テラーノベル
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宮舘が目を覚ました時、最初に視界へ飛び込んできたのは、白い天井だった。
ぼんやりとした意識の中で、カチャ、カチャ、と小さな音が聞こえる。
重たい瞼をゆっくり動かし、音のする方へ視線を向ける。
そこには、点滴のボトルを交換している看護師の姿があった。
宮舘が目を開けていることに気付くと、看護師はすぐに振り返り、ホッとしたような表情を浮かべる。
「宮舘さん、大丈夫ですか?」
優しく掛けられた声に、宮舘はほんの少しだけ首を縦に動かした。
声を出そうとしても、喉がひどく乾いていて、うまく言葉にならない。
「よかった……。先生を呼んできますね」
看護師はそう言うと、一度病室を出ていき、初老の医師を連れて戻って来た。
体温を測り、脈を確認し、いくつかの質問を受ける。
一通りの診察を終えた医師は、カルテに目を落としながら、穏やかな声で説明した。
「栄養不足と精神的な疲労。それに高熱が重なったようですね」
宮舘は黙って話を聞いていた。
「胃も弱っていますね。今は無理に食べようとしなくて大丈夫です。まずは、少しずつ消化の良いものを口にできるようになりましょう」
医師は安心させるように微笑む。
「しっかり食事が摂れるようになったら退院ですからね」
❤️「……はい」
掠れた声で、漸く返事をする。
医師と看護師が病室を出ていくと、静寂が戻ってきた。
宮舘は暫く天井を見つめていた。
そして、ゆっくりと目線を右手に向けると、手のひらを開く。
そこに残っていたのはあの日、必死に握り締めていたものーー
千切れてしまった、赤いブレスレットの欠片だった。
小さな赤いビーズが、掌の中央で静かに光っている。
宮舘はそれを指先でそっと撫でた。
❤️「……」
そして、握り締めた。
これを手放してしまえば、目黒と過ごした時間まで全て消えてしまうような気がした。
ーーそれから、宮舘の入院生活が始まった。
***
入院1日目。
朝、病院食として出されたスープを、スプーン一杯だけ口にした。
昼は、スープン二杯分。
夜は、柔らかく煮込まれたものを少しだけ。
食べる度に、身体が「もういらない」と訴えてくる。
それでも宮舘は、ほんの少しずつ食べた。
このままではいけない。
目黒とのことを考えると、胸が痛む。
夢の中で聞いた言葉が、何度も耳の奥に蘇る。
🖤『最低』
🖤『人でなし』
🖤『大嫌い』
目黒に嫌われた、と思うだけで何もかも投げ出したくなる。
それでも、もう一度。
もう一度、目黒と話したい。
ほんの僅かでもいい。
その可能性が残っていてほしい。
そんな願いから宮舘は、スプーンを握った。
一口。
また一口。
本当に少しずつ。
身体は、ゆっくりと食べることを思い出していった。
.
.
.
そして、入院して3日目。
病室のドアが勢いよく開いた。
🩷「涼太ぁ~~!!大丈夫かぁ~~っ!?」
💚「しーっ!ちょっと、佐久間…っ!ここ病院なんだから静かにして……!」
🩷「だって!涼太が倒れたって聞いたんだもん!」
💚「だからって病室に飛び込んでこなくても……!」
❤️「二人共、落ち着いて。……俺は大丈夫だから。……ね?」
涙目になりながら飛び込んできた佐久間と、その後ろから慌てて追いかけてきた阿部。
いつもと変わらない2人のやり取りに、宮舘は思わず目を細めた。
胸の奥に張りつめていたものが、ほんの少しだけ緩んでいく。
❤️「……ふふ」
🩷「えっ!涼太、今笑った!?」
💚「佐久間がうるさいからじゃない?」
🩷「おぉい!俺、先ーー」
💚「でも、良かった」
🩷「無視…!?」
💚「少し顔色、良くなったね」
🩷「確かに。……本当に良かったよ」
❤️「……うん」
宮舘は小さく頷いた。
❤️「佐久間」
🩷「ん?」
❤️「阿部」
💚「なに?」
二人が優しく微笑みかける。
❤️「来てくれて、本当にありがとう」
友達というものが、こんなにもありがたいものだったのかと、改めて思った。
.
.
.
.
.
入院して5日目。
病室に差し込む夕暮れの光をぼんやり眺めていると、扉がガラリと開いた。
「よっ」
聞き慣れた声だった。
❤️「……翔太?」
そこに立っていた人物を見て、宮舘は目を見開いた。
💙「宮舘、だいぶ痩せたな」
――渡辺翔太。
この世界の彼は、宮舘の幼馴染ではない。
目黒蓮の幼馴染だ。
あの階段での出来事を目黒から聞いているのなら、きっと自分のところへ来るはずなんてない。
❤️「……お見舞いに、来てくれたんだ」
そう思っていたからこそ、驚きを隠せなかった。
💙「何言ってんだよ」
渡辺は病院に置かれていた丸椅子を引き寄せ、ベッドの横に腰を下ろした。
💙「当たり前だろ」
そして、少し不機嫌そうに口元を尖らせる。
❤️「……ありがとう」
💙「あのさ。……俺、お前以外のやつが蓮の隣にいるの、許可してねぇんだけど?」
❤️「……え?」
渡辺の言葉に、宮舘は呆気に取られた。
❤️「目黒から、何も聞かされてないの……?」
💙「聞くだけ無駄だ」
渡辺は鼻で笑った。
💙「今の蓮、まともじゃねぇよ」
❤️「……?」
💙「……それに須野村って女。……あいつの方が、ヤバい。……マジで」
❤️「……あの人のこと知ってるの?」
💙「知らねぇ……けど、俺の勘がそう言ってるんだよ」
渡辺は腕を組み、宮舘を真っ直ぐ見る。
💙「……お前、このままでいいわけ?」
❤️「……良くない」
宮舘は視線を落とした。
❤️「良くないけど……俺、目黒に嫌われただろうから……」
弱々しい声が病室に落ちた時だった。
「そんなことないよ!!」
――バタンッ!
今度は先程よりも更に大きな音を立てて、病室のドアが開いた。
💙「おい、ラウール!うるせぇぞ!」
🤍「ごめん!……あ、舘さんと一緒にいたの、しょっぴーだったんだ」
💙「誰がしょっぴーだ。先輩って呼べ」
「フンッ」と呆れたように言いながらも、渡辺は追い出そうとはしなかった。
どうやら、この世界の二人は目黒を通じて既に知り合っていたらしい。
ラウールはそんなことには構わず、ベッドの足元まで駆け寄る。
🤍「舘さん」
❤️「……ラウール」
🤍「俺は、めめが舘さんを嫌いになったなんて思わない」
❤️「でも……」
🤍「考えてみなよ!めめが本当に嫌いになった相手とのお揃いのもの、ずっと付けてるわけないでしょ!?」
❤️「……え?」
宮舘の目が、大きく見開かれた。
ブレスレットは壊されてしまった。
けれど自分達には、まだ残っている。
学園祭の日に渡された、ラウールが作ってくれたーーお揃いのブローチ。
目黒が今もそれを持っているのだとしたら。
❤️「…………」
まだ、切れていない。
全てが失われたわけじゃない。
🤍「……それにさ。最近のめめ、すっごく変なんだよ」
❤️「変って……何が?」
🤍「なんて言えばいいのかな。……目に生気が全然ないっていうか」
ラウールが腕を組み表情が曇らせる。
🤍「……行動もチグハグなんだ。お昼休みになると、3年の棟へ行こうとするのに……その手前で急に、ピタッて止まるの」
❤️「……」
🤍「まるで……」
ラウールは少し考えるように言葉を選んだ。
🤍「……見えない糸で、無理やり操られてるみたい」
その言葉を聞いた瞬間、宮舘の頭の中を、電流のような衝撃が駆け抜けた。
――操られている。
その言葉が、何度も頭の中で反響する。
そして、あの女の顔が脳裏に浮かんだ。
階段で聞いた言葉。
――ヒロイン。
――神様。
――チャンスをくれた。
❤️「……そうか」
宮舘は震える唇を動かした。
❤️「……俺だけじゃ、ないんだ」
💙「宮舘?」
❤️「(【力】に侵食されているのは……俺だけじゃない)」
目黒自身も、その力によって縛られている。
そう考えれば、全ての辻褄が合う。
昼休みに自分のもとへ向かおうとするのに、途中で止まってしまうという目黒。
それなのに、ラウールが言うには様子がおかしい。
❤️「(……目黒は、今も……)」
――自分のところへ、来ようとしている。
その可能性に気付いた瞬間、宮舘の中で消えかけていた炎が大きく燃え上がった。
絶望している場合じゃない。
泣いている場合でもない。
目黒が自分の意思とは関係なく縛られているのなら、助けなければならない。
そしてーー
それができるのは、自分しかいない。
💜『何があっても、【信じる】ことかな?』
❤️「(……ふっかが言ってたことは、こういうことだったんだ)」
宮舘はゆっくりと顔を上げた。
その瞳には、もう迷いの色はなかった。
❤️「2人とも……お願いがあるんだ」
渡辺とラウールが、宮舘を見る。
❤️「俺が退院したら……力を貸してほしい」
数秒の沈黙後。
渡辺の口元が、ゆっくりと吊り上がった。
それは、不敵な笑みだった。
💙「……最初からそのつもりだ」
🤍「うん!もちろんだよ!」
宮舘は2人を見つめた。
まだ、終わっていない。
何もかも失ったわけじゃない、そう思えた。
***
それから更に2日後。
入院生活を終え、宮舘はついに退院した。
体調は、まだ万全とは言えない。
以前のように軽やかに歩けるわけでもない。
しかし、病院の出口に立った宮舘の足取りには、迷いがなかった。
手の中には、あの日拾い集めた赤いブレスレットの欠片。
その胸には新たな決意。
渡辺翔太。
ラウール。
頼もしい味方もいる。
まだ、目黒との絆は完全には消えていない。
ヒロインに縛られた、大切な人を迎えに行くために自分から手を伸ばす。
❤️「……待ってて、目黒」
宮舘は小さく呟き、再び学園へ向かって歩き出した。
その先でどんなことが待ち受けているのかは、まだわからない。
❤️「(……もう、立ち止まらない)」
大好きな人を取り戻すために。
宮舘は、もう一度、物語の中へ足を踏み入れていった。
暗い展開は、もう終わり…!
🖤を助けるため❤️が動きます…!
コメント
17件
おーっと‼️‼️‼️‼️

待ってました👏 どんな世界でもしょっぴーとラウールは舘様の味方なのですね🤭
#めめだて
雪月❄️
398
クリオネ?
100