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「……まさか。」

誘拐。そんな言葉が頭によぎる。その瞬間一気に汗が出てきた。

あたりを見回すと、少し離れた場所に白川さんがいた。

安堵して近寄ろうとすると、



彼女が男の人といるのを見た。







相手は白川さんくらいの年齢で、最初はナンパかと思ったが、どうやら違うようだ。




そう思ったのは、二人が仲が良さそうに見えたから。

白川さんが僕といる時とではしない顔をしているから

「彼氏……。」

白川さんが顔を少し染めてるのを見て、そう呟いた。

本人は、ずっと恋をしていないと言っていた。おそらく、友だちなんだろう。

それでも、頭ではわかってながらも、本当は嘘だったんじゃないかと思ってしまう。人を疑うのは良くないのに。




そして、目の前の出来事を見て不安になっている理由を、受け入れようとしない自分にイライラした。











たこ焼きを買うために並んでると後ろから声をかけられた。

誰だろうと思って振り返ったら、そこには中学の時よく見ていた顔があった。

「きょーくん!」

「よ。」

きょーくんは小学・中学と同じ学校で、まあそこそこ話してた人だ。

「あ、まって、ちょっとまってたこ焼き買うから。」

「おう。」

たこ焼きを買って話せる場所に移動する。

「え、なんでここにいんの?地元から遠いのに。」

「今ここらへんで働いててさ、さくもここらへん?」

「んーん。ちょっと離れてる。今日誰と来たの?」

「高校の友達誘って来た。そっちは?」

「私は仕事相手と。」

「ふーん。仲良いんだな。」

「そう………なのかな。」

すると、きょーくんが驚いた顔をする。

「え………男?」

「え、なんでわかったの?」

「顔が赤くなってる。」

「んえぇー……。まじかぁ……。」

「ほんと顔に出やすいのは変わらないな。」

いや私だって作り笑いくらいて出来ますけど。やろうと思えば顔に出ませんけど。

「そっちは彼女とかいんの?」

「まーな。」

「えっ!ホントに!?一生出来ない仲間だと思ってたのに!」

「おい。」

時計を見ると、待ち合わせの2分前だった。そろそろ行かなくちゃ。

「じゃあ私もう行くね。」

「おう。頑張れよ。」

「えちょまって、誤解といてない!そーゆーのじゃないから!」

「はいはい。じゃーな。」

「もー………ばいばい。」

数年ぶりにあった友だちは全く変わってなかった。そのことに安心しながら、私は待ち合わせ場所に向かった。























戻ると、るぅ💛さんが待っていた。私より先にここに居たようだ。

「ごめんなさい。待たせてしまって。」

「………いえ。」

…………ん?なんか怒ってる?

るぅ💛さんは少し低いトーンで、それでいて無表情だった。さっきの優しい笑顔が嘘のようになくなっていた。無表情もカッコいいけど。

…………私なんかしてしまったのだろうか。

昔からそうだ。私は人の考えてることを読み取るのが下手だ。また、考えるよりも先に口が動いてしまうため、小さい頃、それで友だちを何度も嫌な思いをさせ、何度も悔やんだ記憶がある。

そのせいか、誰かがイライラしてると、「自分のせいなんじゃ?」と人一倍に思ってしまう。

「………行きましょう。」

「は、はい。」

もやもやしたまま、私はるぅ💛さんの隣で歩き始めた。







引退した推しは仕事仲間

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