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この子一応星にはなれたのね、都市の星として
カルメェェェン!!
星は手が届かないからこそ美しく、強く輝いて見える
…そんな陳腐な台詞を、私は全く理解出来ない
この伸ばした手の先にある星々を掴んでみたい
闇夜の中、強く輝く星達を手に取ってみたい
…全て、私の物にしたい
フィクサーの仕事でクタクタになった私の唯一の楽しみ
丑三つ時に裏路地で寝っ転がる
普通に汚いし臭いし色々と最悪だけれど、その時間だけは騒がしい都市の中で独りになった気分になれる
うだうだ考えて疲れ切ってしまうような日中とは違い、この瞬間だけは何も考えずに居られるのだ
そして、街灯もない暗い裏路地から見える星空に、手を伸ばしてしまう
「……………」
少しウトウトしてきた為、さっさと起き上がる
此処で寝落ちなんてすればもう二度と目覚めることは無いだろう
私は最後に星達を一瞥し、事務所兼自宅への帰路を辿る
生きるためには仕方が無い事だが、働く必要がある
裏路地では仕事があると言うことは幸せな事だが…人間慣れという物は恐ろしい物で、毎日毎日命の危険もある仕事をこなすと言うことは私にとっては辛い事であった
私はフィクサーという仕事に落ち着いている…が、やはり仕事柄汚い事ばかりやって来た
…人を殺す仕事だって、珍しくない
そういった汚い物ばかりに触れてきたからか、美しく、綺麗な物に惹かれてしまう
だから、私は今日もクタクタになるまで働く
ある日、翼の一つ、L社から『光』が放たれた
私はたまたま依頼で近くを通っていた為、誰よりも近くで見ることが出来た
その光はその光はとても美しく、力強く、天へ向かって伸びていた
私にも、誰にも届かなかった闇夜を貫き、星々すら霞むような明かりを放つその姿は、私に嫉妬と共に尊敬の念を与えた
「……………凄く、素敵」
そんなガキんちょみたいな感想だけを溢して
今日もまた裏路地で寝っ転が───…ろうと思ったのだが、如何せん昼だろうが夜だろうがあの光によって都市全体が照らされている為、私は事務所内からあの光を眺めていた
「……………」
輝く星々すら照らすその光に見蕩れてしまう
…あの星に手が届くためには、私もあの光の様に輝かなければならないのだろうか
…あの光を眺めてから、その様な考えばかりしてしまう
天高く伸びる光が、天すらも貫き通り抜けてしまった頃
今日もまた、裏路地で天を仰ぐ
フィクサーの仕事でクタクタになった私の唯一の楽しみ
…だった筈が、今日は何だかごちゃごちゃと思考が生まれる
(……あの光は…あの星々よりも、何よりも輝いて都市を照らしてた
…私は何度手を伸ばしても届かないのに。
…あの星に届く為には、あの光みたいに……)
でも、私はどうだ?
いつもいつも誰かに使わされて
汚い仕事ばかりを重ねて
ただ欲しい物を見上げ、嫉妬するような私に、あの星々は明るすぎたのだ
………星は届かないからこそ美しいのではなく、美しいからこそ届かないのだ
「……………あーあ…」
遠く遠く離れていたあの星々が、更に遠い物に感じた
…戻ろう
明日からは早く寝るようにしよう
…そうすれば、この胸のわだかまりも、喪失感も、いずれ薄れていくから
…そもそもこんな時間まで起きているから朝がしんどいんだ
前だってゴネてたらアイツにブン殴られて…………
……ふと、いつもの癖で星を見上げてしまう
「…………寂しくなるな……。」
そう呟いて
”貴方は”
…………………?何この声……?
”貴方は、あの星々はもういいの?”
……私は、もういい。
これ以上憧れるのも、嫉妬するのも、欲するのも、全部全部もうたくさん。
…これ以上は、明日が辛くなるだけ
”嘘。”
……………
”貴方はただ、あの星々の様になりたかっただけ
…この都市を照らす様な、光になりたかっただけ”
…私には、なれない
私には遠すぎる存在だったから
ただ、気付くのが遅かっただけ
”………もし。”
…………?
”もし、貴方も星になれたら。
……どうする?”
………私が、星に…かぁ………
それは………
凄く…素敵だね
「…………もっと。」
「もっと!!!
もっともっともっともっともっと!!!!!
手を伸ばせば!!!!!
私は更に星に近づいて!!!!!
私は更に輝く星になる!!!!!」
私の声が、この裏路地に響く
私の声が、この裏路地を照らす
私の存在が、この都市全てを照らす光となる
…なんて素敵な事だろう
12区で発生したその『ねじれ』は、たった一晩で12区の裏路地を中心に数十万の死者を出した為ハナ協会によって『都市の星』に認定された
…その姿は…数多の腕が天に伸びており、天にも届きそうなその頂上には、天に向けて手を伸ばす人型の姿が確認出来た
…ハナ協会南部3課、特色フィクサー朱色の十字が対処へ向かった
「もっと」
「もっと高く」
「もっと明るく」
「もっと輝かしく」
「私が……都市を照らすんだ」
この星々の様に、あの光の様に
「……今日、都市の星が1つ沈むことになるだろう……。」