陰キャで、おどおどしてるからという理由で高峯はいじめを受けていた。
「焼きそばパン。あと、オレンジジュースもな。勿論、お前の奢りで。」
「…はい。」
いじめている子に従順だった。高峯の体には痣だらけで、自分が傷つけたであろう傷もあった。
「…高峯?」
ある日、部屋の隅で泣いていたのを発見した。その時に危機感を感じない人は異常だろう。なにせ、高峯は自分の心臓辺りに、包丁を向けていたのだから。
「高峯っ!!!!やめろっ!!!」
俺は必死で叫ぶ。
「…先輩。ごめんなさい。もう、疲れたんです…」
「…嫌だっ!!」
包丁を無理やり奪い取る。その時の俺の顔はどうなっていたのだろうか。
「先輩、泣かないで…」
俺は泣いていたんだ。そりゃあそうだ。大切な人を失いかけたのだから__
守沢先輩は生まれた頃から持病を持っていた。だから、あまり長くは生きられないそう。今は、持病の症状も落ち着いて、学校にも通えている。
「おはよう!高峯!」
「…おはようございます。先輩。」
俺と守沢先輩は幼い頃から仲が良くて、今でも学校に一緒に通っている仲。
「でな~!」
この素敵な笑顔が見られるのが嬉しい。あと何回、笑い合えるのかわからないから。
「……」
笑い合えたのも束の間、守沢先輩は、話の途中で黙ってしゃがみこんでしまった。
「守沢先輩…!?大丈夫ですか…?」
不安そうにそう訪ねると、先輩が涙を流していたのに気づいた。
「救急車…!!!」
持病の症状はもう聞いていたので持病のせいだとすぐにわかった。俺は、必死に救急車を呼んだ。
「…先輩、先輩…」
救急車の中で俺が流した涙。それは、守沢先輩を思う気持ちから生まれたのだろう。
長く生きられないことはわかっていた。だけど、何故かその時、俺が死のうとした時とリンクして、なんで助けてあげられないんだって余計に悲しくなって。
「…守沢さんはもう、」
「…わかってます。」
「そうですか。今日は学校も休んでゆっくり心を落ち着かせて下さいね。」
「…心配ありがとうございます。」
苦しい。苦しい。死にたい。病院から出た瞬間にもっと辛くなって、雨の中、全速力で走っていく。家に帰った瞬間に、俺はキッチンから包丁を取り出して、すぐに俺の心臓へと向ける。
「…ごめんなさい、先輩。先輩が居なかったら俺もう…」
『高峯っ!!!!!!』
先輩の事を思い出して、俺は包丁をさげる。
「___約束、破ったらまた怒られちゃいます?」
泣きながら微笑む俺。家には俺しか居ない筈なのに、誰かと喋るように話す。
『高峯、俺が死んだら、俺の分代わりに生きてくれよ。約束だぞ?』
「…守沢先輩と、約束したから。」
包丁を元の場所にもどす。
俺はその日、初めて前を向いて歩こうとする努力をした気がした。
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