しだけ悪戯っぽく笑う。
——前より余裕あるやん。
⸻
「マナの反応、可愛い」
「は?」
「顔、すぐ赤くなる」
「……うるさい」
図星すぎる。
でも。
その視線が優しくて。
結局、何も言い返せへん。
⸻
そのまま、軽く肩に寄りかかられる。
「……重い」
「嘘」
「……嘘やな」
自然に受け入れてしまう。
この距離。
この空気。
全部が、当たり前になってきてる。
⸻
少し離れたところで。
「なあ」
赤城ウェンが呟く。
「あれ、もう隠す気なくない?」
隣の
小柳ロウが肩をすくめる。
「最初からだろ」
「まあ、そうか」
夕焼け。
帰り道。
「マナ」
「ん?」
「好き」
何度目かのその言葉。
でも。
慣れへん。
「……俺もやで」
ちゃんと返す。
前より自然に。
でも、ちゃんと気持ちを込めて。
⸻
「ねえ」
「なんや」
「これから、もっと増えるよ」
「何が」
少しだけ笑って。
「こういうの」
軽く、指を絡められる。
そのまま——
また少し距離が近づく。
「……ほんま、甘なったな」
「マナもでしょ?」
「……否定はせえへん」
⸻
最初は一瞬やった。
次は、少し長くなって。
今は、当たり前みたいになってきた。
でも。
その一つ一つが、ちゃんと特別で。
⸻
「……なあ、ライ」
「うん?」
「これ、慣れてもええんかな」
少しだけ、不安が混じる。
するとライは、すぐに答えた。
「慣れてもいいよ」
優しく笑って。
「その分、もっと好きになるから」
「……っ」
それは、ずるい。
⸻
でも。
「……ほな、ええか」
小さく笑う。
そのまま、少しだけ近づいて。
今度は、自分から。
軽く、触れる。
⸻
「……マナからだ」
「たまにはな」
照れ隠し。
でも、ちゃんと伝えたかった。
⸻
夕焼けの中。
繋いだ手と、近い距離。
少しずつ増えていく“当たり前”。
その全部が。
ちゃんと、愛しいと思えた。
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