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最近よくパソコンのWordに書きためてたんですよね、双黒小説
ホテルの一室。遮光カーテンの隙間から、容赦のない朝の光が差し込んでいた。
中也が目を覚ましたとき、最初に出たのは深いため息だった。体中の節々が重い。特に腰のあたりに残る鈍い違和感は、昨夜の奔放な「元相棒」のせいだと、脳が嫌でも理解させてくる。
「……おい、いつまで寝てやがる」
中也が隣の塊を足で小突くと、シーツの山がもぞりと動いた。中から現れたのは、乱れた砂色の髪と、普段の冷徹さが嘘のように弛緩した太宰の顔だ。
「……おはよう、中也。朝から元気だね、重力使いは」
太宰の声はひどく掠れていた。その掠れ声が、昨夜彼が何を叫び、何を乞うたのかを鮮明に思い出させ、中也の頬に熱が昇る。
「うるせェ。とっとと起きろ。任務報告があるだろ」 「やだね。今日はこのまま、君と溶けて消えてしまいたい気分だよ」
太宰が這い上がるようにして、中也の首筋に顔を埋めた。冷たい鼻先が触れ、中也は思わず身を固くする。太宰の指先が、中也の喉元に残る「赤い痕」をなぞった。
「……ひどいな。こんなに跡をつけて。これじゃあ今日は、お気に入りのチョーカーを外せないじゃないか」
白々しい言葉。それを刻んだのは、他ならぬ太宰自身だ。中也の肌を白く塗りつぶすように、独占欲を形にしたような痕。
「手前が……無理やり噛み付いてきたんだろうが」 「おや、嫌がってはいなかっただろう? むしろ、もっと深く、なんて言っていたのは……」
太宰の言葉を遮るように、中也は彼の髪を掴んで引き剥がした。しかし、その力にはいつもの鋭さがない。 至近距離で、太宰の瞳が微かに細まる。その中には、勝利者のような悦びと、同時に、中也にしか見せない狂おしいほどの執着が混ざり合っていた。
中也は乱れたシャツを羽織り、ベッドの端に腰掛けた。 太宰はそれを追いかけるように、中也の背中に額を預ける。
「……中也」 「なんだよ」 「君の匂いが、全然落ちない。……困ったな」
クスクスと笑う太宰の呼気が、中也の耳元をくすぐる。 互いに最悪と言い合い、憎み合いながら、こうして肌の熱を分け合わなければ呼吸もできない。それは、どんな重力よりも重く、二人を繋ぎ止める呪いのようなものだった。
「……シャワー浴びてこい。手前の匂いも、俺にこびりついてて最悪なんだよ」
中也は突き放すような言葉を投げたが、その指先は、愛おしそうに自分の肩に回された太宰の手を、静かに握り返していた。
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