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「つかさ、くん……あは、あはは…呆れたよね、ごめんよ?」
呆れられる事なんて知っていたから、もう何も思わなかった。違う、思わないフリをしているだけだった。鍛えた演技力がこんな事に生かされるなんて、嫌だよね。まるで他人事のように、それでも自分を見ているように嘲笑う。皆で築き上げたあの日常は、もう戻って来ない。そう、確信しているから。もう戻りたいとも思わないように、突き放して欲しかった。嫌われたくはない。昔のように誰からも遠巻きにされるような毎日は飽きてしまったから、味わいたいとは思わない。けれど、あんな馬鹿みたいで楽しくて幸せで仕方なかったあの日常に戻る資格なんて、僕にはない。だから、戻りたいと思えない程に僕を壊してくれ。何を言ってくれてもいいから、何をされてもいいから。空々しく回る思考の中に、君はいない。伝わる由もない。結局、空回り。
「…ふざけるな。お前はいつから其処まで堕ちた?お前は…お前は、そんなに馬鹿だったのか?」
「ふざけてなんかないさ。…選ぶべき道を間違えた。少しだけ踏み外して、戻り方を忘れた。たったそれだけ。正直、もう戻れるとは思っていないよ。」
「それなら…っそれならば!それを変えるのがお前だろう!?オレは諦めていない!呆れてなどいない!本当は後悔しているんだろう?オレは…そう、信じている。」
僕を信じないでくれ、もう期待なんてしないでくれ。此処まで悲観的になるのも久々だけど、君が、君達が大切だからなんだって。そう気付いてくれ、お願いだ。僕はきっと、このまま帰っても皆に迷惑をかけるだけなんだ。知ってた、知ってたよ全部。僕が悪いのはもうとっくに知り得ている。もう今の僕には、一番良い選択肢が何なのか分からない。帰ったら皆に喜んで貰える?此処に居たら迷惑をかけない?どうすれば良いのか分からない。けれど、教えてくれとは言いたくない。なんて私利私欲に塗れた汚い人間なのだろう。人間ですらなかったら、君達に何を言う事もなくこうなっていなかったのだろうか。そんな事は今更思っても意味なんてないけど。
「っ…そんな事なんて信じないで、早く離れて行ってくれ!
__あぁ、すまないね。こんな事に怒るのも無駄だし意味もない、言うなれば僕に怒る資格などない。そう分かっていながらも続けてしまうのは、一種の不安さ。」
これを一言で表すなら、不安定だろうか。思考はいつもより早く早く、目まぐるしい程に回っている。回っているのは同じもの、けれどその端は少しずつ形を変えているような気もする。一種の不安、なんてふざけた事を呟いておきながら、僕は戻りたいと言う本心に蓋をし始めている。これだと昔に戻るのもそう時間はかからないだろうけど、でも慣れているから別に良い。あぁ、でも。目の前の君から、目の前の光から目を逸らしてしまうのは、きっと不安に違いないのだろうな。
「…そうか。それは何に対しての不安だ?」
「そんな事聞かなくても分かるはずだよ。君が深くまで僕の事を分かっているのであれば、ね。」
出来るだけ平静を装って、“普段の僕”を崩さないように努めている。分からないけど。此処に堕ちる前に見ていた僕の姿はきっと彼らにとっての普通。その普通が目の前になくなってしまえば、きっと不安で怖くて仕方ないだろう。実際、演技をしている時の別人のような君を見ていると、何処か不安になってしまう僕が居るのだから。こうやって僕が思う事と彼らが思う事を重ねて考えてしまうのも、きっと癖のような物なんだろう。まだ短い時間だと言うのにも関わらず、僕は相当君達に心酔しているようだ。凄く、笑えない。君は言い当てられるのかな。別に当てて欲しい訳でもないけど、気になってしまうのは君達を好きになった弊害だろう。気にしなくていい、そう自分に言い聞かせながらも彼の発言をただ待ち続ける。
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