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オーバーワーク・パッシブ #14
「若井〜? お前、今なにしてんの?」
「……休憩……ですけど?」
「へえ〜。俺の仕事放っといて休憩ぃ〜?」
「いや、俺の仕事も終わってないですけど!?ていうか先輩の分なんですけど!?」
大森は若井の言葉を完全にスルーして、自分の席からコーヒー片手に近づいてくる。
カップを片手にくるくる回しながら、若井の机に――コーヒーを少しだけこぼした。
「……は?」
「お、拭いといて。ついでに俺の机のほこりもよろしく〜」
「自分でやれや!!」
「ん? 口答え?……おーい、聞こえなーい」
わざとらしく耳を押さえながら、大森は目の前のデスクにどっかり座る。完全に仕事する気ゼロ。
若井はもう怒りを通り越して、放心状態になっていた。
その横で大森はスマホをぽちぽち。
「お前、10分以内にメール整理しとけ。添付ファイル、ミスあったら俺知らんからな」
「まじでクズすぎません?」
「褒め言葉?」
「いや、バケモンって意味です」
「嬉しいなあ〜。そういうの、もっと言っていいぞ?」
「……全部仕事返してくれたら、いくらでも言いますよ」
「は? なに上から言ってんの。調子乗んな」
急にトーンが落ちた大森の声に、若井の背筋がぞわっとする。
直後、大森が机をドンッと叩いた。
「お前、俺に逆らうってどういうことか、わかってんの?」
「……(これが地獄か……)」
完全敗北の若井は、もう黙ってファイルを開いた。
その後ろで大森はふっと笑って、ひと言。
「俺のために働けよ、“後輩くん”」