テラーノベル
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校門前、今日も色んな人が登校する。
この人混みが私は大嫌い。
「んじゃ、」
「おー、頑張れよー」
弟と階段で別れる。
その先には…
「おはよー」
鈴木弘世先生だ。
彼はこの学校でいちばん信頼し、尊敬している先生。
社会科の先生でもあり、学年主任でもある。
どちらかと言うと現実主義者で、真面目で厳しい一面もあるが優しくて、面白い先生。
「黒闇おはよう。」
「おはようございます!」
先生の前では元気が出る。
少しだけ、今日も頑張ろうって気持ちになる。
これだけは、嘘偽りない私の気持ち。
あの日あの時、間違えてしまった相手。
荷物をロッカーにしまい、机に伏せる。
机にふせながら毎日思う。
(いつまで隠せるかな…)
ずっと自分を否定し周りと比べ続けた。
誰かが私にすごいねと言えば、そんなことないよと言ってきた。
頑張ったねと言われれば、頑張ってないと言って、
出来ない自分と、できるみんなと比べて。
それだけじゃない。
親に言われた言葉を、誰かに言われた言葉をいつまでも引きずって。
自分を最底辺まで引きずり落として。
「わぁっ!」
「…おぉw」
「おはよぉ〜!」
「おはよう」
終了。
ここからまた、偽る。
そうするとまた、廊下がうるさく聞こえた。
「ねぇ聞いて、」
「んー?」
「この前の模試ギリギリ90行かなかったのよ。」
「あー、惜しいね〜」
また始まった、彼女…友達の川崎みかんは頭がいい。
オマケにピアノも引けて、絵もかけて、クラスの人や先生、色んな人から信頼されている。
テストは基本90点以上。
ピアノは時間さえあれば耳コピ。
美術の成績はほぼ5。
体育は苦手だが、なんでも出来る。
私から見た彼女はどこから見ても、理想そのもののような存在だった。
みんなに褒められて、頭も良くて、得意なともあって、頼られて、本当に羨ましい存在。
私では一生到達できない。
「大丈夫、みかんちゃんならすごいし次はいい点数取れるよ。」
「応援してる☆」
「ありがと〜」
応援したい気持ちは本当だが、これ以上私に見せつけないで欲しい。
羨ましくて、何をやっても変わらない私の身にもなってほしい。
「おはよー」
「あんた達ーそろそろ座んなさいよ〜」
担任の新原魅姫先生。
小学生の頃、好きだった先生と似ている。
だからこの先生も好き、その先生ほどでもないけど。
優しいし、面白いし、フレンドリーに接してくるから嫌いではない。
でもどこか好きになれない一面もある先生。
キーンコーンカーンコーン
「おはようございます」
「えー今日はね、総合の時間で進路についてとかお話あるから」
「それと再来週から進路面談あるから日程確認をお願いします」
もうそんな時期か。
時の流れは無情にも早い。
どんなに楽しいことや辛いことがあっても、時間だけは待ってくれないのだ。
花が落ちる頃には、鮮やかな緑になり、
涼しくなると黄色やオレンジ色になる。
それがまた枯れ落ちる時、寒くなる。
そして新しい春がやってくるという。
自分以外は、誰も待ってくれない。
いや、自分も待ってくれてないのかもしれない。
体はいつだって成長してるから。
ふくよかになったり、身長が伸びたり。
結局、成長せず止まったままなのは私の心だけかもしれない。
みんなが前を向いて頑張っている中。
私だけが同じことに前を向けず、
ただ1人止まっているだけなのだから。
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