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「ただいまー! 今帰ったぞ」
よし、今回も無事戻れたな。
あの日に旅立った朝のリビングが、見事にそのままである。
もちろん見送ってくれたシオンやタマもそこにいる。
『いってらっしゃいませ』と頭を下げ、そのまま頭を上げたら『ただいまー』なのである。
いまだに、俺たちが地球へ転移するとこちら (サーメクス) の時間は止まってしまうみたいだ。
どういう仕組みになっているのかあまり考えないようにしているが、女神さまも毎回大変だよな。
「「ゲン様、お帰りなさいませ!」」
シオンとタマが揃って挨拶をしてくれる。
二人にはもう慣れたものだな。ほとんど戸惑いを感じさせない。
「……ゲン様、こちらは?」
シオンが伺ってくる。
こちらはって慶子 (けいこ) だろ? 以前連れてきたから覚えているはずだが……。
あっ違う、ヤカンのことか!
「おお、そうだったな。こいつは白狐のヤカン、このたび俺の従魔になった新しい仲間だ」
「わたくしヤカンと申します。どちら様もよろしくお願いいたします」
ヤカンは丁寧に頭を下げて挨拶をしている。
キロの姿は既にここにはない。
行き違いがおきないよう、邸 (やしき) をまわっていろいろと報告しているのだろう。
こちらでもスマホが使えると便利なんだけどな。
無線機はすでに使っているようだ。
魔石を利用した【安定化電源】が作れないか、こんどデレク (ダンジョン) と話してみるつもりだ。
マリアベルはチャトを連れてお城へ帰っていった。
メアリーは表でアオチャン (青龍) と遊んでいる。
そして慶子はというと、さっそく冒険者ギルドへ出掛けていった。
「シロ、ヤカンに建物の案内をたのむな。そのあと庭に出てアオチャンにも紹介してやってくれ」
「ワン!」
尻尾を振りながら連れだってリビングを出ていく二匹。――可愛い。
シオンと簡単な打ち合わせを終えたのち、
「タマはこっちに来てくれ」
タマと一緒に私室へ入った。
……タマ成分補給完了!……
昼食のあとは執務室にていつもの仕事をせっせとこなしていく。
ただ時間が止まっているため、何日家を空けたとしても仕事が貯まってないのは正直言って助かる。
これが3日も貯まってしまうと大変なんだよ。マジで。
それに王宮からの呼び出しなんかが重なると、それはもう ”てんやわんやの大騒ぎ” になってしまうのだ。
夕方になり、ようやく慶子が帰ってきた。
あちら (地球) から持ち込んだ魔石 (小) は全て冒険者ギルドに下ろしてきたそうだ。
その数なんと3,500個。買取り額は17,500バース。(5バース / 1個)
これでも様子見を兼ねて1/3程なんだそうだ。
結構貯まっているものだよなぁ。
まあ、あちらには売る所もないし、みんなの分を集めると軽くそれぐらいの数字にはなるんだろうけど。
そして魔石以外にも、今回いろいろと持ち込んでいるんだよね。
・木製の手鏡 10本 40,000円
・ブラシ木製 10本 30,000円
・旨味調味料 12㎏ 20,000円
・木製調味料入れ 50個 30,000円
・コンソメキューブ 12㎏ 16,000円
・花の絵マッチ (小) 1200個 20,000円
・桃印、徳用マッチ 50個 8,000円
・ステンレスシャベル 10本 29,000円
・シャベル 3本 3,600円
まぁこんな感じだ。
右の数字は仕入れ価格、全部で¥196,600- 俺のあげた【宝くじ】が軍資金として大いに役立っているというわけだ。
現物はすべて俺のインベントリーで保管している。
慶子が持っているものといえば、特許取得用のシャベルぐらいだな。
そう、この世界にも特許という考えはある。
これがないと、貴族や大商人といった権力者たちの横暴がまかり通ってしまうからな。
良いものを作ったとしても、それをコピーされたあげく、こちらが真似したと訴えられる始末だ。
力の弱いものはそのまま泣き寝入りするしかなく、『ものづくり』をおこなう人にとっては大問題となる。
そこで商業ギルドが立ちあがり法整備を進めていったそうだ。
商業ギルドへの登録料は大銀貨5枚 (5,000バース) とちょとお高い。
しかし考えてみてくれ、
こちらの世界には電話もなければインターネットもない。通信手段というと手紙のやり取りだけになる。王都にある商業ギルド本部から各支部に通達を出すだけでも距離換算で銀貨2枚~5枚は掛かってしまう。さらに書類の作成やら保管やら、問い合わせに対する照会などを含めると至極妥当な手数料ではないだろうか。
因みに存続期間は3年で、あとはフリーになるそうだ。
しかしこれは商業ギルドの目が届く範囲内で、ということになる。
これにもいろいろと抜け道があって、違う領内で勝手に作って使用する分には効果が薄いのだ。
つまり個人の権利を守るというよりも、販売権を保護するのが第一の目的みたいだね。
てなわけで、明日は王都まで行って【土木シャベル】の登録手続きをおこなう予定だ。
王都への送迎及び付き添いはもちろん俺。
日本からの荷物もちまでさせられているわけだが。
慶子には生前から世話になりっぱなしである。
このくらい、どうということはない。
それに慶子はゆくゆく日本で会社を立ち上げるそうだ。
そうなればまたいろいろと世話になることも増えるだろうし。
夕食は熊親子共々みんな呼んで、ツーハイム邸のテラスでバーベキューだ。
「ばぁば、ばぁば!」
「まぁーハルちゃん覚えててくれたのねぇ。嬉しいわ~♪」
ハルを抱きかかえた慶子は相好を崩している。
その晩はナツ成分も補給しちゃいました~。
ぺしぺし! ぺしぺし!
『うれしい、あそぶ、さんぽ、おきる、いく、みんな』
うぅん、もう朝なのか。
んんっ、なにかフサフサしたものが手にあたっている?
シロの尻尾かな……、あぁメアリーだったのかぁ。
部屋の中は暗いのでシルエットしかわからないが、隣でメアリーが寝ているようだ。
早く来たなら起こせばいいのに、こういったところは小さかった頃のまんまなんだよなぁ。
頭をやさしく撫でてメアリーを起こした。
「おはようメアリー」
「うんゲンパパおはよー! 昨日はナツママがきてたの~?」
「へっ、ああ、そうだな。テラスでバーベキューしたんだよ」
「ふ~ん、じゃあ昨夜 (ゆうべ) はお楽しみで…/ Chu!」
おしゃべりなお口を唇で塞いでやった。
まぁ婚約者なのでキスぐらいは……、ね。
………………
そして顔を洗って着替えた俺は、シロ・ヤカン・メアリーを連れて朝の散歩に出かけた。
メアリーの奴『昨夜はお楽しみでしたね!』って笑顔で言おうとしてたよなぁ。
誰だよ、メアリーに余計なこと教えてるのは! まったく……。
外は雲ひとつない青空が広がっており、ず~と高いところをアオチャンが体をひねりながらゆったりと飛んでいた。
「じゃあゲンパパ行ってくるね!」
メアリーは俺の頬にキスをおとし学校へ行ってしまった。
俺は慶子と共に王都の別邸に移動。
馬車を準備する間、リビングでコーヒーを頂いていた。
飲んでるのは某インスタントコーヒーなんだけど、これが旨い!
――俺は違いがわかる男だからね。
このインスタントコーヒーはどちらの邸 (やしき) にも20本ずつ買ってきてるので、家人たちにもコーヒーというものを味わってほしい。(クリープも買ってきてます)
俺たちは馬車に乗り込んで邸を出発、王都の繁華街にある商業ギルドをめざした。
そして商業ギルドにて特許関係の手続きを済まし、「次はどこへ行くんだ?」と俺が尋ねると、
「出入りの商人を紹介してほしい」と慶子がいう。
それなら、今から一緒に行こうということで俺たちは馬車に乗り込んだ。
歩けば5分とかからない場所ではあるが、貴族とはまったくめんどうなものである。
繁華街の通りでも、ひと際目立つ大きな看板。
【ダイキャット・カンパニー】の前で馬車は停車した。
止まると同時に店の扉が開き、猫人族の番頭さんがすっ飛んでくる。
「これはこれはツーハイム伯爵様、ようこそおいで下さいました。ささ、こちらへどうぞ!」
番頭さんに案内され応接室へと通された。
すると、すぐに熱い紅茶とクッキーがテーブルの上に並べられる。
うん、いい香りだ。
慶子とお茶をしながら待つことしばし、いつもの猫商人が部屋に入ってきた。
俺たちは簡単に挨拶を交わしたのち本題にはいる。
交渉の方は慶子に任せ、俺は言われたものを言われた数だけ出していく。
………………
商売は上手くいったみたいだな。
慶子が受け取っていた金額はクルーガー金貨2枚・金貨4枚・大銀貨と銀貨が数枚ずつだな。
結構良い商いになったんじゃないか? 慶子の顔もニッコニコだ。
見たこともないような品物が並ぶ中、猫商人が一番に注目していたのが【手鏡】だった。
大絶賛していたなぁ。
あとは【コンソメキューブ】かな。
そのコンソメを入れて作ったスープを出してみたところ、それこそ猫のように目を丸くしていたな。
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クルーガー王国貨幣制度 単位バース
白金貨:1,000,000バース
クルーガー金貨:100,000バース
金貨: 10,000バース
大銀貨:1,000バース
銀貨: 100バース
大銅貨:10バース
銅貨: 1バース (1バース:10円程)