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欲 。
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#禪院甚爾
欲 。
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欲 。
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「『虫唾が走る』……か。ほんま、最低の男や」
深夜、静まり返った禪院家の自室で、直哉は一人、不味い煙草に火をつけた。あの日、激しい雨の中で甚爾に言い放たれた冷酷な言葉。あれから数年の月日が流れたというのに、直哉の胸に刻まれた傷口からは、今でも黒い血が流れているようだった。甚爾にとって、自分との時間はすべて 「金のための偽り」だった。そう信じ込まされた直哉の心は、あの日を境に完全に凍りついた。人を信じることをやめ、愛を乞うことをやめ、ただ圧倒的な「力」と「地位」だけを追い求める冷徹な術師へと変貌を遂げたのだ。「あんたが俺を嫌悪してた術師(エリート)に、俺はなってやったで、甚爾くん」今の直哉は、誰もが恐れる禪院家の次期当主だ。傲慢に振る舞い、弱者を踏みにじる。そうしていなければ、あの雨の日に「飽きた」と捨てられた惨めな自分に押し潰されてしまいそうだった。ある日、直哉は任務の帰りに、術師殺しとして裏社会で生きる甚爾の噂を耳にした。相変わらず金のために人を殺し、女の家を転々としているという。直哉は「相変わらずろくでもない男や」と鼻で笑いながらも、気づけば体が勝手に、甚爾がよく出没するという薄汚れた歓楽街へと向かっていた。雑踏の向こう、見間違えるはずのない巨大な背中が見えた。
「……甚爾くん」
声をかけると、甚爾は気怠げに振り返った。その三白眼が直哉を捉える。一瞬だけ、甚爾の目が見開かれた。かつての泣き虫だったガキが、冷酷な強者のオーラを纏って目の前に立っている。甚爾の胸に、かつてついた「嘘」の痛みが、予想以上の鋭さで突き刺さった。
(……あぁ、いいツラになったじゃねぇか、直哉)
甚爾は心の中でそう呟いた。自分の目論見通り、直哉は自分への執着を断ち切り(憎しみに変え)、この地獄のような呪術界で生き残るための牙を手に入れたのだ。ならば、その「嘘」は最期まで突き通さなければならない。
「……あ? 誰だっけお前。あぁ、禪院の坊ちゃんか。また俺に金を恵みに来たのか?」
甚爾はわざとらしく、小馬鹿にしたような笑みを浮かべた。直哉の瞳が、一瞬で冷酷な氷色へと染まる。
「誰がそんなことするか。あんたが相変わらずみっともないドブネズミみたいに生きてるから、笑いに来ただけや。二度と俺に馴れ馴れしく話しかけんといて」
直哉はフッと吐き捨てるように笑うと、今度は自分から背を向けて歩き出した。その足取りは力強く、迷いがない。遠ざかっていく直哉の背中を、甚爾は煙草を咥えたまま、静かに見つめていた。直哉の心は救えなかった。自分を一生恨み続けるだろう。けれど、これでいい。傷を抱えたまま、それでもあいつは前を向いて生きている。歩き去る直哉の目から、一滴の涙が零れ落ち、夜の闇に消えたことを、甚爾は知らない。交わした言葉はどこまでも冷たい刃の応酬だったが、そこには二人だけの、あまりにも歪で切ない「守り方」の結末が横たわっていた。
コメント
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うわ、めっちゃ胸にくる話やった……。直哉が「憎しみ」にすがって強くなったふりしてるのが切なすぎる。甚爾の「これでいい」って歪んだ守り方も、二人とも愛し方が不器用すぎて泣ける。最後の涙、気づかれへんかったのがまた余計に悲しい。続きすごく気になる。