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次の日の放課後。
私は朝からずっとそわそわしていた。
――明日も来るから。
昨日、星谷先輩が言ってくれたその言葉が、何度も頭の中で繰り返される。
「彩、今日なんか機嫌よくない?」
隣の席の友達が、不思議そうに顔をのぞき込んできた。
「えっ!? そ、そうかな……。」
「うん。なんかずっと笑ってる。」
「そ、そんなことないよ!」
慌てて否定すると、友達は「ふーん?」と首をかしげた。
私は慌てて教科書に目を落とす。
……そんなにわかりやすいのかな。
自分でも、今日は少し浮かれていると思う。
だって。
放課後になれば、また先輩に会えるから。
◇ ◇ ◇
「失礼します……。」
図書室の扉を開ける。
誰もいない静かな空間。
私はいつもの席に荷物を置いて、本を整理し始めた。
すると――。
ガラッ。
扉が開く音。
思わず顔を上げる。
「……こんにちは。」
そこにいたのは、星谷先輩だった。
「あ……!」
自然と顔がほころぶ。
それを見た先輩が、少し驚いたように目を瞬かせた。
「なに、その顔。」
「え?」
「俺が来て、そんなに嬉しかった?」
「……っ!」
一瞬で顔が熱くなる。
「ち、違います!」
「ふーん。」
絶対、からかってる。
先輩は楽しそうに笑いながら、私の向かいの席に座った。
「でも、俺は嬉しい。」
「……え?」
「彩が待っててくれたみたいで。」
心臓が、どくんと跳ねる。
そんなこと、さらっと言わないでほしい。
私は何も言えなくなって、本に目を落とした。
そのときだった。
ガラッ!
突然、図書室の扉が勢いよく開く。
「彩!」
「……え?」
顔を上げると、そこには同じクラスの美咲が立っていた。
「あれ、探したよ。先生が……」
そこまで言って、美咲の言葉が止まる。
視線が、私と先輩を行ったり来たりする。
静寂。
そして――。
「……え?」
美咲が固まった。
「え、え、え……!?」
嫌な予感がした。
「な、なんで星谷先輩と二人でいるの!?」
図書室に声が響く。
RuRi
221
ムメイ
141
#BL
きなこもち
136
私は思わず肩を跳ねさせた。
「ち、違っ……!」
「違わないでしょ!? 今、二人きりだったよね!?」
「それは……。」
うまく説明できない。
すると、隣で先輩が小さく笑った。
「内緒、ってことで。」
「……は?」
美咲が目を見開く。
「な、な、内緒って……!」
完全に誤解されている。
私は慌てて立ち上がった。
「ち、違うの! 本当に何も……!」
「彩……。」
美咲が信じられないものを見る顔をする。
「まさか……星谷先輩と付き合ってるの?」
「違う!!」
今までで一番大きな声が出た。
図書室が静まり返る。
すると、先輩がぷっと吹き出した。
「……ふふ。」
「先輩!」
「ごめん。面白くて。」
全然面白くない。
私は顔を真っ赤にして先輩を見た。
そのとき。
「……本当に?」
美咲が、少し真面目な顔で聞いてくる。
「う、うん……。」
「……そっか。」
なぜか、ほっとしたように笑う。
そして、私の耳元に顔を寄せた。
「でも、星谷先輩が彩を見る目……ちょっと特別だったよ。」
「……え?」
小さな声だったのに。
その言葉だけが、はっきりと耳に残った。
特別……?
思わず先輩を見る。
すると、先輩もこちらを見ていて。
ぱち、と目が合った。
その瞬間。
「……っ。」
なぜか、胸が苦しくなった。
私は慌てて目をそらす。
そんな私を見て、先輩は少しだけ優しく笑った――。
このとき私はまだ知らなかった。
“秘密を知る人”が一人増えたことで、私たちの関係が少しずつ変わり始めることを。
コメント
1件
いやあ、もう、美咲の登場シーンで一気に心臓が跳ねましたよ!「内緒」って先輩がさらっと言っちゃうのがずるい…完全に誤解を楽しんでる(笑)。でも最後の「特別だったよ」からの目が合うあの空気、一瞬で甘くて切なくてドキドキしました。キーパーソンが増えて、これからどう転ぶのかすごく気になります!