テラーノベル
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「ねえ、その数字、また減ってるよ」
放課後の図書室。窓際の席で、クラスメイトの瀬戸くんが私の左手首を指さした。
私の手首には、生まれた時から『運命の相手と結ばれるまでの距離』がデジタル数字で刻まれている。
今の私の数字は「3.00m」。
つまり、あと3メートル以内に、私の運命の人がいるということ。
「……うるさいな。瀬戸くんこそ、自分の数字見たら?」
「俺? 俺のはさっきから『0.00m』だよ。バグかな」
彼はヘラヘラ笑いながら、自分の手首を隠した。
瀬戸くんは腐れ縁の幼馴染で、いつも私をからかってくる。私の数字が減るたびに「お、運命が近づいてんじゃん」と茶化すのが彼の日常だ。
ある日、私は思い切って彼に聞いた。
「ねえ、瀬戸くん。もしそのバグが本当で、隣にいる私が運命の相手だったらどうする?」
一瞬、図書室の空気が止まった。
瀬戸くんは驚いた顔をして、それから視線を逸らした。
「……そんなわけないだろ。お前の数字、今『0.03m』だぞ」
私は自分の手首を見た。
「0.03m」——つまり3センチ。
机の下で、彼の手が私の左手に重なっていた。指先が触れそうで、触れない、絶妙な距離。
「……あと3センチ、どっちが縮める?」
瀬戸くんの声が、今まで聞いたことがないくらい低くて、優しかった。
私の心拍数が跳ね上がり、手首の数字がチカチカと点滅を始める。
「……瀬戸くんのバカ」
私は自分から、その3センチを埋めるように彼の指を握りしめた。
その瞬間、手首の数字が静かに消えて、代わりに小さなハートの痣が浮かび上がった。
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