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「あー……フィーレ?それさっき紹介されたパンジャンドラムだよね?気に入ったの?」
恐る恐る聞いてみる。だってフィーレが簡易クラフト装置で組み上げたのは、間違いなくパンジャンドラムなんだから。
「とっても興味深いから、今すぐにでも試してみたかったんだ!」
いや、目をキラキラさせて言わないでよ。許したくなっちゃうから。
「なんで今なのさ?」
「本当は夜まで我慢するつもりだったんだよ。でもさ、ここはお宝の山!そしてこの車を見て我慢できなくなっちゃったんだ!だからフェル姉ぇにお願いしてこの異空間を作って貰ったの!」
「フィーレちゃんがどうしてもと言うので、迷惑にならないように気を付けて作りました」
「そっかー……」
フェルも笑顔だし、それなら許してしまいそうになるから不思議だ。
「この島は面白いね。技術発展にはたくさんの試行錯誤が必須なんだけど、この島の技術者達はとても冒険的だと思う!」
いやまあ、結果英国面なんて揶揄されるような素敵な技術の産物、特に兵器が登場したんだけどさ。
私は軍事にそこまで詳しくないけど、不思議な主砲の配置をした軍艦やら何故か後部銃座しか無くて前を撃てない戦闘機やら配管のミスでパイロットの顔面にエーテルを吹っ掛ける雷撃機やらそもそも撃てないライフルとか。
もちろん事情はあるんだろうけどね。
「車輪にロケットブースターを取り付ける斬新的な発想!確かに技術力が足りなかったみたいだけど、それは時代を先取りしてしまったから!」
「そうなのかなぁ?」
「取り敢えず動かしてみたかったから、ラジコン操作機能を取り付けてみた」
「それが本音だよね?」
見た目にロマンがあるのは否定しないけどさ。フィーレがやろうとしていることを察して、ばっちゃんとフェルも空へ飛び上がる。もちろん私も翼を広げて飛び上がった。どう考えても危ないからね。
「じゃあ、発車!」
フィーレの操作を受けてロケットブースターに点火される。車輪に爆発的なエネルギーを与えて。
「ありゃ、空転してるよ☆」
「まあ、そうなるよね」
その場で車輪が空転してる。
「これ難しいなぁ。ほらっ!」
フィーレが降りていって胴体を蹴ると前に進み始めた。うん、真っ直ぐ爆走しているね。
「操作は難しいけど、出来ないことじゃないよ!ほらっ!」
フィーレが操作すると、なんとパンジャンドラムが滑るように美しいドリフトを決めた。
あっ。破滅的な音がした。具体的にはバキって。
「あー、脱輪したね☆」
「まあそうなるな」
左側の車輪が飛んでいき、本体は火花を散らしながら滑っていき。
「あー爆発した」
「汚い花火だね☆」
「どこで覚えたのさ」
どうやら爆薬も本物を再現したみたいで大爆発してしまった。うん、分かりきってた事だけどね。
「素材的に無理だったけど、これは使えるよ。ティナ姉ぇ、改良型を作って良い?センチネルウォーカーに対する効果的な兵器になるかもしれない」
おっと?いきなり話が飛躍したぞ?センチネルに対する兵器になる?
「フィーレ、どう言うこと?」
「高速で地上目標に接近して体当たりをする。これとっても有効かもしれない」
「ミサイルがあるよ?」
「ティナ姉ぇらしくないなぁ。センチネルウォーカーの対空火力は良く知ってるよね?」
センチネルウォーカーは四本足の牛みたいな形をした巨大な兵器だ。対空火力も尋常じゃない。ラーナ星系では奇襲攻撃を仕掛けたから撃破できたけど、航空機で攻撃を仕掛けるのは本来自殺行為だ。
反面その図体故に足元が手薄だけど。
「この兵器を実用化できたら、私達はセンチネルに有効な陸戦兵器を手に入れることになるよ」
地球人に説明したらビックリされると思うけど、アードには地球ほど充実した陸戦兵器が存在しないんだ。理由は幾つかあるけど、私達アード人が自由に空を飛べることが大きな理由だったりするらしい。地上を進撃するなんて事は無いしね。
当然陸戦戦術も未熟だ。塹壕なんて意味がないから存在しない、いや発想がないし。戦車も同じ。大砲はあるけど地球で言う対空砲だ。
空を飛べるから如何にそれを妨害するか。それが至上命題だからね。当然センチネルの陸戦兵器に対して有効な攻撃手段は少ない。スターファイターを使った航空攻撃だけど、センチネルはそれに対抗するように対空火力を充実させた。
「じゃあ、センチネルウォーカーを破壊できるようになる?」
「少なくとも今までみたいに決死の覚悟で対空弾幕に突っ込むより遥かに効果的で安全にね。爆薬だけじゃなくてミサイルランチャーを取り付けて走らせながら撃つなんて方法もある。これ一つを研究するだけでも、アードからすればとんでもない恩恵がある」
まさか英国面の極みと言われた兵器からそんな発想に辿り着くなんてなぁ。なんだろう、複雑な気分だ。
「フィーレちゃん、地球の軍事技術は参考になるのかな?☆」
「パンジャンドラムに限らず、陸戦兵器に関してはね」
「ふぅん……よし決めたよティナちゃん」
「なに?」
ばっちゃんがニコニコしてるよ。嫌な予感がする。
「技術交流の対価は具体的にどうしようかなって迷っていたけど、これに決めた。フィーレちゃんが技術を与える代わりに、地球にあるあらゆる陸戦兵器……うーん、陸軍か。それの技術を全て無償で提示すること。代わりにフィーレちゃんが地球で実現可能な核心的な技術を提供する。うん、完璧」
「うーん、それで良いの?」
「最初に初期型パルスドライブシステムの技術協力だよ?フィーレちゃん、地球単独だとどれくらい掛かりそう?」
「頑張っても百年かな。私が手伝えば……数年以内には実現できると思うよ」
超光速航行技術は宇宙開発に必須と言って良い。それだけ宇宙は広いんだ。初歩とは言えそんな核心的な技術を提供するんだから……まあ、良いのかな?
異空間を解除した私達は特に疑問を持たされること無く博物館見学を終えた。フィーレは全部スキャンしてたけど。
外で待っていた朝霧さんや英国首脳陣さん達に早速ばっちゃんの提案通り対価として陸軍技術を求めてみたら……皆さん揃って顔を青ざめさせた。あっ、朝霧さんが吐いちゃった。ばっちゃんも爆笑してる。
……え?またやらかした?