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#14 凍てついた誓いの迷宮
古い洋館で起きた密室殺人は、雪の降る夜に発覚した。被害者は館の主である資産家・榊原。部屋は内側から鍵がかかり、窓も凍りついて開いた形跡がない。
探偵役の私は、集められた三人の関係者を見回した。秘書の真鍋、甥の圭一、そして古くからの友人で医師の佐久間。全員に動機があり、全員にアリバイの穴があった。
鍵となったのは、被害者が死の直前に書き残したメモだった。そこには意味不明な数字と、「約束は守る」という一文だけがあった。
私は暖炉の前で立ち止まり、床に落ちた小さな金属片に気づいた。それは古い懐中時計の部品だった。佐久間のものと一致する。彼は医師として往診に使っていたが、最近は止まっていると言っていた。
真相はこうだ。佐久間は持病の発作を装い、榊原を自室に呼び寄せた。毒ではなく、時計の部品に仕込んだ細工で暖炉の換気を塞ぎ、一酸化炭素中毒を引き起こしたのだ。内側からの施錠は、彼が去る前に糸で細工した。
動機は、過去に交わした約束だった。榊原は不正な研究資金の隠蔽を佐久間に頼み、後に裏切った。メモの数字は銀行の貸金庫番号。そこには証拠が残されていた。
追及され、佐久間は静かにうなずいた。「あの約束を守ると決めた夜から、こうなると分かっていた」
事件が解決し、雪はやみ、朝日が差し込んだ。重苦しい空気がほどけた瞬間、緊張を解いた圭一が微笑みながら言った。
「これで、みんな前に進めるね、ピーポー」
誰もその言葉の意味を問わなかった。ただ、約束が果たされた朝の静けさだけが、洋館を満たしていた。
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