(死ぬ日まで逃避行)
西村誠也
生きるのが怖い
逃げたい
そう思いながら、電車に揺られ動いている
ネットでも叩かれ、会社でも叩かれる
逃げたいけど、明日は来てしまう
嗚呼、死にたい
他人にすがりつく事しか出来ない
とかそんなことを頭の中で復唱していると、電車のドアが開いた
まるで群がる虫のような人の群れをかき分けながら駅に降りた
「はあ…」
思わず、ため息をついた
また、始まる
自動ドアが避けるように開く
重い足を上げながら自動ドアを通って階段をのぼる
階につき、ドアに手をかけて、ノブをゆっくり回した
厭な音を立てながら、ドアが開く
其の儘挨拶もせず、イスに座り、PCを開いて仕事を始めた
この仕事についてもう何年だろうか
数える暇も無かったら、判らないけど
PCの画面に自分の顔が写る度、老けたと思ってしまう
生活リズムが崩れてからは、隈も増え、シワも出来てきたと思う
22だと言うのが嘘に見えてきた
「あの」
そんな時に、後ろから声を掛けられた
「どうしたんですか?」
「コピー機の使い方が判らなくて…」
そうオドオドしながら、新米の楠木さんは答えた
顔も整って、私服も可愛く、優しい彼女は、皆のお気に入りでも有る
偶に、普通よりも、こんな顔に産まれたかったなと思う
「嗚呼、今教えてあげるから」
そう答え、立ち上がったとき
「西村!!」
久崎部長の怒号が響いた
まただよ、クソッタレが
自分のミスを部下のせいにし、セクハラ、カスハラ、パワハラの常習犯
楠木さんに「ごめん」と謝って久崎部長の方に行った
久崎部長の所に着くなり、また怒号が響いた
うるせえ
ふと、隣に居た社員を見た
クスクス笑っている
今度は視線を逆に向ける
「うわ、またかよ…」
「彼奴学ばないよなあ…ホント」
心にグサグサ刺さって嫌な気分に成る
人の苦労も知らないで
お前らもだろうが
沸々と沸く殺意を抑えながら、部長の怒号を垂れ流していた
「もういい、帰れ」
そう声が聞こえるや否や、そそくさと戻って行った時、紙屑が後頭部を優しく小突いた
はあ、ホントに…
世界は夜に包まれた
適当な居酒屋に転がり込む成り、酒とつまみを頼んで、癒していた
「ハハ、やっと終わった」
神のお陰か、明日は休日だった
他人にすがりつきたい気持ちを酒とつまみで埋めながら、最近の逃げ場のスマホを見た
今朝SNSに投稿した奴
「明日は休みって最高!
糞みたいな会社に来なくて良いじゃん!
てか会社行きたくねえw」
我ながら、「w」とかつけて強がってるなあと思う
「いやそれなw」
「わいニート、年中無休☆」
「わいニート、年中無休☆」の返信:「仕事しろニート」
変わらない返信欄だなとか思いつつ、下にスクロールしていく
「仕事貰えるだけ有り難いとは思わないの?非常識な人間は莫迦だね」
「社畜は仕事しとけやゴミwwww」
「SNS辞めろって
面白いと思ってんの?イキリ野郎」
「は~つまんねえわ😮💨
承認欲求満たされたいだけなの丸見えでイタいわ…」
「明日休みじゃない私を差別か?」
俺はまたかよ…と思いながらスマホを閉じて、飲み干した
コメント
7件
最近はSNSも面倒臭いタイプの人増えてるらしいからな〜 確かに仕事貰えるのは有り難い事だけど、其の人の職場環境によっては嫌に成る理由位其れ相応に有るし、一概に『仕事しろ』だとか云えないのよね