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#クロスオーバー
紫蘭
8,142
#名探偵コナン
スタートーー❗️
夜の海は、静かだった。
東京湾の沖合。
遠くに街の明かりが浮かび、空には満月がかかっている。
その月明かりを受けながら、一隻の小型船がゆっくりと海面を進んでいた。
船に乗っているのは、一人の男。
年齢は五十代ほど。
厚手のコートを身につけ、古びた革製の鞄を抱えている。
男は何度も後ろを振り返っていた。
「……まだ、追ってきているのか?」
しかし、そこには何もない。
あるのは、どこまでも続く暗い海だけだった。
男は少しだけ安心したように息を吐いた。
そして、鞄を開く。
中から取り出したのは、一枚の古い写真だった。
写真には、一隻の巨大な豪華客船が写っている。
船体には、はっきりと名前が刻まれていた。
――ALCADIA。
アルカディア号。
今から五十年前。
突然、消息を絶った豪華客船だった。
「……五十年か」
男は写真を見つめる。
「それでも……真実は消えない」
その瞬間。
船の無線機から、突然ノイズが走った。
――ザザッ。
「……!」
男が顔を上げる。
無線機から、かすかな声が聞こえた。
『……返せ……』
「誰だ!?」
『……蒼月の……涙を……』
男の表情が凍りつく。
「まさか……」
次の瞬間。
無線は完全に途切れた。
男は震える手で、もう一度写真を見る。
写真の隅。
今まで気づかなかった場所に、小さな文字が書かれていた。
「REQUIEM」
「レクイエム……?」
男が呟いた、その時だった。
遠くの海面に――
青い光が浮かんだ。
月明かりとは明らかに違う。
海の底から、淡い青い光がゆっくりと浮上してくる。
「……あれは……」
男は息を呑んだ。
青い光は一つ。
そして二つ。
やがて、海面いっぱいに広がっていく。
まるで、誰かが海の底からこちらを見つめているかのように。
男は鞄を閉じた。
「……アルカディア号は沈んでなどいない」
その声は、震えていた。
「まだ……どこかにいる」
そして――
男の背後に、黒い影が現れた。
「見つけたぞ」
低い声。
男が振り返る。
「……!」
しかし、その顔を見ることはできなかった。
次の瞬間――
画面が暗転する。
――ドンッ!
激しい衝撃音。
海面に、一枚の写真だけが落ちていく。
写真はゆっくりと海へ沈み……
月明かりの中で、最後の文字が浮かび上がった。
「蒼月の涙を探せ」
そして――
五十年後。
東京。
一人の少女が、カメラを構えていた。
「……きれい」
ファインダーの向こうに広がっているのは、夕暮れの海。
シャッターを切る。
――カシャッ。
写真を確認した少女――美月は、小さく微笑んだ。
だが、その直後。
スマートフォンが鳴った。
「もしもし?」
電話の向こうから、聞き慣れた声がする。
『美月、今どこにいる?』
「え? 海の近くですけど……」
『そうか。なら、ちょうどいい』
「……?」
『今度、みんなで月影アイランドへ行くことになったんだ』
「月影アイランド?」
美月が首を傾げる。
『東京湾にできた人工島だよ。もうすぐ「蒼月フェスティバル」っていうイベントが始まるらしい』
「へえ……!」
美月の目が輝く。
だが――
電話の向こうの声が続けた。
『それと、そこでちょっと気になる話がある』
「気になる話?」
『五十年前に消えた豪華客船――』
その言葉を聞いた瞬間。
美月の表情が変わった。
『アルカディア号って知ってるか?』
「……アルカディア号……」
なぜだろう。
初めて聞く名前のはずなのに。
美月の胸の奥に、奇妙な感覚が走った。
そして彼女はまだ知らない。
この船の名前が――
五十年前から続く、巨大な謎の入り口だということを。
そして。
その謎の中心には、青い宝石――
「蒼月の涙」
が存在していることを。
夜。
月影アイランドの遠くに、一つの青い光が灯った。
まるで――
五十年間眠っていた誰かが、再び目を覚ましたかのように。
――『蒼月のレクイエム』開幕‼️
コメント
3件
プロローグ、読みました……! 夜の海の描写がすごく美しくて、それでいて不気味で。無線から聞こえた「返せ……」のところ、背筋が冷えました。 五十年前の豪華客船と蒼月の涙の謎、美月ちゃんがどう関わっていくのか気になりすぎます。 まだプロローグなのに、もう引き込まれました……続き、ちゃんと読ませてもらいますね🌙