テラーノベル
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「はい、そこ! アカネ、足元が甘い! 龍の爪にチャクラを込めすぎて、踏み込みのバランスがガタガタやで!」
ドォン!!
ナラク先生の鋭い一蹴が私の脇腹を掠め、私は荒野の土煙の中に転がった。
「うぐっ……! つ、強い……!」
「あたり前や。ウチを誰や思っとんねん。伊達にうちはの万華鏡開けとらんわ」
ナラク先生は日傘を肩に担ぎ、口元にニヤリと意地悪な笑みを浮かべている。
ナラク先生が私たちの「担当上忍」になってから、修行の密度は一気に跳ね上がった。
マキナとシズクと三人でやっていた迷走しまくりの独学修行とは段違いだ。ナラク先生の右眼——『思金神(おもいかね)』は、私の思考やチャクラの無駄な滞りを完全に読み取ってしまう。私が「右へ跳ぼう」と思った瞬間に、もう先生の脚がそこに置かれているのだ。
「アカネさん!! 僕の愛の膝枕で休んでください! さあ早く!!」
「マキナ、やかましい。あんたのチャクラ糸、線の出し方が遅いねん。そんなんじゃアカネを守るどころか、自分の脚引っかけて転ぶで」
「うぐっ……(図星を突かれて沈黙するマキナ)」
「ふふっ♡ ナラク先生の指導……厳しくてゾクゾクしちゃうねぇ♡ あの赤い目に睨まれるたびに、脳内物質がドバドバ出て……あぁん、ほんと食べちゃいたい♡」
「シズク。武御雷(たけみかづち)で耳たぶ焦がされたいんか?」
「すみません冗談です♡」
相変わらずカオスな会話だけど、ナラク先生の指導は本物だった。
「アカネ。あんたの目指す『竜神化』……要は『自然のチャクラ(仙術エネルギー)』と己の風の調和や」
ナラク先生は地面に腰掛け、懐から取り出した干し肉をかじりながら言った。
「今のあんたの『竜人化』は、力任せに体内のチャクラを龍の形に練り固めて、無理やり肉体に被せとるだけや。せやから身体が悲鳴をあげるし、カムラみたいな『チャクラの循環を壊す術』に弱い」
「うん……身にしみて分かった」
「竜神化になりたかったら、チャクラを『固める』のをやめろ。風は固めるもんやない。流すもんや。周りの空気、流れる風……その一切合切と自分のチャクラの境目を無くすんや」
「境目を……無くす……」
私は自分の手のひらを見つめた。
今までは、「強くなりたい」「仇を討ちたい」という焦りから、風をぎゅうぎゅうに押し固めて鋭い爪や硬い鱗を作ろうとしていた。でも、それでは『風』の本当の強さを殺していたのかもしれない。
「さあ、立ち上がり。休む時間は終わりや」
ナラク先生が立ち上がり、すっと万華鏡写輪眼を光らせる。
「ウチの『武御雷』の雷鳴を、あんたの風で受け流してみせい。……焦げたくなかったら、今すぐ風と一つになり!」
バリバリバリッッ!!
空気を切り裂く、激しい黒紫色の雷撃。
逃げ場のない閃光が、私に向かって一直線に放たれる。
「アカネさんっ!?」
「あはっ♡ 焦げちゃうよアカネちゃん!」
マキナとシズクの叫びが聞こえる。
だけど、私の意識はすっと研ぎ澄まされていった。
(目を閉じるな。力むな。……風を感じろ)
荒野を吹き抜ける熱い風。オアシスから流れてくる湿った空気。そして、迫り来るナラク先生の雷の圧迫感。
全部、私の周りを流れる「風」だ。
「秘術——……!」
私はチャクラを『爆発』させるのではなく、体内のチャクラの扉を静かに開け放った。
背中にうっすらと浮かび上がるのは、今までのような硬いチャクラの翼ではない。
まるで本物の風が形を結んだような、半透明の、優しくも苛烈な『風の龍影』。
ズドォォン!!
雷撃が私を直撃した——ように見えた。
だが、漆黒の雷は私の身体を貫く直前、私の表面を覆うしなやかな風の渦に沿ってグルリと軌道を逸らされ、背後の岩山を木っ端微塵に砕き割った。
「……なっ!?」
マキナが目を見開く。
「雷を……風の軌道で……逸らした……!?」
煙の中から、私はゆっくりと立ち上がった。
身体に激痛はない。チャクラの暴走もない。ほんの一瞬だけど……確かに私は、風と「ひとつ」になれた気がした。
「……へえ」
ナラク先生が、満足そうに口角を上げた。
「やるやんか、アカネ。今のが『竜神化』の、ほんの入口……産声や」
「先生……! 私、できた……! できたよ!」
「まだまだ気休めレベルやけどな。でも……これで彼岸の連中とも、木ノ葉のエリートボッチャンとも、ええ勝負ができるようになったんとちゃうか?」
「うんっ!!」
私は自分の拳を握りしめた。
秘伝の巻物に書かれていた『竜神化』の本当の意味。そのかけらが、ナラク先生の指導と、仲間たちの支えによって、少しずつ形になり始めている。
「よし! 次はカムラたちの潜伏先の特定や!」
ナラク先生が日傷の額当てをギュッと締め直す。
「たつまきの里の仇、そしてうちはの誇りにかけて……あの不気味な抜け忍ども、全員まとめて吹き飛ばして、黒こげにしたるわ!」
「「おーっ!!」」
「アカネさん、今の風の纏い方、天使のように美しかったです……! 結婚してください!」
「だから話を聞けって言ってるでしょーがっ!!」
砂漠の風の中、私の蹴りがマキナに炸裂するお決まりのコントを響かせながら、私たちは決戦の地へ向かって、大きく一歩を踏み出したのだった。
Side:日向ミズキ ——
「……未来視の『ブレ』が、大きくなっていく」
風の国の乾いた崖上。
サエ先生が額に滲む大量の汗を手ぬぐいで拭いながら、お汁粉のボトルを喉へ流し込んでいた。
「サエ先生。……また、あの『たつまきアカネ』たちの未来ですか?」
僕——日向(ひゅうが)ミズキは、眉間にシワを寄せて尋ねた。
僕たち第九班は、彼岸のアジトへと繋がる「風の国の岩塩洞窟」を一望できる高台に陣取っていた。白眼で見下ろせば、地下深くに蠢く不気味で歪んだチャクラの群れがはっきりと見える。
だが、それ以上に僕の白眼を、そしてサエ先生の『未来視』を乱している存在があった。
「ええ、ミズキ……。アカネという少女の小隊に……突如として現れた『巨大な異数』のせいです。……『万華鏡写輪眼』を持つ、うちはの忍……うちはナラク」
「なっ……万華鏡だと……!?」
僕の後ろで忍具の手入れをしていたアイネが、思わず巻物を落とした。
「うちは一族の生き残り……しかも万華鏡の開眼者……! そんな規格外の忍が、なぜあの野生の少女たちと行動を共にしているのですか!?」
「フッ……! だが燃えてくるじゃないか!」
ロイスが景門のチャクラを微かに揺らめかせ、熱い拳を叩きつけた。
「うちはの伝説の瞳術と、彼女の野生の風……そして僕たちの『情熱』! これらが交わる時、どんな未来が生まれようとも、僕たちはそれを超えていくのみ!!」
「ロイス、熱血なのは結構ですが少し静かにしなさい。敵に察知されます」
僕は冷静を装って制したが、胸の奥では激しい波紋が広がっていた。
(万華鏡写輪眼……。木ノ葉の名門である日向の僕ですら、教本の中でしか知り得なかった最高峰の瞳術……! なぜそんな存在が、あんな無茶苦茶で泥臭い少女のバックについている……!?)
白眼を凝らし、遠方から接近してくるアカネたちのチャクラを観察する。
「……ッ!?」
僕は息をのんだ。
ほんの数日前、交易都市で見た時のアカネとは、チャクラの質がまるで違っていた。
以前のような、体内のチャクラを無理やり力任せに爆発させる「荒削りな竜人化」ではない。
彼女の身体を包む風のチャクラは、まるで最初から自然界に存在していた風のようにしなやかで、澄み渡っていた。
(……受け流している……? 柔拳の理にも通ずる、チャクラの『流転』……!? 自滅寸前だったあの不格好な術を、わずか数日でここまで洗練させたというのか……!)
「ミズキ……何か見えたの?」
アイネが心配そうに覗き込んでくる。
「……いいえ。ただの野蛮人が、少しだけマシな風を身に纏っただけです」
僕はフンと鼻で笑い、白眼の集中を高めた。
「ですが……認めざるを得ませんね。あの三人——根暗な傀儡使い、狂った音響使い、そして万華鏡の忍を従え、アカネは『彼岸』の潜伏先へと直進しています。……完全に、ハチの巣をつつきに行く気です」
「よし……! 決戦の時ですね」
サエ先生が空になったお汁粉の缶を地面に置き、キリリと上忍の顔へ戻った。
「彼岸の目的は、大蛇丸すら到達し得なかった『未知の仙術の解明』……即ち、アカネの身体そのものの強奪と解剖です。カムラの『闇電』、テッサの『砂鉄』、イワドの『重力』、蒸月の『水蒸気』……どれも一筋縄ではいかない凶悪な術ばかり」
サエ先生は僕たち三人を見回した。
「第九班の任務は『彼岸の討伐』、そして……あの少女たちの掩護(えんご)です。ミズキ、ロイス、アイネ。……未来視で見えた『最悪の結末』を、私たちの手で書き換えますよ!」
「「「了解!!」」」
「情熱の全力で行くぞ!!」と叫ぶロイス。
「対・砂鉄用の磁気遮断苦無、準備完了だよ!」と巻物を掲げるアイネ。
そして僕は、腰の苦無を固く握りしめた。
(たつまきアカネ……。万華鏡の指南を受けようが、少しばかり風を流せるようになろうが……僕の『柔拳』が、あなたの上を行くことに変わりはありません)
不快で、荒削りで、けれど……どこまでも真っ直ぐに突き進むあの赤髪の風。
「……死なせはしませんよ。あなたのその風を完全に叩き潰すのは……この僕なのですから」
夕暮れの砂塵が舞う岩塩洞窟の入口へ向け、僕たち第九班は、白い瞳に決意の光を宿して疾風の如く跳躍した。
今、決戦の火蓋が落とされようとしていた。
コメント
1件
うわあ、第9話、すごく熱かったですね……! ナラク先生の指導がめちゃめちゃ刺さりました。「風は固めるんじゃなくて、流すもの」——その言葉、心に残りました。アカネが雷を逸らせた瞬間、鳥肌立ちましたよ。 それに、マキナの「結婚してください」連発とか、シズクの危ないテンションとか、相変わらずのカオスなやりとりが好きです(笑)。 最後のミズキ視点もいいスパイスですね。決戦前の緊張感がひしひしと伝わってきました。次が楽しみです!
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琴葉つきね
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