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お店をいくつか見て回っていると、カッチェの出店があるのに気づき、指を差して彼に伝えた。
「あっ! あそこにカッチェのショップが出てますね」
ここにお店があるのは私も知らなかったことから、どうやらプロモーションの一環として、短期の企画で設けられているらしかった。
「ああ、行ってみようか」
臨時オープンなこともあり、私の顔もスタッフさんには知られてはいないようで、貴仁さんと連れ立って中へ入った。
「いらっしゃいませ。ただいまフレグランスのオリジナルブレンドを作る割引サービスを、カップルの方へ限定で開催中なのですが、いかがですか?」
そう声をかけられて、「カップル限定の割引サービスというのは?」と、その詳細を尋ねた。
「ええ、カップルの方にお相手へのプレゼントをというもので、通常のニ割引きでご提供させていただいています」
いささか手前みそではあるけれど、いいキャンペーンだなと感じる。カッチェの香水はギフトに選ばれるお客さんも多く、彼氏彼女へ贈ることが、これを機会に増えてくれたらと思い、私もささやかながらデモストレーション代わりにと、貴仁さんへオリジナルの香水を贈りたいと考えた──。
「では私がブレンドをして、貴仁さんにぴったりなフレグランスを、プレゼントさせていただきますね」
私の方から、すかさず提案をすると、
「だが香りの仕事をしている仮にも素人ではない君にブレンドをしてもらうのは、なんだかもったいない気がするな」
彼が、やや申し訳なさそうにも口にした。
「いえ、だからこそ、私の調合した香水を、今日のデートの記念にあなたへ贈りたいんです」
素直な思いを打ち明けると、「そうか、ありがとう」と、彼がふわりと顔をほころばせた。
「もしあまり合わない香りがあっても困るので、私が選んだものを一緒に試してみてもらえますか?」
「ああ、わかった」
頷いた彼と二人で、香料のボトルが並んでいるブレンドコーナーに向かった。