ポッキーの日 11⁄11
今日は11月11日。俗に言うポッキーの日だ。 と、言ってもこういったイベントなんか私には無縁のこと_____
「よう、日本!お疲れ!」
突然、日本の視界に巨大な影が差し込んだ。顔を上げると、案の定、特大の笑顔を浮かべたアメリカが立っている。
…嫌な予感がする。
「……なんか用ですか。」
日本は一瞬だけ手を止めたが、すぐに視線をタブレットに戻した。この過剰なスキンシップと、時折やってくる奇妙な誘いに、もう驚きすら感じなくなっていた。
アメリカはそんな日本の無反応を気にする様子もなく、満面の笑みで手に持った箱を日本の目の前に突き出した。パッケージには赤と白の派手なデザイン。ポッキーだった。
「今日が何の日か知ってるだろ?Pocky・Day!ポッキーの日だ!」
そして、アメリカは箱から一本のポッキーを勢いよく取り出した。
「ほら、ポッキーゲームしようぜ!レッツ・エンジョイ!」
日本の顔に、疲労と諦めが滲んだ。
「……はぁ。またですか、アメリカさん。貴方はそういうイベントには律儀に便乗しますね。」
「うるさい!今日は日本の大好きなイベントだろ?いいからやろうぜ!」
「私じゃなくて私の”国では”でs…」
アメリカは日本の返事を待たずに、ポッキーの端を自分の口にくわえた。そのまま、日本の返事を聞き終わる前に、日本の身体をソファに押し付け、顔をぐいっと近づけてくる。
「っ……」
日本の身体は一瞬びくりとしたが、抵抗らしい抵抗はしなかった。どうせ逃げられない。彼は小さくため息をつき、静かに視線を上げた。
「…仕方ないですね」
もはや儀式のようなやりとりに、日本は呆れ半分、諦め半分でそう告げた。そして、差し出されたポッキーの、アメリカの唇とは反対側の端を、小さく、そっとくわえた。
日本の口元は硬く、全く動かない。まるで義務を果たしているかのような表情だ。
しかし、アメリカの目はキラキラと輝いていた。この無表情な日本を、いかにしてexcitingにさせるか、そのチャレンジに心底ワクワクしているようだった。
「了解!じゃあ、スタートだぜ、日本」
アメリカは楽しそうに、ポッキーをカリッと一口かじる。日本の口元に、チョコレートとプレッツェルの甘い香りが一気に広がった。
ポッキーの棒は短くなり、二人の顔は一気に接近する。
「……ッ、ちょ…っ、はや…」
日本は文句を言おうとするが、アメリカは片手で日本の後頭部をしっかりと固定していた。抵抗しようと身を捩るが、ソファに深く沈み込まされているため、顔を離すことができない。日本の顔は、アメリカの息がかかるほどの距離になった。
アメリカはニヤニヤと笑い、ポッキーをさらに一口かじり取る。
残り数センチ。最早、二人の唇が触れ合うのは時間の問題だった。
日本の瞳が、一瞬、強く見開かれる。
(まただ……またこの人に、ペースを乱される…)
このままでは、キスをされてしまう。いや、キスをされるのはもはや「またか」で済む問題だが、アメリカが楽しむがままに状況を支配されるのが許せなかった。
日本の意地が、ここで爆発した。
「ぅ…っ、」
日本は、くわえていたポッキーの残りの部分を歯で折る。
ポキッと音を立てたポッキーの破片は、アメリカの唇の端と、日本の唇の端に残った。ポッキーゲームは中断された。
アメリカは、予想外の日本の行動に目を丸くした。
「おいおい、JAPAN!チートだぜそれは!あとちょっとだったのに!」
日本は、口元に残った破片を舌でそっと回収すると、冷静に告げた。呆れ顔は変わらない。
「私はキスするなんて一言も言ってないんで」
「不本意、なんですよ」
彼はソファからそっと身体を起こそうとする。
しかし、アメリカの顔からは楽しげな笑顔が消えていなかった。むしろ、日本の予想外の反抗によって、彼の興味が再熱したようだった。
「不本意、ねぇ。面白い。だがな、日本」
アメリカは、ポッキーの破片がついたままの唇を舐めると、固定していた手を離すどころか、そのまま日本の後頭部を強く掴み直した。
「俺は、失敗で終わらせるつもりはねぇんだよ」
日本の顔が、抵抗する間もなく再び引き寄せられる。日本の唇に、残っていたポッキーの破片ごと、アメリカの唇が強く押し付けられた。
「んんっ……!」
甘いチョコレートとプレッツェルの香りが、一瞬で二人の間を満たす。アメリカの舌が、日本の口内に残っていたポッキーの破片を探し、絡め取った。
日本の身体は一瞬硬直したが、アメリカの強引さに抗いきれず、次第に力が抜けていく。唇が吸われ、舌が絡み合い、息が奪われる。
キスされることに慣れた日本の瞳には、呆れと、ほんの少しの諦めが宿っていた。しかし、その瞳は、逃れられない運命を受け入れたように、静かに閉じられていった――。
コメント
5件
なんかもう表現神 性格も神過ぎです😭🥹🫶
こういう日本もすこ🫰🫰
