とうとう進路面談の日がやってきた。
きっと大丈夫。
だって親の言うことに合わせればいいだけ
いつもの事じゃないか───
「桜ちゃん今日面談だよね、頑張って〜」
「ありがと〜メンタル死んでくる☆」
「いやそんなんで死ぬなよw」
「www」
行きたいところに行ける人が羨ましい。
そんな人達はきっと、親としっかり話して、自分の意見を述べたのだろう。
私とは大違い。
私は親に行きたい高校がある、なんて言ったことがない。
親と進路について真面目に話し合った日は1度もない。
みんなは自分と、親と、しっかり向き合ってんのに。
私だけなんでこうも違うのか…
考えても仕方がない。
人は人、自分は自分なのだ。
そう、母親か誰かが言っていた。
放課後
家に帰宅する。
「ただいま。」
「おかえり、面談って2時から?」
「うん。」
「ならまだ時間あるな。」
「ご飯食べてくる」
「30分になったら降りてきいや。」
「うん。」
階段を昇って、部屋に入る。
弟は午後も授業なため、この部屋には私一人。
楽な時間、一気に気が抜ける。
家にいてもそばに誰かがいれば気なんて抜けない。
友達の前でも。
誰であろうと。
ご飯を食べる。
今日の玉子焼きも辛くて、ぐちゃぐちゃだった。
学校に着く。
本当は歩いてくるのが普通だが、親が歩いていけないため車で来た。
ここで、ひとつ。
「PTA会議室ってどこだっけ?」
「こっちだよ。」
ここでまた、ひとつ。
ソワソワする。
何も話してない、その高校に行きたい理由もない、意見も言えない。
成績も低い、自分にいい所なんて何一つない。
3つ。
「静かにしててね、周り授業中なんだから。」
「わかってるって。」
わかってない、私を呼ぶ時も、喋る時も、怒る時も、声がでかい。
弟の声のでかさは母親譲りなんだな。
緊張して、どうでもいいことで気を紛らわす。
ここで待って10分たった。
遅い。
前の人の話がそんなにも長いのか、
先生も、その生徒も、その親も、すごく真剣なんだな。
感心した。
みんな真剣で、本気で未来を考えている。
自分の道を、自分で。
「ちょっと教室見てくるよ。」
「えー、早く戻ってきてや。」
「わかった、」
廊下を歩く。
後ろからも、右からも、視線を感じる。
階段を歩く。
誰かに遭遇したらどうしよ…
「あ、黒闇さん!」
「あ、」
「いやぁごめんね、前の人が長引いちゃって。」
「いえいえ、皆さん真剣ですから。」
「黒闇さんもでしょ〜?」
「みんなよりは…真剣じゃないですよ。」
「もー、そんな事言わないの」
ホントのことを言っただけなのに。
先生も、真剣に考えてくれてるんだと感じる。
「お母さん遅くなって申し訳ないです。」
「前の人と話が長くなっちゃって。」
「いえいえ〜大丈夫ですよ。」
「ありがとうございます。」
「どうぞどうぞ、こちらにおかけください。」
始まる。
ここからが勝負だ。
先生と、親と、自分を騙す、勝負。
「えーそれではよろしくお願いいたします。」
「えーと、まずは桜さんの志望校をお聞きしてもいいでしょうか?」
「…」
「あ、はい」
「第一志望は一応○○高校で、」
「○○高校さんね、」
「第二希望が△△高校です。」
「△△高校さんっと。」
「でも多分○○高校は厳しいって話してて、なので多分△△高校が…第一志望になるかなと思います。」
「なるほど〜…」
「できるだけ○○高校がいいんだけど…」
「行けますかね?」
「そう…ですねぇ。」
「桜さんの内申点が□点になるんですけど…」
「○○高校さんの方だと…見てもらいますと☆点なんですね。」
「なので少し足りてない状態なんですよ。」
「あー」
わかってた、少し足りてないことぐらい。
お母さんが、少しでもそこに行かせたい理由も。
「ですが偏差値の方はギリギリ足りてますので、二学期の定期テストなどで頑張れば…行けるとは思います。」
「そうですか。」
「○○高校さんは内申点の方を重視している高校さんなので正直申し上げますと…」
「ちょっと微妙?」
「そうですね。」
「桜さん、」
「はい?」
「桜さんのお母さんもなんですけど、二学期に成績が上がったとしてもですね、」
「入れるかどうかと言われるとちょっと分からないんですけど…」
「確実に…まぁ入りたければ、受験日の、えと、当日のテストで、周りの子達よりも15点以上超えていかなければいけない厳しい状況…なんですね。」
「15点以上?!」
「…」
「ちなみに△△高校の方は?」
「あ、△△高校さんはですね、ちょっと待ってくださいね〜」
最悪だ。
早く帰りたい。
先生の顔を、母親の顔を、見れない…
「あっ、ありました。」
「えーと、△△高校さんは…両方足りてますね。」
「内申点はやはりギリギリですけども。」
「△△高校さんも内申点を重視してますので、確実に高校に行きたいのであれば、まぁこちらの方が安心できるとは思います。」
「はいはい。」
「あ、それとですね。」
え、何?
何を、言うつもりでいるんだこの先生。
「桜さんは併願では無いので…」
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