テラーノベル
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「あ!りょうちゃん髪くくってる、可愛い〜」
「あ、ありがと」
肩に触れるところがあるくらい伸びた髪が少し邪魔でゴムで纏めていると若井が毛先をちょん、と指で弾いてそう言ってくれた。
顔が少しあつくなるくらい嬉しいのに、その“可愛い”が他の人に向けられたとき最近少し胸に刺さるのはなんで?
「ほんとにりょうちゃんってフェミニンな服似合う。髪も伸びてきて最近ますます可愛いって感じ」
「まぁどっちかというと可愛いかぁ」
「もう、どっちかというとってどういう意味···?」
元貴にもからかい口調でそう言われて、まぁそれも嬉しいけど若井から言われる“可愛い”はなんだかドキドキしてしまう。
けど若井が言う可愛いに深い意味なんてなくて···僕だけひとり嬉しくなったりドキドキしたりしている。
「わ、若井はかっこいいって感じだもんね。この衣装とかすき。ジャケット似合うし」
「え、そう?嬉しいー。このりょうちゃんはちょっと···胸元開きすぎだったよね···かっこいいし綺麗だけど···なんかちょっとドキドキした」
確かにこの衣装はちょっと僕には珍しくジャケットの下は裸で、その時は何も思わなかったけど改めて言われると恥ずかしい。
···まぁ、こんなぺったんこの胸なんて意味はないんだろうけど。
「逆にこういう時、元貴が可愛い感じのになるなぁ、フリフリだし、ね」
「···まぁ」
元貴は可愛くて僕は可愛くない?
一瞬もやっとした気持ちになってそっけない相槌をしてしまって、しまった、と思った。
「あっ、可愛いね、かわいかったね···ごめん、ちょっと飲み物買ってくる!」
慌てて廊下に出て早足で離れる。
やだ。
嫌だった。
若井が僕以外の人に可愛いっていうのがやだ。
「···なんでだろ」
最近ずっとこんな感じで自分がおかしくて戸惑ってしまう。
ドキドキしたり、何でもない言葉に動揺したり···それも全部、若井に対して。
「そんなの決まってるじゃん」
「ひぁっ!?もとき!」
「声おっきい、ってか無意識なの?君たち2人とも。それともりょうちゃんだけ?」
「なっ、なななんのこと?」
「さぁ?そういうのは自分で気づかないといけないもんじゃないの。まぁ、きっかけくらいはあげようか」
良いこと思いついたー···そんな顔で笑うと元貴は僕の手をとってさっさと部屋に戻った。
元貴の表情の意味も、そのもやもやした気持ちにも僕には分からないままそのあとの仕事を終えた。
仕事終わり、珍しく元貴が僕の家に久しぶりにいきたいなんて言い出した。
「いいけど···あんま片付いてないよ」
「いいよ、りょうちゃんちに行きたいなぁ···あ、良かったらお泊りしよっかな?一緒のベッドで寝たらいいし」
「え、えぇ···?」
「なに、だめ?」
「いや、別に···いい、けど」
別にそれはいい。
けどそんなことを言い出すのがいつもの元貴からは考えられなくて、わりと自分のベッドでしか眠れないタイプと知っているから変な返事しか出来なくて頭の中がはてな、になる。
「···俺も行っていい?」
僕たちの会話は若井にばっちり聞こえていたみたいで背中からそう声をかけられる。
「うん、もちろんだよー、2人が来てくれるなんて嬉しい、じゃあ皆で帰ろっか?」
元貴が来てくれるのが嬉しい。けどそこに若井が俺も、なんて言ってくれるのも嬉しくて家に帰るだけなのにわくわくしながらタクシーに乗り込んだ。
「んーっと、なんか···へへ」
狭いね、と言いかけて言っちゃダメかなと誤魔化した。
いつも3人で車に乗るときは僕ひとり+元貴と若井、が定番でタクシーもそう乗り込もうとした時、元貴に後ろに引きずりこまれ、隣に座った。
そうなると後ろ3人は座れるけど狭いし助手席に若井、となると思ったけどぎゅぅと若井が隣に乗り込んできて僕は2人にきゅうきゅうに挟まれることになった。
「狭い、若井のせい。りょうちゃんもっとこっち寄りな」
「···狭いなら俺もっと端によるからりょうちゃんこっちに来な」
「いや、そしたらりょうちゃんが狭いって」
「狭くないように俺にピッタリくっついていいって言ってんの」
右から左、そしてまた右へ左へと会話とともに僕は元貴に、次は若井に、と腰に手を回されて寄りかかり、そして肩を抱かれて寄せられる。
最後に若井にもたれ掛かるようにピタリと僕がくっついて元貴は、そう、とだけ言って黙り込んだ。
元貴との間には余裕が生まれて若井とは触れ合うほど距離が近くて、それでも若井の手は僕の肩に回されたまま。
···この状況はなんで、どうして···なぜこうなったのかもわかんないけど、元貴も若井も黙ってしまったから僕も静かに、ただ若井の体温を感じてドキドキして、顔があつくなるのをバレないように静かにしたままでいた。
若井の匂い。
爽やかな感じ、少し男っぽい、けど落ち着く。それに 置かれた手の熱さ。
大っきくてあったかい。
これは、この気持ちは?
心地の良いふわふわした気持ち。
笑顔を向けられるだけできゅうっとなるこの気持ち。
他の人を見ていると寂しくなるこの気持ち。
それに触れそうではっきりとしないま、タクシーは僕の家に着いてしまった。
元貴がこれ、と車内で抱えていた袋を開けると準備よくお菓子が入っていた。
「りょうちゃんこれ、きっと好きだと思って。ほら、食べなよ。これもね、はい」
「ありがとう、どれも美味しそう···若井はどれが好き?」
「これもらお、美味しそう〜」
暫くいつも通り楽しい時間が過ぎる。
僕もさっきのタクシーのことなんか忘れて、たくさん話して、そろそろ時間も遅くなったな、なんて思った時に急に元貴が僕に抱きついた。
「そろそろ眠くなっちゃったかも。やっぱりりょうちゃん〜、このまま泊まってもいい?一緒にお風呂入って一緒に寝よ?」
「えっ、ぁ、ほんとに?泊まる···のはいいけど、ほら服とかは···?」
「りょうちゃんの借りる。なんなら裸でもまぁ···ねぇ?ほら、くっついてると気持ちいいー。いいでしょ?俺りょうちゃんのこと好きだから」
元貴に寄りかかられ耐えきれず、ソファに倒れ込む。
いつもの元貴じゃない振る舞いに戸惑いしかなくてどうしたらいいか困っているうちに元貴は俺の上に乗りかかり顔が近づいてくる。
元貴のことは好き、だけどなんか違う。こんなふうにされるのは···されたいのは、好きだと言って欲しいのは···。
「元貴、やめろって!」
「···なんで?何?どうして?」
「ふざけすぎだろ、りょうちゃん嫌がってる」
若井が元貴を僕から引き離してくれた。そして僕の背中に手を置くと優しく撫でてくれる。
「嫌がってる?それは若井じゃない?ちゃんといいなよ、そうじゃないとこのままりょうちゃん貰ってもいいの?」
「はぁ!?いいわけないだろ!俺のほうがりょうちゃんのこと好きだから!これだけは元貴でも譲らないから!」
若井が珍しく感情を剥き出しで元貴に強く言い、僕の背中に置かれた手に力が籠るのを感じた。
···って、えっ?
俺のほうが僕を好き?そう、言った?
「へぇ?そう?どれくらい?どんだけ?」
「凄く好き、ずっと好きだったし今も好き。世界一好き。元貴がそういうつもりなら一緒に風呂とか泊まるとか絶対許さない!りょうちゃんは渡さないから!」
世界一?好き?
若井は···僕のことを?
その言葉に一気に顔があつくなるのを感じてしまう。
きっと僕は今、顔真っ赤になっちゃってる。
嬉しくて、でも言葉が出なくて、どうしようって頭の中がぐるぐるしてドキドキして仕方ない。
「···ふっ、ぐふっ、ふっ···世界一?めちゃくちゃ素敵な告白、ちゃーんとりょうちゃんに言ってあげなよ」
ケラケラと笑って元貴が若井の肩を叩く。さっきまでの元貴はどこへやら、いつもの楽しそう笑う元貴に僕たちはぽかんとしてしまう。
「えっ?俺···って、元貴もしかして、わざと?!」
「さぁどうかなぁ、けどりょうちゃんのその顔みたら誰が好きなのかはっきりするよね?」
若井と目が合う。
僕が誰を好きなのか。
はっきりと自覚してしまった。
なんで僕がドキドキして、小さなことで悲しくなって笑顔を見るだけで心が跳ね上がるのか、この気持ちの正体が···好き、なんだ。
「ってことでまた明日、帰るね。ちゃぁんと2人で話しなよ、本音をさ」
あぁ、慣れないことしたら疲れるわ、と言いながら元貴はさっさと帰って行った。
あの眠いたらなんたら言ってたのが嘘だとわかる、軽い足取りで。
「···りょうちゃん、その···ごめん。こんな風になって···けど、俺の気持ちはさっき言った通りなんだ。すごく好き、大好き。他の人と仲良くしてるとそれが元貴相手でも嫉妬でおかしくなりそうなくらい、大好き 」
若井は真っすぐに僕を見つめてくれる。かっこよすぎて、ドキドキして、頬が熱くなるのがわかる。
あぁ、抱きしめたいな。
心でそう思うと体は自然と動いて、若井を抱きしめていた。
「りょうちゃ···?」
「僕もっ、僕も、さっき自覚したばっかりで···けど、この気持ちは“好き”だよ···若井のこと大好きなんだ」
やっと気づいた最近僕を悩ませる気持ちの正体。
好き、好きだ、恋してるって気持ちだったんだ···。
若井の手が背中に回って顔が肩に押しつけられて、まじ···?って小さく聞こえた。
「俺···ずっとりょうちゃんが好きで···片想いだと···だから、今めちゃくちゃ嬉しい」
若井が顔をあげて近づいて、唇が僕のに重なった。
こんな幸せでくすぐったいような気持ちは初めてで夢中でキスを交わす。
「若井、大好き···」
そうして僕たちは無事お付き合いを初めた。
翌日元貴にお礼を伝えてにやっと笑ってキスくらいはできたの、なんて聞かれたのは恥ずかしかったけどずっと幸せにね、と言われたことが嬉しかった。
ようやく気づいたこの気持ちを僕はずっと大切にしていこうと思う。
隣で笑う、若井への大好きを。
maki
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コメント
4件
きゅんきゅんが止まらないです!!!💛💙是非とも、恋のキューピットになってくれた❤️さんも幸せになれるお話見たいです☺️
えぇぇッァァァ!!?!!?!最終話じゃなくてよかった〜〜😭💕💖 タクシーの中で若井くんにぎゅってされちゃうシーンとか、元貴くんの作戦にまんまとはめられる流れとか…エモすぎてもう胸がきゅんきゅんしっぱなしだったよ!💗✨ “世界一好き”って若井くんが本気で言っちゃうとこ、マジで反則級の破壊力…😭💘やっと気持ちに気づけたりょうちゃん、おめでとう〜〜!はるかぜさん、この甘々展開ありがとうございます!!次の話も楽しみにしてますね⋆♡