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「……あーあ、服シワシワだね」
すちはみことの襟元をつまんで、苦笑いした。
「……すっちーのせいでしょ……こんなとこで、そんなことするから……っ」
「いや、みこちゃんが可愛すぎるのが悪い」
「しらない……」
トイレの個室の中で、ふたりは狭い空間にもたれ合いながら、そっと着替えを始めた。下着は、もう履き替えるどころではない。仕方なくタオルで軽く拭いて、できる限り整える。
「下、ぐっしょりじゃん。……俺のシャツ、貸すから、それ中に着なよ」
「えっ、でもすっちーが困らない?上、肌着だけになっちゃうよ……」
「別にいいよ。みこちゃんが風邪引いたら困るから」
みことの頭にポンとシャツを被せるように着せながら、すちは不器用にボタンを留めてくれた。
「……優しいとこ、ずるいんよ……」
「ずっと優しいはず。ちょっとドSなだけで」
「“ちょっと”じゃない……!」
顔を赤くしたみことを見て、すちはふふっと笑った。
「ほら、髪、直してね。あと……首、痕ついてるから、ネクタイで隠して」
「……ばか。すっちーのせいじゃん……」
文句を言いながらも、ネクタイを巻き直す手はどこかゆるくて、照れているのがバレバレだった。
「あとで俺の部屋に来て。ちゃんとシャワー浴びさせて、着替えも持っていく」
「……一緒に入る気でしょ」
「もちろん」
「ほんとに……ドSで甘やかしすぎなんやから……」
「みこちゃんが甘やかされ体質なだけ」
ちょっぴり後ろめたくて、でもどこか心地いい秘密の共有。
制服のボタンを留めるたびに、ふたりの距離はまた少し近くなっていた。
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「……ん、やっぱ広いバスルームっていいな……」
すちの部屋のバスルーム。蒸気に包まれた湯気の中、みことは壁にもたれながら、シャワーの感触に目を細めていた。
「さっきまでガクガクだったのに、もう復活?」
後ろからすちがやってきて、そっとみことの背中に手を添えた。
「ふ……復活してない。やっと立ってるだけ……」
「じゃ、洗ってあげる。手、出して?」
「えっ……い、いいって、ひとりで──」
「させるわけない。俺のせいでぐちゃぐちゃになっちゃったんだから」
そう言って、すちはボディソープを泡立てて、みことの背中へと優しく手を滑らせた。
「ひゃっ……あ、あのっ、こ、こしょばい……!」
「暴れないの。せっかく丁寧にやってるんだから」
泡の感触とすちの手のひらが肌の上を滑るたび、変なスイッチが入りそうになるのをみことは必死に堪えていた。
「ふーん……こことか、さっきいっぱい震えてたよな」
「そ、そこ言わなくていいからっ!」
「……可愛い」
すちはそのまま背中から腕、肩、首筋──そして胸元へと手を移していく。
「……ちょ、そこはっ……あ……」
「汚れてるとこ、ちゃんと洗わないと」
すちの手はまるでいたずらしているように、丁寧で、でも確信犯のようにみことの敏感なところを撫でていく。
「す、すちくん……だ、め……お風呂で、まで……!」
「リラックスさせてるんだよ。ほら、首も傾けて」
首筋にキス。ぬるま湯の中、息が熱くなる。
「……また、したい」
「っ……ばか……」
言葉以上に火照った体が、すちにすがるように預けられていく。
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湯気がもうもうと立ち込めるバスルーム。シャワーの音が静かに響く中、みことの背中にぴたりとすちが密着していた。
「……ねえ、すちくん……お湯より、熱い……」
「みことのせい」
囁くような声が耳元に落ちた瞬間、みことはびくりと肩を揺らした。
すちの指先が、石鹸の泡ごしに滑りながら、ゆっくりと胸元から下腹部へと這っていく。
「……ほら、またここ、ピクってなった」
「い……言わないで……っ」
頬が真っ赤に染まり、浴室の明かりと湯気に透けて汗とも見分けがつかない。
けれど、すちの指先は止まらない。泡を撫でながら、丁寧に肌の隅々まで確かめるように。
「全部……きれいにしようね。」
「っ……すちくん、ずるいよ……」
「何が?」
「そんな声で、そんな顔で……近くで見られたら、また……」
「じゃあ、もっと見せて」
すちはみことの手を取り、そっと自分の首に回させた。
密着する裸の体。ぬるま湯が流れる中、呼吸の音と心臓の音だけがやけに大きく響く。
「……ねぇ、みこちゃん」
「……ん」
「俺、みこちゃんの全部に触れてたい。ぜーんぶ俺のにしたい…」
「……もう、なってるくせに……」
消えそうな声で呟くと、すちはたまらずみことの唇を奪った。
濡れた髪、滑る肌。唇が合わさり、舌先が触れ合った瞬間、全身がびくんと跳ねる。
「っ……ん……ぁ……」
絡み合うキスの音が、バスルームにやさしく響く。
触れ合う指先、重なる腰、熱を帯びてゆくふたりの体。
「続き……していい?」
「……優しく、してくれるなら……」
「任せて。ちゃんと、みこちゃんがとろけるまで……離さないからね」
シャワーの水音の向こう、ふたりの影がやわらかく揺れていた。
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