吉田の体は意思とは無関係に動き出した。傘が静かに宙を舞い、まるで生き物のように雨宮に向けて構えられる。
「くっ……動けねえ……!」
「素晴らしいね、吉田。」雨宮は満足そうに微笑む。「でも、芸術には演出家が必要だ。今から僕が、お前の技を見せつけてやる。」
シュッ――!
傘が一閃。まるで音すらも切り裂くような速さで、雨宮に向かって飛ぶ――と見せかけて、ギリギリで雨宮の横を掠めた。
「……はは、惜しいねえ。でも、これは君の腕の未熟さかな?」雨宮は嘲笑う。
「てめぇ……!」
「でもさ、もっと面白いことができるんじゃないか?」雨宮は傘を操り、瓦礫を次々と切り裂き始める。
巨大なコンクリートが紙のように裂け、鉄骨がねじ切れる。
「いいねえ、いいねえ!やっぱりこの傘、最高だよ!」
しかし、吉田の目は冷静だった。
(……まだだ。57秒、必ず終わる。)
だが、雨宮はその冷静さを見逃さなかった。
「……そう思ってるだろ?」
「……何?」
「57秒を耐えれば終わる……そう思ってるね?でもさ、僕の“恐怖支配”にはもうひとつ奥があるんだよ。」
吉田の胸に、冷たい汗が流れる。
「……何だと?」
「恐怖を感じているのは……君だけじゃない。」
その瞬間、吉田の傘が自らの喉元へ向けられる。
「っ……!」
「もし、操られている間に自分の命が危険になったら?――そう、恐怖が恐怖を呼び、支配時間は無限になる。」
「……マジかよ……」
吉田は歯を食いしばった。喉元に迫る傘の切っ先が、すでに肌を裂きかけていた。
「さあ、君はこのまま自分の武器で幕を下ろすのか?」雨宮の声は楽しげだった。
だが、その瞬間――
――カチッ。
「……は?」
雨宮の目が見開く。吉田の指が、小さく鳴らされた。
「お前、俺の傘の力……ちゃんと理解してねぇな。」
次の瞬間、傘の先端が吉田の本体を貫いた。
「……!?」
「……“反射”。」
傘が突き刺さった影は、まるで鏡のように雨宮へ向かって襲いかかる。
「そんな……!?」
雨宮は避けようとするが、吉田の体はまだ彼の支配下。動かせるのは、傘だけ。
ズバッ――!!
肩口から鮮血が噴き出す。
「……っぐあ……!」
「57秒ってのは、俺には充分なんだよ。」吉田は冷たく笑った。
そして――
「カウント終了だ。」
その瞬間、吉田の体の支配は解かれた。
「……っ……!」雨宮は後ずさる。「でも、まだ……!」
「もう遅ぇよ。」
吉田の傘が、解放される。
「……ぶち抜くぜ。」
ズドンッッッ!!
傘から放たれた一撃は、赤い月光すら切り裂きながら、雨宮に向かって直撃した。
轟音とともに、廃墟の街は静寂に包まれる――。
コメント
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今回も神ってましたぁぁぁ!!!! よっしいいいぃ!君を信じていたぞ!!!!(何様じゃ いやでも雨宮タァンも中々すげえよな、、、イカレてるよ!!!(((( とりまよっしーと傘は最強と師匠は最強だと言うことが分かりました(? 次回もめっっっっさ楽しみいいいいぃ!!!!!!