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「貴仁さんには、断然オリエンタル系のコロンが合うと思うんです」
香料のボトルを一つ一つ見ていきながら、思い浮かんだことを話した。
「オリエンタル系というのは?」
「ええ、アジアンな雰囲気のエキゾチックで高級感のあるフレグランスでして、心が安らぐ癒しの香りなんです」
「この中では、どの香りになるんだろうか?」と、彼が棚のボトルに目を落とす。
「そうですね、たとえばこのサンダルウッド(白檀)とか……」
香りを染み込ませた試香紙を、彼に手渡す。
紙を鼻先に近づけると、「ああ、この匂いは私も知っている。とてもいい香りで確かに安らぐかもしれないな」そう彼が口にした。
「じゃあこのサンダルウッドの香りをベースにして、少し甘いバニラの香りを混ぜてみましょうか」
ベースのエタノール入りのブレンド用のビーカーに、サンダルウッドの香料を溶け込ませて、バニラを数滴垂らす。
「……どうですか?」
「うん、程よい甘さが加わって、香りにより深みを感じるみたいだ」
「ふふっ、香りの表現が上手ですね。私たちも調香では、いつもそんな風にフレグランスを評価しているので」
「そうなのか?」
「はい」と、彼に応えて、にっこりと頷く。
「えーっとでは、これにバラの香りと、あとはベルガモット……ベルガモットはシトラスフルーツとフローラルな香りを足したような感じなんですが、それを加えてみようかと」
華やかなローズのフレグランスと相性のいい、フローラルなかぐわしさに加え爽やかな柑橘類の香りもあるベルガモットをと、思いつく彼のイメージのままに香りをセレクトして、それぞれの試香紙を彼に匂ってもらった。