テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
ゆかボンド
233
18
──────椎名視点──────
そろそろ本命のルートを決める必要があった。神に全てのルートの内容を大まかに教えてもらい、じっくりと時間を重ねて考えた。時間は無限と言っていいほどある。焦る必要は無い。そう自分に言い聞かせて。
Jルートは1月と6月7月のこの3つの月をひたすら繰り返す異常性のある世界であり、めめ村の皆でその謎を究明する、というものだった。ほとんどの土地が樹木で覆われて、科学が発展することなく、森には魔族が集まる超危険な世界。しかも、全員人間なため、寿命もあるし、人外によって容易く殺されるからなしだ。
Kルートはどうだろうか。めめ村の中の数名が大国の王になり、ほかの3つの国と争う。…どっからどう考えてもバッドエンド待ったなしだ。まず大前提とする全員生存が不可能だろう。
Lルートは?M、Nルートは?どれもダメ。全員生存が見込めないものが多いし、全員が人間。ハズレ中のハズレだ。ただ、Mルートは魔法が発達した世界だから、そこで魔法を修得すればいいだろう。
O、P、Qルートは?人外もそこそこいるが、あの世界は天使と悪魔の戦争が起きる前。つまり、悪魔が簡単に下界に侵入して、簡単に契約してくれるし、その契約以上の力を授けるもんだから強い悪魔を召喚できるかの運ゲー。そんな運ゲーで何回も死んでられないし、めめ村内の裏切りもどこよりも多い。正直やってられない。
Rルート。これが1番の論外だ。このルートは恋愛シュミレーションゲームの中で繰り広げられるものであり、めめ村メンバーが攻略キャラ、主人公はよく分からない夢主?というキャラがやるらしい。…聞いているだけで気持ち悪かったから省略するが、なんというのだろう。その、子供には見せられない内容がある。それはグロでもあるし、エロ系でもある。とんでもねーゲームだ。これはさっさとあっち側に干渉してそのゲームを終わらせた方がいい。
となると、最有力候補はSルートになるだろう。めめ村メンバーの全員全てが今までのルートの中でトップレベルに強く、また、仲間同士仲がいい。しかし、こんなに強いからにはもちろん物語の山場、つまり障害も多いわけで。最終的にこの物語は最高神との争いになる。…勝てっこないはずなのだが、一応勝算は数パーセントはあるらしい。いやぁ、きついが、種族を見ただけで強いことがわかってしまう。そして、何より懐かしの勇者いえもんと死神めめんともりが目に入る。こいつらに賭けてみてもいいんじゃないか。前回の敗因はいえもんさんが強すぎるが故にめめさんに殺された、というもの。しかし、このルートのめめさんはまだ死神になりたてで、誰かを殺すことに躊躇いがある時期だ。この時間の間にいえもんさんがぱぱっとやってくれれば…!!
そうして、私は本命のルートを決めた。
「春。本命のルート決めました。」
私がそういえば、待ってました!と言わんばかりに近寄ってくる。
「何にしたんですか?もしかしてRル」「Sルートにします」
こいつナチュラルに変なことを言いやがったな、と思いつつ強い意志を示す。春は少し考えたあと、無表情で頷く。
「ま、そりゃそうですよね。じゃ、頑張ってください。」
「なんでそんなに突然塩対応なんですか?」
「いや、うん。なーんでいえばいいんだろうね?ここからあなたがどう捻くれるのかなって…。」
突然なんてことを言うんだ。そんなわけない、と否定しようとしたが、その言葉は喉につっかえて出ることはなかった。
───今まで、私は想像を絶する思いであらゆることがあった。今や、最初にマジックをしていた私と同じ考え方はしていないし、もう、世界を知ってしまった。───そう、あの頃のみんなを楽しませるために頑張っていた私に戻れない。そう、わかってしまったから。
「春。」
「どうしたの?突然。捻くれるのかって聞いたの、嫌だった?」
「いや、聞きたいことが…。」
違う。そんなことじゃない。私は思い至ってしまったら、脳を蝕むその考えの答えを尋ねる。
「昔と、今の私って同じですか?───そもそも、私は、人なんですか?」
随分と弱々しい声が出てしまった。そうだ、私は自分でも自覚できないほど何千回も何万回も繰り返して、その度に死んできたのだ。私が自覚しているのは9回だけなのに、きっと、それ以上に存在ごと消された物語が数え切れないほどあるのだ。その度に、最初からやり直して、神に認められるほどの内容になるために動き続けた私。ルートによっては私は化け物となって物語を紡いできた。人も、人外も関係なく殺した。最近では悪いことをしてない奴らだって殺した。最もらしい理由をつけて、殺した。それに、明らかに、死んだら終わり、という人間の理を外れている。
こんな私を、世界はなんと呼ぶのだろうか。人殺し、なんてもんじゃない。本来あったあるゆる人生をぶち壊して、自分を中心に物語を展開し、時には誰かの希望を打ち砕く。そんなこと、昔の私でも、ここまでの決意はもてていなかったはずだ。
どうして、こうなってしまったの?
そもそもこの肉体は私のもの?それとも死ぬ度に身体が新しいのに変わってたりするのだろうか?もし、そうなら何万回も体を新しくしている私は私とは言えないのでは?でも、はっきりと東雲椎名という記憶もあるし、AからIまでのルートの記憶もある。私は、誰になってしまったのだろうか?
答えを求めたら渇望せずにはいられない。こんな恐ろしい考えを即座に否定て欲しい。だって、目の前にいるのは完璧で、誰も逆らうことができない【神】なのだから。哀れな子羊に救いを与えるのが仕事の神なのだから。だから、どうか、どうか───。
「どうなんだろうね?私がそこまで定義してないからな〜。」
その瞬間、私が望んだ希望はあっけなく破壊された。希望を望んだものが、それを失った時にやるのは自暴自棄になるか、もしくは八つ当たりでしかない。
「はッ!?あなた、神なのに分からないんですか!?!?」
そう、感情的に神を蔑み、下に見る。1回、言葉のダムが破壊されれば、あとはただ氾濫するだけであった。私の口から、今まで散々溜め込んだ罵詈雑言と暴言が吐かれ続ける。
「いつもッいつもいつもいつもいつも!!!私が聞きたいことは避けて、必要な情報は聞かなければ答えず、大切なところを聞けば曖昧に返す!?!?ありえない!!私は、ずっとずっと命を賭けてみんなのために頑張ってるのに!あんたなんなんだ!!人の頑張りを物語としてただただ美化しただけの内容を書いて楽しいのかよ!!何!?ハッピーエンドを目指してるのに、バッドエンドを書くのやめろよ!!!あんたがハッピーエンドを書いてくれれば私はこんな、こんなに馬鹿みたいなことをする必要なんてないのに…ッ!!お前がッお前が神なんて名乗るんじゃないよ!!こっちは人生を賭けてんのに!涼しい顔で何言っちゃってくれてんだ!!この世界のために死んでよッ!!死んで!!!死ね!!!死ねェェエエ!!!!」
私は感情ののるままにその神の細い首を両手で抑え、強く締める。首の骨なんて何回折ったと思っているんだ。こんな、化け物みたいな力だって、本来なくてよかったはずなのに。平和に、談笑して、老衰で死ねたはずなのに。こいつが、私の世界に来たせいでこの地獄は始まったんだ。何百年もかけて積み上げた世界がたった一度のミスで全てが水の泡になるなんて正気じゃやってられない。だから、なるべくその不満を飲み込むようにしてたのに。私の努力を全てなかったようにしやがって。不満や愚痴を貯めたらいつかどこかで爆発してしまうのに。そんな爆弾の私をこいつは着火したから!!
「…満足ですか?ここが物語の世界である限り、私は死ぬことは無い。けど、あなたは違うでしょ?」
そう言いながら私が首を体重を乗せて締めていたのに、まるで何事も無かったように上半身を起こしてくる。そして、なんの音も、気配もなく私は後方へと吹き飛ばされる。都合よく現れた壁によって遥か彼方に行くことはなかったものの、壁に勢いよく衝突した影響で頭からガンッと痛い音を響かせた。その衝撃で視界が白と黒で点滅し、チカチカとする。
「ほら、あなたは傷だって追うし、普通に死ぬ。だけど、死んでもあなたは解放されることはない。だって、あなたを中心にこの物語は回っているから。」
「私は!主人公になんてなりたくなかった!!」
私は、溜め込んできた本音を吐き出す。いつからか、そういうもんだ、と諦めて心の奥に封じ込めていた本音を、こぼしてしまった。今から言うのは、私、東雲椎名が思った正真正銘の本心だった。
「私は、物語のモブでもいいから、最初の村とかに出てくる、ひ弱な人間でよかった。そこで、みんなと過ごして、平和に暮らせれば良かっただけなのに…。」
私が、そう涙ながらに訴える。泣くつもりなんてなかったのに、なぜだが涙が止まらなかった。でも、なんで泣いたかわかる。それが、人の弱さであり、心が壊れた時の生理現象だから。
けど、神はゾッとするほど冷ややかな目で私を見ていた。先程まで泣いていた私だが、あまりの気迫に思わず凄む。
「椎名さん。平和に暮らせることが当たり前、なんて思わないでください。あなたが、何回も人生を繰り返してわかったことだと思ったんですけどね。」
最初は忠告だったが、最後には私に警告するような、厳しい感情が乗っていたように感じた。でも、私ももう黙ってはいられない。
「ただ物語を書いているだけに過ぎないあんたに言われたくないよ。あなたは、書いてるだけで体験してるわけじゃない。あたかも自分が不幸、みたいに振る舞わないでよ。」
「椎名さん。私はあなたの全てを知っているからこそ言ってるんですよ?でも、あなたは私の本名も、見た目も、本心も知らない。そんなあなたが言う言葉は薄すぎるんですよ。」
「だからって、人の人生を───」
「もう、いいですよこの話。何を言ったって人の意見を変えることはできないんですよ。さ、次のルート頑張ってくださいね。」
そのまま、強制的に打ち切られ、この話は終いとなった。不満も、文句も、愚痴もあるがそんなこと言ったって現実は変わらない。すぐ切り替えられるかは分からないが、本命ルートのためにできることをするべきである。
でも、一つだけ弱音を吐くなら。誰か、私を救ってください。
そんな弱音を、いつしか見えた画面の前のあなたに訴えてしまう。
ここで切ります!いやー!2日ぶりですね!すみません…。色々と慌ただしくて。
ちなみにですが、れいまり編が終わったあと、れいまりさんの基本情報をまとめるのと、質問があれば答える予定です。また、この過去編が終わったらおそらくれいまりさんを深堀ることはもうないですので。よろしくお願いします!
関係ないですし、私事ではありますが、最近までウェブでテラーをやっていたのですが、なんか知らないですがアプリをダウンロードできたので、アプリで書いてます!ウェブ版と少し違うのでしばらく書くのが大変になりそうですが、支障のないようにしますのでご安心を!
それでは!おつはる!
コメント
52件
ウェブ版とどう違うの〜?
…【急募】椎名ちゃんを救う方法