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シンシンと冷える冬の夜。
雪により真っ白に染められた山の中腹には、小さな木造建築の家が建てられていた。
中には一組の夫婦の生活がつあった。
「あの子遅いわね…ごはんが冷めちゃうわよ」
怒ったようで、でもどこか心配したような声音
で妻が呟く。
それに対して夫は、立派に蓄えた髭を擦りながら応える
「まぁまぁ母さん、あぁでもしないとアイツはずっと家に引きこもっていたよ。心配する気持ちは分かるが、落ち着きなさい。」
「それは分かってるけど…」
口ではそう言いながらも、革張りソファの周りを何周もグルグルしている所を見ると、心配で仕方ないらしい
そんな様子をみて肩をすくめると
「母さん…あとで見せたいものがあるから、寝室に来てくれ」
「…?分かった。」
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「おおーい!雪強くなりすぎだろ!!」
「ぶいいい!!」
ヒイラギとイーブイは、文房具屋に急いでいた。
その理由は、この天候にある。
「暴風雪警報発令…って、さっきまで粉雪程度だったじゃねぇか!!」
スマホを見れば、掌返しでお馴染みのYaho○天気が1時間前とは全く違う予報を作り出していた。
先程の穏やかで幻想的な雰囲気を作り出していた雪は、この世の全てを攻撃するような暴力的な牙へと化けている。
「ママァァー!ゲームは!!?」
「ごめんね、多分サンタさんは明明後日にはくるから!!とりあえず駅いこーね!」
「寒い寒い寒い!!やっぱマフラー返して!!」
「無理だ無理無理!今でさえ馬鹿みたいに寒いのに、やるもんかこのブス!!」
先ほどまで街に溢れていた家族連れやカップルは鬼面の形相で帰宅していた。
それもそのはず、この大雪じゃあ電車を含めた交通機関は直ぐにストップしてしまい、そうなってしまうと家が遠いならば、かなり勇気のいる金額の空飛ぶタクシーを使用しなければない。
どっかの地方では無料のサービスで運用できるらしいがこの地方はそんな優しくない。
なんなら空飛ぶタクシーはその名前の通り、高度5000m付近を飛行するため冬場に利用すると気温が著しく低下し自殺行為になる。
電車が止まるというのはつまりそういう事なのだ。
自分は徒歩できたが、クリスマスに浮かれて遠方からきた奴らは目の前の殺伐とした光景の一部になっているということだ。
先程までの穏やかさは微塵もない。
この極寒の寒さは身体だけでなく、心をも冷やしてしまったらしい。
薄着のヒイラギたちは尚更であった。
すっかり寒さで耳は真っ赤になり、手の感覚は無くなりかけている。
隣で走るイーブイも…あれっ?
「寝るなッイーブイーー!!死ぬぞ!」
「ぷいっ!?」
ダメだこいつ、完全に今堕ちかけていた。
「くっそ…一旦そこで雪やどりするぞ!」
視界がホワイトアウトしかけて少し先の景色も見えないでいる。
これ以上歩くのは危険とみて、俺たちは文房具屋の近くのポケモンで雪やどりをすることにした。
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ゴォォォォオォォオ!!
先程から強まってきた風雪が窓をガタガタと強く叩く。
「雪が酷くなってきたわね…」
寝室の窓から外を覗き、心配そうに呟く。
「あぁ、そうだね…やっぱり料理は温め直そうか。」
「えぇ、そうね…ところで話ってなに?」
「あぁ…これなんだけど」
そう言って、後ろから何かを取り出す。
「……ふふっ、あなたも粋なところあるじゃない」
「なんで笑うんだい」
「いや、なんでもない。とりあえずそれは…ん?」
「どうした?」
「いや、なんか焦げ臭くない?」
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「ようやく止んできたな…」
外を見ると、さっきまでの豪雪は鳴りを潜め十分歩けるぐらいには天気は穏やかに回復した。
道路にはほんのりと雪が積もっており、街灯の光に照らされてキラキラと銀色に輝いている。
「ぷいぃぃい!」
ポケセンで暖まり、すっかり元気になったイーブイがその雪に顔を埋めて遊んでいる。
その平和な光景を少し微笑ましく感じたが、俺のスマホが現実を突きつける。
「7時35分…間に合わなかったなぁ」
雪宿りをしてるうちに時間は過ぎ、すっかりお天道様は沈んでしまった。
こうなっては、もう意味はない。
もう文房具屋は閉店している。
文房具屋は割と近い距離にあるが、閉まってるものはどうしようもないのである。
ため息をつき、踵を返す。
「はぁ…帰るかぁ。」
結局一つも仕事が決まらなかった。
父さんと母さんになんて言おうか。
そもそも家に入れてくれるだろうか?
そんな重い心と足取りで家へ帰ろうとしていた。
その時
「アァ゛ァぁ゛ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙!!」
「!?」
絶叫とも悲鳴ともとれる声が閑とした空に響いた。
バサバサバサバサッ!!
その声に驚いたのか、木の上に止まっていたポッポ等の鳥ポケモンが四方八方に飛び去っていった。
その衝撃で木からうっすら積もっていた雪が、粉雪のように舞い散り。
そして…再び静寂が訪れた。
ポケセンの外に備え付けられた壁掛け時計の針の音がやけに大きく響いて聞こえる。
「なんだ今の…文房具屋の方からだったよな」
「ぶい!」
「それにあの微妙にしゃがれた声…じっちゃんだ!!行くぞイーブイ」
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「じっちゃん!大丈夫か!!ッ」
寂れたガラスの引き戸を音を立てて勢いよく開けると、そこには苦しそうに床に手を着くじっちゃんと覆面の全身黒タイツの男がいた。
覆面の男は俺を確認すると、激しく舌打ちをして
「ッチ、ジジイが騒ぐから誰か来ちまったじゃねぇかゴラ!」
そう言った男の拳が鳩尾にとぶ。
じっちゃんはそれを受けて体をくの字に曲げて2メートル程吹っ飛んだ。
棚に並べてある文具が雪崩のように崩れていく。
壁にたたきつけられたじっちゃんの顔が苦痛に歪む。
「グバッァ や、辞めてく… 」バタッ
そのままじっちゃんは力無く床に倒れふした。
気絶したようだ。
「おっお前何して、」
「おいガキ…テメェは何も見てねぇ。回れ右して帰りやがれ。」
鋭い双方の眼光が覆面の穴から向けられる。
促されたのは撤退、それを断るとどうなるかは目の前のじっちゃんを見れば明らかだ。
一体全体何が起こってるかサッパリだ…
助けの声を聞き付けて、助けるために飛び込んでみれば謎の男に脅迫されて、命の危機に陥る
正直言えば忠告に従ってここから出ていきたい。
何も見なかったことにして、このまま家に帰っていつも通り何事もなく平穏に暮らしたい。
でも…俺は足元見る。
そこには
「ブイイイイィ!!」
低く唸り、覆面の男を刺すように睨んでいるイーブイがいた。
良かった…こいつと気持ちは一緒だったらしい。
「世話になった人見捨ててのうのうと生きれるほど俺は肝が太くねぇんだよ!!」
じっちゃんは昔から良くしてくれて、口では何だかんだ言っていてもその実、子供のことを大事にしてくれていた。
そんな人が目の前のよく知らないやつに、瀕死にさせられているのだ。
俺は気づけばそう叫んでいた。
すると男は少し口角を上げて
「へぇ…かっこいいねぇ 正義のヒーロー気取りかガキ、吐いた唾呑むんじゃねえぞ…出て来いグラエナ!!」
刹那、男が投げたモンスターボールから影か飛び出した
「グルルルルルルッ!!」
現れたのは狼のような、ハイエナのようなフォルムの、鋭い目つきのポケモン。
その目は俺とイーブイを獲物を見るようにじっとりと見据えていて、背筋に寒気を感じさせる。
俺は戦きながらもスマホを取り、図鑑アプリを起動された。
即座に機械音声が流れる。
『グラエナ ポチエナの進化系
ポチエナよりオオカミの姿に近づき、背中から尾にかけて黒い体毛に覆われている。野生では群れで生活しており、非常に高いチームワークと統率力を持つ』
「グルルルオオーン!!」
その時グラエナが天井へ向かって遠吠えをした。
身をふるわすような凄まじい遠吠え。
窓ガラスを揺らすような雄叫びにも似た叫び。
それは静かな夜に反響となって、響いていく
グルルルオーン…グルルルオーン…グルルルオーン
そして完全に反響がなくなり、完全に静まりかった時、俺と男は同時に声を挙げていた。
「グラエナァ!かみくだく!」
「イーブイ、でんこうせっか!」
床を抉るように強く踏み込んだグラエナが勢いよく飛びかかってくるのを、瞬足のステップで躱す。
「グルッ!?」ドン!
対象を無くし、勢いのまま壁に激突したグラエナの動きが痛みにより、一瞬停止する。
それを狙いイーブイが電光石火の突進を叩き込む
「ブイイイィ!」
「グラッァ!?」
その一撃はグラエナの胴を捉え、再び壁に吹っ飛ばすも、グラエナも即座に起き上がった。
それを見て男は興味深そうに口を開いた。
「んん?…お前のイーブイ、イーブイにしては類を見ない身体能力をしてるな 鬱陶しい。」
正直俺も驚いてる。今までコイツ可愛さにポケモンバトルは全くと言っていいほどさせてこなかったが…こいつこんな強かったのか?
俺アニメの見よう見まねででんこうせっかって言ったんだけど、なんか避けてから攻撃するみたいな指示してないことまでやってるんだけど。
チラッとイーブイを見る
「ブイィイィ…」
めっちゃイケメンじゃん、何あれ。え、何あれ
外見可愛くてイケメンってなんなの?
普通に主従関係がひっくり返りそうなんだけど
「なんでお前自分のイーブイを睨みつけてんだ?」
「あ、いやなんでもない」
その時イーブイが俺の方を見て、やれやれと言わんばかりに手と首をふった。
「プイプイ」
(こっ、この野郎…)
「なんか締まんねぇやつらだな…まぁいいグラエナ かみなりのキバだ!」
「グラッ!」
「イーブイ、もう1回でんこうせっかだ!」
「ブイ! 」
そして2つの影が再び交わる。
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ポケモンワールド裏話
空飛ぶタクシーの料金は100mごとに800円ごと値上がっていくぞ!
小説…めちゃくちゃムズかしい。
拙いですがご容赦ください