ドスッと音がなったその瞬間、じわりと胸の周りが熱くなる。胸に手を当てると、この手が一瞬にして赤く染まる。それと同時に、なぜこの女性は俺を刺したのか、どこからそのクナイを出したのか、元から計画していたことなのか、女性に対する疑問があふれ出る。頭が慌てているのだ。ヒーローとして警戒心が足りなすぎた。首を斬られていたらおしまいだった。そんなことを考えるうちに、緋八は地面に膝から崩れ落ちて意識を失う。
『ピーッピーッ、ヒーローマナのバイタルに異常を確認。ヒーローマナのバイタルに異常を確認…』
トレーニングルームで談話をしていた3人のデバイスから同時に警告音が鳴り響く。
「マナ(くん)っ…?!」
変身しながら本社を出て、見えない速さで緋八の元へと向かっていく。3分後に3人が現場へたどり着くと、女が緋八をロープで縛り上げようとしていた。
「お前っ、マナに何してんだよ!!!」
リトの拳を受ける寸前、女の服が変わる。くノ一が一番近いだろうか、膝上くらいの丈の着物で胸元が大きく開き、センター分けに高めのポニーテール。大人っぽい色気のある女だ。宇佐美の気持ちを代弁すると、とてもSexyである。
その女は、リトの拳をクナイで防いだ。
しかし、リトの攻撃を防ぎ油断した女の後ろに、イッテツがナイフを構えてアシストする。だがイッテツの背後には、別の女が構えていた。
「テツ!!後ろ!!」
宇佐美の言葉で一気にその場から離れる佐伯。
振り返ると、もう一人の女が後を追ってくる。この女はスリットが大きく入った赤いチャイナドレスを着ていた。胸はあまりないが、すらっとした生脚がたまに覗く、黒髪ショートボブの可愛らしい女だ。宇佐美の気持ちを代弁すると、これもまたSexyである。
宇佐美はヒットすれば危険なクナイの攻撃を見極めるため、佐伯は苦手な体術の蹴りを予測するために、それぞれが集中モードに入る。
その頃、ウェンは緋八の応急手当にあたっていた。いつもであればウェンは宇佐美と共に即前線に立つ男だが、自分の扱う大剣より小回りの利くクナイをもつ相手には自分に不利が働くとみなし、今は宇佐美と佐伯に任せている。緋八はまだ弱々しく心臓が脈打っているが意識はなく、血が大量に溢れ続けている。ライが数日前に完成させたメディカルデバイスを使って、緋八の蘇生を試みる。あと10分はかかるようだが、この時間で体が完璧に戻るのであれば最高の機械である。このメディカルデバイスは、海外ヒーローのウェザリウスと共に開発を進めたらしい。神っている。緋八の蘇生を待つ間、ウェンは緋八を安全なところに移動させ、佐伯の元へアシストに向かう。
宇佐美の体には、攻撃する度にクナイがグサグサ刺さり、傷が増えてきていた。くノ一は、デタラメに代わり映えない攻撃をたたき込んでくる宇佐美をバカバカしく思い、完全に宇佐美を下に見始めた。
「…油断したな?」
宇佐美はくノ一の両手首を狙って拳を打ち込むと、くノ一の手からクナイが金属音を立て地面に落ちる。宇佐美は落ちたクナイをすかさず足で踏み壊し、一撃をくノ一に食らわす。
「カゲツとの訓練が役に立つとはな」
…『俺武器持ってねぇのにクナイのお前とどう戦えってんだよぉ〜!!』
『簡単やん。クナイ持たせなければいいんだよ。ただクナイってさ、持ち手に指引っかけてて中々手から離れないから、一回油断させなきゃ無理だよ』…
ドゴーンっと大きな音が街に響き、宇佐美はくノ一を吹っ飛ばして気絶させた。宇佐美の一仕事はこれで一段落である。
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