テラーノベル
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憤然としながら、目の前のお刺身をいただく。
あ、おいしい。舌の上でとろけるような触感。口元が緩んでいくのが分かる。
駄目だ、怒りが続かないわ。
母親が豪胆で裕福だったから、私は苦労知らずで育ててもらった。そのせいか、私はちょっとぼんやりした性格なのだ。
はっとして真顔を作る私を見て、目の前の深山さんは堪えきれなくなったように笑い出した。
「はっ、はは。ダメだ。君は策士じゃなくバカのほうだな」
その笑顔には、目を奪われてしまった。
だってさっきまであんなに怖かったのに、何その無邪気な笑顔。ずるくない?
「さっきから失礼ですよ!」
「この場合は褒めてるんだよ。策士だったらどうあっても君を会社から追い出すつもりだった。……じゃあ、君の頭でもわかるように順序だてて聞こう。なぜ俺が君を連れ出したかわかるか?」
私は首を振る。
それが現在最大の謎だわ。
「Webセキュリティの解析を頼まれていると言っただろう? 君の会社は何者からかアタックの対象にされていて、俺たちはその対策を施している。アタッカーのターゲットは社長個人らしくてね。俺は仕事として、付け入られる可能性のあるものはすべて排除しなきゃいけない」
「はあ」
「それが君ってことだ」
顔がこわばってしまって、慌てて手で押さえるけれど、彼はしっかり私の挙動を観察している。まるで、獲物を狙った猛禽類のような目。リスの私が敵うわけない。その目に捕らわれて捕食されるのを待つのみだ。
だけど、少しばかりの抵抗は試みないと。
「それと、私が何の関係があるんですか」
「しらばっくれても無駄だ。じゃあ聞くが君の父親は?」
一見関係なさそうな質問が出されたことで、私は彼が全て知っているのだと理解する。
慎重に会話をはぐらかすのみだ。
「いません。私の母はシングルマザーでした」
「戸籍上はいなくても、生物学上の父親と言うのは必ず存在するもんだ」
「私は知りませんってば」
「知らないからのうのうとこの会社で受付してる……でいいのか」
「はい」
コメント
1件
第14話拝読しました🖤 最初は怒ってたのに、お刺身で一瞬で心が溶ける主人公、可愛すぎます😂「怒りが続かない」って自己分析も愛おしい…。 深山さんの無邪気な笑顔、あれ反則ですよね。さっきまであんなに怖かったのに、ずるい!でもそのギャップに主人公が惹かれちゃうのも分かります。 父親の話が出てきて、ここからどうなるのか…続きが気になります!
鷹槻れん

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鷹槻れん

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