…あの日から、1週間が経とうとしていた。
あれ以来、元貴から別に犯されるようなことはないし、涼ちゃんから何か聞かれることもない。割と平和に毎日過ごしてる。
特に元貴なんて、あんなことなかったんじゃないかって錯覚するくらい今まで通りの態度で接してくる。
…最初はずっと怖くてしょうがなかった。
怖くて家でも泣いてばかり。
ずっとこんな毎日なのかなって、そう考えたらまた涙が出てきて。
でも、元貴は優しくて。
怖いはずなのに、優しくて。
あいつが俺のことどうしたいのか、考えれば考えるほどこんがらがって。
答えが出ない問いにいつまで経っても頭を悩ませている。
わっかんないなぁ、元貴の考えること…
そんなことを1人で考えながら、スタッフさんと話を弾ませている元貴の姿をじっと見つめる。
「若井!」
突然俺の名前を呼ばれる。声のした方へ視線を向けると、ふわふわした笑顔が目に入る。
涼ちゃんだ。
「一緒にさ、自販機行かない?ペットボトルの水無くなっちゃって」
空っぽのペットボトルをふりふりと振りながら少し困ったように笑ってる。
ちらっと先ほどからスタッフさんと打ち合わせをしている元貴を横目で確認する。
話に熱中していて、こちらの様子には気付いていないみたいだった。
…大丈夫だよな、これくらい?
「うん、良いよ、行こ」
元貴に軽く視線を投げかけながらも、涼ちゃんを追ってその場を後にした。
自販機の横に置いてある椅子から何を買うか頭を悩ませている涼ちゃんの様子を眺める。
うんうん1人で唸っている姿に思わず笑ってしまう。
何を買うかようやく決まったようで、チャリチャリと小銭の音が辺りに響く。
「何買ったの?」
「コーラ!」
「いいね」
嬉しそうな顔をしながら俺の横に駆けてくる。
隣に座った涼ちゃんが蓋を開けると、ぷしゅっと炭酸の気持ちの良い音がする。
蓋を開けるなり、勢いよくコーラを流し込んでいる涼ちゃんを見て、また笑みが零れる。
「めっちゃ美味そうに飲むじゃん、笑」
「だって美味しいし!」
ニコニコの笑顔で飲んでいる涼ちゃんを見守っていると、自身のスマホから振動音が聞こえた。
ポケットから取り出して画面を付けると、一件のメッセージが送られてきていた。
元貴から…?
涼ちゃんと2人でいるタイミングにわざわざ送ってくるなんて。
まさかこの場面、見られてないよな…?
最悪の展開が頭によぎり、思わず辺りを見渡す。
「…若井?」
「ぁ、いやごめん、何でもない」
周りを確認しても、人の気配はしない。
…考えすぎだな。
とりあえず元貴から送られてきたメッセージを開こうと、スマホのアプリを起動させる。
…多分、いや絶対に間違いだった。
元貴とのトークに送られてきていたものは、ベッドにぐったりと横たわっていて、明らかに事後姿の俺の写真だった。
「は、?」
思わず声が漏れ、思考が止まる。
「…ぇ?」
隣から、少し掠れたような涼ちゃんの声が聞こえた。
その声で我に帰って慌ててスマホの画面を消すも、多分今のは涼ちゃんにも見られてる。
心臓の音がうるさい
身体中から血の気が引いていくような感覚に陥った。
隣に座っている彼は今どんな顔をしてるだろうか。
もしかしたら、一瞬すぎて見えなかったんじゃないか?なんて淡い期待を抱くも、そんなものはすぐに打ち砕かれる。
「え、若井、今のって…」
涼ちゃんに問われる。当たり前だ。急にバンドメンバーの事後写真なんて見せられたら誰だってその反応をする。
涼ちゃんがどんな顔をしているのか、見るのが怖くて顔を上げられない。
どうしようどうしよう
この写真を見られたことを元貴に知られたらどうなるか
そもそもこんな写真を涼ちゃんに見られて、俺はどんな顔をして涼ちゃんと話せば良い?
「ねぇ、わかい…!」
「ちが、これはちがくって、その…」
何とか誤魔化したくてもさっきから頭に上手く酸素が行き渡らず言い訳が浮かばない。
口が回らず黙り込んでしまう。
少しだけ俺らの間に沈黙が続いた。
何も言えず、黙って俯くばかり。
沈黙を先に破ったのは涼ちゃんの方だった。
「…っ、若井、」
「りょ、ちゃ、んぅっ!?」
急に服を引っ張られたと思ったら、唇に柔らかい感触。
すぐ目の前には、涼ちゃんの真っ直ぐな、だけどどこか泣きそうな瞳がこちらを見つめていた。
「まっ…りょ、ちゃ、」
グッと涼ちゃんの胸を押すも、全然動かない。
それどころか、俺の腕を掴んで壁に縫い付けられる。
その力は強くて。
こんな涼ちゃん、知らない。
抵抗しようとすればするほど深く舌を絡め取られて口内を乱暴に乱される。
「んっ、♡はぁ”っ、ふぅ、」
息が出来なくて苦しくて、瞳からは涙が零れてくる。
「ふ、ぁう…//もぉ、きっ…」
「っ…」
あっちばかり書いてて、久々な気がします…みんな覚えてるかな…
あっちの小説の若井とこっちの小説の若井がなんかだいぶ違くて、書いてて頭バグりました…
そして、有難いことにフォロワー様が200人を越えてました…!!とっても嬉しいです!!!
本当に、いつもいつもありがとうございます!
これからもよろしくお願いいたします…!!!
コメント
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初コメント失礼致します! 主様の現在あるふたつの作品どちらも一気に読まさせていただきました! 主様の書き方というか、表現力が素晴らしく、読んでいるこちらまでドキドキします、、。 今回のお話も、ついに涼ちゃんが動きましたね、気のせいだったらお恥ずかしいんですが、最後って若井さん大森さんのこと呼んでる!?ってなってもっともっとこれからが気になりました、、。どうなるのかとても楽しみです! 更新お待ちしております!! 長文失礼しました🙇🏻 フォロー失礼致します。
うおおお最高の三角関係きた😭 やっぱり涼ちゃんも若井さんのこと好きなんだな... 大森さんちゃっかり写真持ってたのもまた笑
大森さんの名前を呼んだのは無意識なのかな? いやぁ、もっと取り合って欲しいですね…!