テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
194
(逃げ切れない……!)
アパートの狭いワンルームだ。玄関へ走る間に、天井から降ってきた男につかまるかもしれない。美咲の心の中に、恐怖を通り越した激しい怒りと防衛本能が湧き上がった。美咲は机に駆け寄り、ペン立てから裁縫用の鋭利なハサミを引き抜いた。両手でしっかりとハサミを握り締め、部屋の角に背中を預けて身を構える。ここなら背後を突かれることはない。刺し違えてでも、自分を守る。「ブチ、バリバリッ!」天井のベニヤ板がへし折れ、埃まみれの男が床に落ちてきた。男の体は異常に痩せており、髪はボサボサで、服からは腐った雑巾のような悪臭が漂っている。しかし、その目は異様な興奮でギラギラと輝いていた。
「あはっ、やっと同じ部屋に入れた。ずうっと、上で見てたんだよ? 美咲ちゃんがご飯食べてる時も、着替えてる時もさ……」
男はゆっくりと立ち上がり、ポケットから錆びついたサバイバルナイフを取り出した。
「来ないで! 近寄ったら、刺すから!!」
美咲はハサミを突き出し、声を張り上げた。しかし、男は怯えるどころか、恍惚とした表情で歪んだ笑みを浮かべた。
「いいよ、刺してよ。美咲ちゃんの手で殺してくれるなら、僕、本望だなあ。でも、その前に……」
男が信じられない踏み込みの早さで、一歩迫ってきた。美咲は目を瞑ってハサミを振り下ろしたが、男は信じられない力で美咲の手首を掴んだ。みしり、と骨がきしむ音がする。
「痛いっ……!」
ハサミが床に高い音を立てて転がった。
「あはは、捕まえた」
男の冷たく湿った手が、美咲の首筋へと伸びていく。視界が急速に真っ暗になっていく中で、美咲の耳に、男の狂気に満ちた囁きだけが響き続けていた。
「これからは、ずうっと一緒だよ」
コメント
1件
うわ、今回もめっちゃ怖かった…! 冒頭から「逃げ切れない…!」で心臓掴まれたわ。天井裏からずっと見られてたって発想がリアルでゾッとする。ハサミで抵抗しようとした美咲の必死さが痛いほど伝わってきたし、男の「刺してよ、本望」みたいな狂気の台詞がめちゃくちゃ効いてた。最後の「ずうっと一緒だよ」で部屋の空気ごと凍った感覚。続きが気になりすぎる…!