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ぼんやりした夢が途切れるたびに、花火大会の話が隣から聴こえてきた。パリでは凍るような新年の花火は見たけど。電車の中や街中で、浴衣姿の子が花火の絵の小さなうちわであおぐのを見るたびに、あんなんでこの暑さを払おうと考えてる愚かさに苦笑したよ。だって、いくら追い払っても暑さはついてくるじゃないか。充分、記事になる。そんなときだけは、無意識に日本人をやめてるんだ。そのあと、スーツ姿の紳士がやってきた。白髪頭の前頭部に刻まれた皺には汗が滴っていて、せっせとハンカチで押さえている。一緒にいる若い方……とは言っても中年の域には入ってるが……は白地にストライプの入ったしゃれたYシャツを着ていて、涼しいなぁここ取っときますよと、俺が最初に座ろうとしていたテーブル席に沈んだ。斜め後ろのことだ。白髪の男はウイスキーを二つ注文すると、ストライプシャツの前に座った。