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「今日もか…」
風天(ふうあ)からのメッセージを読みながら呟く海。
「ま、たまにはいいか」
と風天に返信をした。その後パスタイム スポット 4を起動させ
トップ オブ レジェンズをプレイすることにした。
「パススポ(パスタイム スポット シリーズの略称)5買うか?」
とトップ オブ レジェンズのスタート画面に行くまで
スマホでnyAmaZonのアプリで「パスタイムスポット5」と検索欄に入れて検索してみた。
「6万…7万…。うわ。Proだと10万越えか。きつー」
値段を見てすぐにnyAmaZonアプリを終了してスマホをローテーブルの上に置く。
すぐにランクモードを選んでマッチングする。意外とマッチングには時間がかかる。
トップ オブ レジェンズ ガチ勢はマッチングの遅さに運営に文句を言っている人も多いが
海はカジュアル勢。マッチングに時間がかかっても文句は言わない。
「…あぁ。普段やらないからこそマッチング早くしてもらって数をこなしたいのか。なるほどな」
とカジュアル勢でも運営に文句を言っている人の気持ちを理解した。理解した上で
「じゃあテメーがそのゲーム会社に入ってマッチングシステム変えろや」
と理解した上で文句を言ってる人に文句を言った。マッチングが完了してキャラクター選択画面へ。
1人は「atono-Maturi-731」というアカウント名のプレイヤー
もう1人は「Chocolate-LjdCt」というアカウント名のプレイヤーだった。
誰もボイスは繋がっておらず、完全野良という感じだった。
初動ファイトを避けるように降り、武器をある程度整え、近くに降り立ったパーティーと対戦する。
「ヤバっ。相手うまっ。ちょ、巻くわ」
シールドを削られたのでシールドを回復するアイテムを使う。
シールドを回復するアイテムを使うことを「巻く」というのだが
別にボイスが繋がっているわけではないのに仲間に報告する。その間に
「シールドを割ってやったぜ!」
「シールドを粉々にしてやった!」
と同じキャラが2回シールドを割ったときのセリフを喋った。
「え」
シールドを回復し終えると
「ここに行くぜ!」
とそのシールドを割ったキャラクターが喋った。
「うお。イケイケだな」
着いていくことに。そのイケイケプレイヤーは
「atono-Maturi-731」というアカウント名のプレイヤーだった。
「敵を倒してやった!」
そのキャラクターが喋る。
「マジか」
海も「Chocolate-LjdCt」というアカウント名のプレイヤーも相手をキルする、倒すことはできたが
ほとんど「atono-Maturi-731」というアカウント名のプレイヤーが相手のシールドを割って
体力も削った後、へたくそなエイムで少し弾を当てただけだった。
「後の祭りってか」
その後もその「atono-Maturi-731」というプレイヤーがどんどん敵を薙ぎ倒していった。
回復アイテムや武器のアタッチメントなども
海と「Chocolate-LjdCt」というアカウント名のプレイヤーに優先的に譲ってくれた。
「え。有名なMyPiperとかだったりする?」
と思うほどに優しく強かった。チャンピオンこそ獲れなかったものの、ほぼ全員均等なキル数。
「atono-Maturi-731」というプレイヤーだけ総ダメージ数は桁違いだったが。
「お膳立てすいません。接待ゴルフが如く、ありがとうございます」
と別にボイスは繋いでいないが、リザルト画面で一緒にプレイしてくれた2人にお礼を言う海。
そしてスマホで「atono-Maturi-731」と検索してみた。もしかしたらMyPipeで有名な人かもしれないし
MyPipeじゃなくても有名な配信者かもしれないと思ったから。しかし検索しても出てこなかった。
「一般人でもいるんだなぁ〜。…動画出せば稼げるレベルじゃないの?」
と呟いて待ち合わせの時間までトップ オブ レジェンズをプレイした海。
「よ」
真新宿駅で降り、街に出た海綺(うき)の肩が叩かれる。海綺は振り返る。
「あ、愛大(まな)!」
そこにはギターケースを背負った赤髪のピアスまみれの愛大がいた。
海綺はワイヤレスヘッドホンを耳からズラし、肩に落とす。
「偶然やな」
「だね。愛大もこれから」
海綺は自分の背負っているギターケースを親指で指指し
「これでしょ?」
と言う。
「うん。海綺もやろ?」
「せやでー」
「せやんなー。ま、そしたら、あれ。いつもの感じで」
「うん。ここら辺でいいよね?」
「おけおけー。ま、うちが早よー終わったら海綺の聴きに来んで」
とニヤッっと笑う愛大。
「逆にうちが早く終わったら聴きに行くからなー?」
わざとらしい大阪弁で言い返す海綺。
「ええよ。顔に似合わず優しい音色なんで」
ドヤる愛大。
「うわ。覚えてた」
「へへー。褒められることないから褒められたことに関しては覚えてんねん」
「高校の頃はバカだったのに?」
「そうそう、高校生んときは勉強が苦手でなぁ〜、赤点ばっか取って怒られて
怒られるもんやからなおさら覚える気ーなくしてなー。ってなに言わしとんねん」
「ノリツッコミ長っ」
「ノリツッコミなんだから多少長いやろ」
というアーティスト志望とは思えない、側から見たら漫才師志望のように見える2人は
それぞれの場所でいつも通り路上ライブ、弾き語りを行うことに。
ワイヤレスイヤホンで音楽を聴きながら別に興味もないポツッターをただただスクロールしてたり
ニャンスタグラムをただただスクロールしていると
「おつー」
と改札から風天が歩いて出てきた。海がワイヤレスイヤホンを外してケースにしまう。
「どしたん。昨日も飲んだのに」
「いや別に。ま、近くまで来たからついでに?」
「近くに?」
「おん」
「何しに?」
「家具見に」
「はあぁ〜。スゲェな」
「別にすごかないやろ」
と話していると居酒屋「命頂幸(しょく)」へ着いた。引き戸をカラガラカラと開ける。
「いらっしゃいま…お?海に風天」
「おつー」
「おつー」
空いているカウンター席に座る2人。
「どしたん?珍しい」
と言いながらおしぼりとお冷を出す勝利。
「ね。自分でも思うわ」
「てか海の私服ひさしぶりに見たわ」
「嘘つけ。こないだも私服で来たわ」
と言いながら水を一口飲む海。
「あぁ、海綺ちゃんとのデートのときか」
飲んでいた水を吹き出しかける海。
「おぉ。デートですか。親方、隅に置けませんなぁ〜」
「置けませんなぁ〜」
「あのなぁ〜」
「ま、とりあえずオレは生。海も生でしょ?」
「お、うん」
と言うと、その会話を聞いていた勝利が
「じゃ生2つね?」
と言ってとりあえずまずは生ビールを入れてくれる。
「はい、生2本お待ちぃー」
「サンキュー」
「ありがとぉ〜」
勝利もカウンターに自分のビールを用意して、3人で
「じゃ、かんぱーい」
「「かんぱーい!」」
乾杯した。
「で、今日はどしたん?」
「ん?風天が」
「風天が?」
「家具見に近くに来てたらしい」
「家具?」
と勝利が風天を見る。
「うん。部屋に合う感じのテーブルを探してて」
「へぇ〜。部屋はどんな感じなん?」
と勝利に聞かれて、風天はスマホで写真を出して勝利に見せる。
「こんな感じ」
「…。えぇ!マジ?めっちゃオシャレじゃん」
「あざす」
「なんかレイアウト考えるのが好きなんだって」
「へぇ〜」
「アプリでいろんなレイアウト考えてるから」
「そんなことでドヤるなよ」
「なんだっけ?なんか有名な家具屋さんあるよね?…あの…国内の…」
勝利が人差し指を立てて、前後に小刻みに揺らす。
「錦家具?」
風天が言うと
「それ!」
人差し指を風天に向けて指指した。
「指指すな」
海がビールを飲んでから言う。
「錦家具は?風天的にはどうなん?」
「うぅ〜ん。まあ、材質にもデザインにも拘ってるし
オーダーメイドもできるらしいから、オーダーメイドしてみたいんだけど。…これがね」
と風天は人差し指と親指で丸を作る。オーケーマークのようにした手の横バージョン。
世間的にはお金を表すハンドサインである。
「あぁ。これね」
勝利も同じハンドサインをする。
「どんくらいすんの?」
「ま、ものによるけどイスだと一脚、安いので5万くらいからかな」
「5!?万!?安くて!?」
「うん。スツールだと3万くらいのも…あるんじゃない?知らないけど」
「たっか」
「安くて5万“から”でしょ?」
「うん。オーダーメイドはもっとするんじゃないかな」
「ま、オーダーメイドはね。高いイメージあるわ」
「あ、勝利。枝豆と唐揚げ、餃子をお願いするわ」
と海が注文する。
「すごいね。会話の最中に」
「いや、強引にいかんと、話続くだろ」
「まあね。枝豆、唐揚げ、餃子ね。1皿ずつでい?」
「とりあえずいいよな?」
海が風天に聞く。
「うい」
「オッケー」
と勝利がキッチンへ行く。
「ま、他にもなんかちょびちょび頼みながらって感じかな」
「だなぁ〜」
しばらくすると
「へいぃ〜。枝豆ぇ〜。あ、これ殻入れね」
と勝利がまずは枝豆を持ってきてくれた。
「ありがとー」
「ありがとー」
「どいたまぁ〜」
2人が枝豆を食べながら話をしていると
「こちら唐揚げと餃子になりまーす」
と女性の店員さんがカウンターから唐揚げと餃子を渡してくれた。
「ありがとうございます」
「ありがとうございまーす」
「あ、お箸お箸ぃ〜。はい、お箸」
と勝利がお箸を海と風天に渡してくれた。
「サンキュー」
「あざすー」
「熱いから気をつけてね」
と忠告する勝利。
「オレ猫舌じゃないからへーきよ」
「オレも大丈夫よー」
と言いながら箸を持つ2人。
「オレ猫舌だからさー」
と勝利がカウンターに腕を置き、ガッツリ話す体勢を取る。
「居酒屋やってんのに?」
「そうなんよ。だから新メニュー、熱いまま試食できないんよね」
と海と勝利が話していると
「はい終わったー」
と風天が箸を置いて天を仰いだ。
「なに。どしたん?」
「口ん中火傷した」
「え。でも風天、猫舌じゃないんでしょ?」
と勝利が不思議そうに聞く。
「口の上」
と口を開いて人差し指を上に向け、口の中の口の上部分を指指す風天。
「ここは猫舌関係ない。はぁー終わった」
再度天を仰ぐ。
「終わったって。あ、唐揚げ食べたんか」
「マジ終わった。5日は終わったわ」
「5日も?」
「猫舌とかガチ関係ない火傷。炭酸飲んでも痛い、固いもんなんて食べれない。マジ終わったわ」
「だから熱いから気をつけてって言ったのに」
「ま、ビールでも飲めよ。あ、勝利、ビール2お願い」
「オーケー!」
恐る恐るジョッキに残っている1/3ほどのビールを飲む風天。
「!」
右手を額にあてて項垂れる。
「どーした?」
「はい!ビール…2…お…待ち…。どしたん?」
「…ビールすら…飲めん」
と言う風天に笑う海と勝利。笑いながらビールを受け取り、海は飲み干した空のジョッキを勝利に渡す。
「笑い事じゃねー!」
一方、真新宿では
「お疲れー」
歌い終わり、片付けている愛大に近寄る海綺。
「おつー。さては早く切り上げて聴いておったな?」
「そーゆー愛大こそ切り上げるにしては早いんでなーい?」
「そーかー?」
「そーや」
「ま、うちが早いっていうんやったら
そのうちの演奏を聴いてた海綺ちゃんはどれだけ早く切り上げたんやろなー?」
わざとらしく口笛を吹くような顔をする海綺。
「わざとらしすぎるやろ」
「なんか手伝う?」
「んや?もう終わるから。ありがとう」
「ありがとう。どういたしましてぇ」
愛大の大阪弁の「ありがとう」を真似して変な大阪弁の「どういたしまして」を言う海綺。
「大阪弁バカにしてるよな?」
「してないしてない!」
そんな話をして荷物がまとまり
「さてさて。どうします?」
「どうしましょうか?」
とガードレールのパイプ版、ガードパイプに寄りかかり話し合う2人。
「家(うち)来る?」
「いやん。愛大ったら大胆」
「ちょっと大胆にいってみました。で、どうする?家(うち)来る?」
「行く行くー」
「海綺ちゃんやってる?」
「やってるやってるー!」
某芸人さんのくだりをして笑い合う2人。
「したらあれやな。コンビニでなんか買うて帰ろ」
「ええなええなぁ〜」
「ライブ映像見たりホラー鑑賞会したりしよ」
「ええなぁ〜ええなぁ〜」
「やっぱバカにしてるやろ?」
「してへんってー」
「いや大阪人が聞いたらバチギレ案件やで」
「え。マジ?」
と海綺と愛大は愛大の家で、海と風天は勝利の居酒屋で過ごし終電前に帰ってとそれぞれ夜を明かした。