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時差コメ失礼しますm(_ _)m テラーノベルを読んできた中で1番好きな作品です!!😭後、いつも神作品ありがとうございます!助かってます!!!
※ヤンデレ、死ネタっぽいものがあります。
※桃さんに彼氏(モブ)がいます。
「うわ、……さいあく………」
内藤ないこ。高校生にまでなって迷子になっております。
せっかくの彼氏との夏祭りデートだと言うのに……。
最悪だ……。
今年は花火もあるとのことで人がいつもより多い。
人混みにのまれてしまい、気づいたら迷子になっていた。
「うぅ〜……、ここどこや〜……」
同じような屋台が並んでおり、自分がどこにいるかは分からない。
目の前にあるのは、おじちゃんが売っているたこ焼きの屋台と、お面屋。そして、吐きそうなくらい甘々なカップル達。
「花火始まっちゃうし……!」
花火の打ち上げまであと15分ほど。
会場に行ったら居るかな……。
そう思い、会場の方に向かおうとしたとき。
「ないちゃん……?」
子供のような幼さを含んだ中性的な声。
その声は残念ながら彼氏の声ではなく、昔ながらの友人、
「いむ……!?」
いむ_本名、ほとけ_の声だった。
いむは小学1年生のとき、俺が今みたいに迷子になっているときに出会った。
どれだけいむに、どこに学校にいるかとか、どこに住んでるのかとか聞いても教えてくれない。
しかも、いむと会うのは絶対的に夏祭りだけ。
そんな不思議な友人、いむ。
今日もいむは、水色の浴衣と狐のお面をつけている。
「ないちゃん、今年も来てたんだ!」
「いむ〜……俺、また迷ったんだけと……」
「ないちゃん、今何歳なの?ww」
馬鹿にするかのようにケラケラと笑ういむ。
自分より歳下(たぶん)に馬鹿にされて少しぶすくれていると、
また案内してあげるよ、と手を差し出してきた。
「どこに行きたいの?」
「花火の会場……」
こんな会話、最初にもしたなぁ。なんて思い出しながらいむの手を握る。
「実は彼氏とはぐれちゃって……」
ふと、そう零すと、一瞬いむの動きが止まった。
「……ないちゃん彼氏いたの?」
「え、……うん、つい最近でき、た……よ?」
急に止まったいむが心配になりながら答える。
「へ〜……、そうなんだ!」
少し考えこむ仕草をした後、いつものような無邪気な笑顔に戻って、よかったね、なんて言ってくるいむ。
その笑顔が少し引っかかるが、それからは普通に他愛もない会話を交わした。
「ん〜……なかなか着かないね……」
「まぁ、この神社おっきいしね〜」
花火の打ち上げまであと5分ほど。
景色はほとんど変わっていない。
屋台と、大量のカップル。
探しに来るとかしないのかよ、と彼氏に少し苛立ちを覚え始めた頃。
いむが口を開いた。
「あ、ねぇ、ないちゃん!これ知ってる?」
いむは、手で四角を作っており、その隙間から覗く水色の瞳と目が合う。
「狐の窓って言ってね、人に化けてる狐が分かるんだって〜!」
「なにそれwどうやんの?」
「両手で狐作って〜……」
こんな子供騙しみたいなこと信じるなんて可愛いな〜、と思いながらいむの説明を聞き、狐の窓とやらを作る。
それを目元に持っていき、いむを見つめる。
そこに写っていたのは、水色の浴衣と狐のお面を付けたいむの姿。
ではなく、毛先が水色のふわふわの大きな尻尾と耳を持ったいむの姿。
「は、ぇ、……?」
脳が情報を処理する前に、シャンっと鈴の音がなり気づけば俺は、神社の本殿にいた。
「ど、どういうこと……?いむ?なに、それ……?」
俺が指さすのは、さっきまで無かった尻尾と耳。
「あ〜、これ?ふふ、僕ね、この神社の稲荷神なんだよ?」
狐さんだよ〜?、なんて言って、何故か楽しそうに尻尾を振るいむ。
そして、シャン、シャン、と鈴の音を鳴らしながらこっちに近付いてきた。
「ねぇ、ないちゃん?この神社にはね昔、人身御供の風習があったんだって。村の人から一人生贄を選んで神様の元に嫁ぐの、」
「い、いむ……?どういうことなの……?ねぇ……っ!」
灯りがなくて、いむの顔ははっきりと分からないが、纏っている雰囲気がいつもと違って、恐怖を覚える。
いむは俺の腰と肩を抱いて、崖になっている所の縁までいく。
「ねぇっ、いむ!」
必死にいむの腕を退けようとするがびくともしない。
気付けば俺は宙を舞っていた。
「……え」
「ないちゃん、僕のもとに嫁いできてよ♡」
バンッという音と共に打ち上がる花火。
それに照らされ、見えたいむの顔は楽しそうに笑っていた。まるで、俺が死ぬことを望んでいるかのように。
そして俺は、ドンッと音を立てて落ちた。
花火の音と重なるかのように。
桃色の青年を愛おしそうに見つめる一人の少年。否、一人の稲荷神。
「これで、いつでも一緒だね……♡」
「ふふ、やっと僕のものになった……♡ないちゃん、だいすきだよ♡」
その水色の浴衣は赤色に染まっていた。