「田辺くんか。君は文芸部には勿体ないほど元気だねぇ。」
先輩は頬杖をついてニヤリと笑いながらそう言った。
「すみません。張り切りすぎちゃいました…。」
俺は恥ずかしすくて先輩から目を逸らし、頭をかいた。
「そういうとこも初々しくてかわいいよ。」
先輩はにっこりと笑ってそう言った。
「文芸部は実は私しか部員がいません。」
「え!?」
「だいたいの子は文芸部に入るなら帰宅部を選ぶからね。」
「それは確かにそうですね。」
「この高校、文化部少ないでしょ。だから先生は 部員が1人しかいなくても文芸部を残してくれてるの。」
「そ、そうなんですね…。」
驚いた。先輩しか部員がいないなんて…。
「先輩は勧誘とかしたことあるんですか?」
「ない。」
でしょうねぇ。こんな可愛い先輩がいるって知ってたら今頃部員は30人近くなっていただろう。
「まぁ、こんな感じの部活だから、部活動時間中は宿題やら、ゲームやら、スマホやら、何やってくれても構わないよ。でも、一応活動証明のために、文化祭にはなんか展示して、卒業時には卒業制作を提出するようになってるから。でも、去年の文化祭は詩を展示して何とかなったからそんな深く考えなくても大丈夫。」
「わ、わかりました。」
非常にゆるい。しかも、この先輩と自由な時間を過ごせるなんて天国でしかない。
「ところで先輩はなんで文芸部に入ったんですか?」
「本が好きなのと、部活には入っておきたかったからかな。」
「そうなんですね。じゃあ先輩は普段部活中何してますか!」
「うーん。本読んだり、宿題したりかな。」
「そうなんですね。」
会話下手か俺…!でもなんとかして先輩と仲良くなりたい…。
「めちゃくちゃ緊張してるね。」
先輩は笑ってそう言った。
「はい…。」
(緊張してるのバレるとか死にたいくらい恥ずかしい…。)
「仕方ないよ。体験入部初日なんだから。君は明日も来るの?」
「はい!てかもう入部します!」
俺は張り切ってそう答えた。
先輩は笑いながら言った。
「じゃあ明日は一緒にトランプしよっか。」
先輩の笑顔は美しかった。
静かな文芸部の教室。窓からは グラウンドに響き渡る運動部の掛け声が微かに聞こえていた。
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