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目が覚めると知らない場所にいた。
ここはどこなのだろうと、枕に頭を乗せながら首を動かしてみる。独特な匂いと周りの設備からどうやら俺は病院だとすぐにわかった。
「痛ってぇ」まだ少し頭が痛いうえに倒れてから病院に運ばれるまで全く記憶がない。どのくらい気を失っていたのだろう。そんなことを考えていると 突然、シャーと音を立てて勢いよく俺の目の前のカーテンが開いた。
カーテンが開くと一人の看護師と目が合った。看護師は俺の顔を見て少しだけ目を大きくして「目が覚めたんですね!すぐに先生を呼んできます。」と行ってすぐに病室の扉を開けて行ってしまった。
そこから先は白衣を着た若くて身長の高い先生が俺の今の状況や、何があったのかなどを事細かに教えてくれた。
先生によると俺は河川敷の下のそれなりに人通りのある道路で倒れていたらしく、たまたま通りかかった人が俺を見つけて救急車を呼んでくれたらしい。
「何か倒れる前のことで覚えていることとかありますか?」低く落ち着きのある声でそう尋ねる先生に、俺は倒れる寸前考えていたことを正直に述べる。
「実は俺高校に入る前までの記憶がないんです。でも覚えてないのに何故かお母さんだったり昔からの友達とかのことはわかるんです。」俺が話し終わり、しばらく黙っていた先生が 「少し待っていてください、院長を呼んできます。」無表情で俺の目を見てそう言う彼はさっきとは少し雰囲気が違っていた。
先生が病室から出ていくと。静寂が病室を飲み込んだ。まるで雪の日のように冷たく静かで何もない病室耳鳴りがする。そんな中俺はある違和感を感じた
それは「ただの頭痛でここまで大袈裟なことなんてあるのか?」というとても簡単なことだった。確かに俺は道で倒れていて救急車で運ばれてきた。入念に検査をしておいて損はないだろう。しかし、院長まで出てくるとなると話は変わってくる。考えれば考えるほど出てくる疑問に自問自答しているとガラガラっと音を立てて病室の扉が開いた。そこには60代後半の院長らしき男が立っていた。「やぁ調子はどうだい?話は聞いたよ記憶がないんだって?」
「はい、昔のことは覚えてないのに関わりのある人はどんな人かわかるんです」
俺の答えを聞いて院長はゆっくりと話し出した。
「この国にはね、病院はここしかないんだよなぜだかわかるかい? 」
急に訳のわからないことを言い出す院長「そんなわけないでしょう日本中いや世界中にはどれだけの病院があると思っているんですか?」そう言うと院長は一言
「君の言う世界ってどこのことだい」
またおかしな質問をしてくる院長に俺は地名や国の名前を言おうとした。しかし、言葉が出て来ない。自分の昔の記憶がないのと同じで、くり抜かれたようにぽっかりと記憶が抜けている。「ここはどこなんだ…」そういう俺に院長はにやりと笑って「君の記憶が抜けている理由を教えてやろう」院長がそう言って胸ポケットからスマートフォンを取り出し見せてきた。そこには交通事故のニュース記事が書いてあった見出しは「親子2人死亡」と書いてあった。その横には事故現場の写真が乗っていた。それを見た時俺の頭の中で古い記憶がまるで映画のように流れ出した。
そのは俺は母親と二人で買い物に行っていた。「春人がいると荷物待たなくていいから楽でいいわね」ご機嫌そうに言う母に
「荷物持ちのためだけに連れてきたのかよ」不機嫌そうに言う俺。そんなことを話しながら車を走らせているとかなり遠くになぜかこちら側に勢いよく向かってくる車が一台見えた。「ねぇ母さんあれ」俺が言うと母さんは目が悪く見えていないのか「あれってどれよ」俺の指刺した方を見ながら言った。そんなことを言いいながら信号を待っていると俺たちの車と凄い勢いで向かってくる車の間を横切るようにトラックが曲がってきた。すると次の瞬間目の前でその車とトラックが激突した。そしてトラックがこっちに吹き飛んできて、「きゃぁぁぁ」母の叫び声とともにそこでプチンと記憶がなくなっていた。
存在しないはずの記憶。なぜこんな記憶があるのか自分でもわからない。頭を抱え冷や汗をかきながら院長に「俺は一体なんなんだ?」と聞くのだった。