「・・・・これは今、どういう状況?」
元貴の家に着くなり、僕は壁ドンをされた。
「涼ちゃん。」
「はい。」
「これ何?」
「え?」
元貴は僕のシャツの襟に指をかけた。
「キスマークだよね?」
「昨日若井の家に泊めてもらった時に、僕が買って行った酒を若井が間違って飲んじゃって・・・。」
昨日若井と夜遅くまで一緒の撮影で、今日は僕一人朝早かったので近かった若井の家に泊めさせてもらった。その際、お土産にとコンビニで食べ物や飲み物を買って行ったのだが、ジュースと間違えて若井は僕が買ったコークハイを飲んでしまい、”酔っぱら井”が出来上がった。
「それで?」
「若井がふざけてキスマーク付けました。」
「涼ちゃんはそれを許したの?」
「許したって言うか、気が付いたらって感じだったし・・・。」
「ふ~ん・・・。」
元貴は僕から離れると、作業部屋へと入って行ってしまった。
「どうしよう・・・。」
元貴が作業部屋に入ったら『話しかけない、近づかない』がチーム内での暗黙のルールになっている。誤解だと伝えたけれど、元貴は納得していないようだし。
(だからと言って本当に作業してたら、邪魔になっちゃうし・・・。)
折角元貴の家に来たのに一緒に居られないのは寂しいので、なんとなく作業部屋の扉の前に座って作業が終わるのを待った。
***************
「涼ちゃん?」
これはどういう状況だろう?
作業部屋から出ると、涼ちゃんが部屋の前の廊下でへそ天で眠っていた。
気づいた時、俺は作業部屋にいることがある。
一種の夢遊病みたいに、話してたり飲んでいる時、フラッと作業部屋に入って出てこなくなるらしい。
作業部屋に入る前のことを思い返す。
俺が若井のことで怒って部屋に入ってしまったと思ったのか、しかし本当に作業の為なら邪魔しちゃだめだと思い、でも離れた場所にいるのはなんか不安になって、どうしたらいいかわからなくてこうなったんだろう。
(主を待つペットみたい・・・。)
顔を覗き込むと、むにゃむにゃと何か言ってるようだったが、若井みたいにはっきりとした寝言じゃないから聞き取れなかった。
なんとなくその特徴的な鼻にキスをする
「ん・・・・。」
少し身じろぎしただけで、起きる気配はない。なんだかんだ言っても、最近涼ちゃんも一人の仕事が多くなってきたし、疲れてるんだろう。
「おやすみ、涼ちゃん。」
頭をなでなですれば、微かに笑ったように見えた。
「痛・・・。床で寝たから体バキバキだ・・・。」
「おはよ、涼ちゃん。」
「元貴?!いつ出てきたの?」
「んー・・・1時間くらい前?」
「起こしてよぉ!」
「いや、疲れてんのかなぁって思って。つかなんでそんなところで寝てたの?」
「元貴が怒ってると思って。でも本当に作業してたら邪魔しちゃ駄目だから・・・。」
概ね予想通りだったみたい。
「俺怒ってないよ。作業してた。でも、涼ちゃんは無防備すぎるから気を付けてよね!」
「ごめんなさい・・・。」
後日
「若井。この前涼ちゃんと宅飲みしたんだって?」
「あぁ。それが?」
「お前、酔っぱらって涼ちゃんに何したか覚えてないの?」
「え?!俺何かやらかしたの・・・?」
「酔っぱらって涼ちゃんの柔肌にキスマーク付けたんだよ。」
「キスマーク・・・?それだけ・・・?」
「あ”?」
「あ、いえ、ごめんなさい!」
「フフフ、怒ってないよ?(ニッコリ)」
「・・・・(絶対怒ってる)」
「はい、これ新しい曲譜♡」
「(確認中)・・・って、なにこの指もげそうなコード進行は?!」
「ガ・ン・バ♡」
「(絶対怒ってますやん・・・)」
鼻:愛玩
コメント
2件
やきもち♥️くん、好きです🤭💕