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テラーノベルの小説コンテスト 第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで
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2人は数秒顔を見合わせた後、リュゼは険しい顔になった。

「ベルが、サージュのこと知らないのか?そんなわけないだろ?二人は同期なんだし」

「二人は担当が違うからしょうがないのさ。な、サージュ、お前これから気をつけろよ。ベルはお前が思っているよりも強い殺し屋だ」

管理官は、足を組み替えると、サージュの方を見上げて言った。

そんな三人の様子を見ていたのは、ベルだった。

「……嫌なこと聞いちゃったなあ。そうなってくると、このまま依頼を引き受けるのは危険だわ……しかしこのままだと、あの一年生の殺し屋が動くかもしれない。こんな事情があるなら、あの男が動く方が危険だ……」

ベルはドアから離れると、長い廊下を歩いて行った。


歩美は事務所の中で、ごろごろしていた。

いつも通りの平和な日常だ。しかし、そんな日常は午前8時に壊されることになる。

「キャーッ‼」

耳をつんざくような悲鳴が聞こえ、事務所の中で二人はハッとなる。

「な、何今の?」

歩美はすぐに椅子から立ち上ると、事務所のドアを勢いよく開けた。

目の前には、一人の少年と、血だらけになった何人かの横たわった死体があった。

「き、君は?」

「……僕の名前は、フォリー。ただの殺し屋だ」

その少年はゆっくりと振り返って、歩美の方を見た。

「さ、咲田大地‼」

「やっぱり、知ってたか……」

大地もとい、フォリーは、ポケットからティッシュを取り出すと、ナイフに付いた血を拭き取った。

「……」

「……待って‼」

歩美は両手を前に出すと、顔を背けた。

フォリーはそのまま、無言のまま歩美の方に近づいていった。

「僕は、ラトレイアー専属の殺し屋だ」

フォリーは冷静な顔で、ナイフを振り上げた。

「うっ……」

血が一滴目の前に落ちてきた。

「紗季ちゃん!」

歩美が叫ぶと、ナイフが刺さった腕を押さえた。

「……なんで守るの?」

フォリーは再び血まみれになったナイフを左手に持ち替え、血を拭き取った。フォリーはまだ純粋な子供が疑問に思ったような声で聞いた。

「……」

紗季はしゃがんだまま、フォリーの方を見上げて言った。

「誰かを守ることに対して大層な理由なんてない。食事をすることくらい当たり前なこと。もっと大きな理由があれば、私は彼女を助けていなかった」

彼女はゆっくり立ち上がると、フォリーの方を睨みつけた。

「誰かを守ることが当たり前の事なの?僕には理解できないや」

フォリーは鼻で笑うと、ナイフを右手に持ち替えた。

「警察だ!そこで何をしている⁉」

数名の声が聞こえ、フォリーはすぐに廊下の向こうへ走って逃げて行った。

「やっぱり山根と福浦だったか……愛川、すぐに保健室に連れてってくれ」

「いや、私は大丈夫。紗季ちゃんだけ連れて行って」

歩美は立ち上がると、駆けつけてきた、愛川姫(あいかわひめ)と今藤に伝えた。

「さすがは警察、早いね」

「まあな。それより、山根。どういうことだ?何があった」

「突然悲鳴が聞こえて、来てみれば、咲田がナイフを持っていて……」

今藤は眼鏡を直すと、歩美の方を見つめて再び言った。

「なるほどな。今、俺らも追っているところだったんだ。早く捕まえなければ、この≪国≫、いや≪世界≫が混乱に陥る!」

「そんな危険なら、公安に任せればいいでしょ?なんでアンタらがやってるの?」

歩美がが問うと、今藤は首を横に振った。

「公安でも手一杯なんだよ。協力者が、不足しているんだ。今いる協力者じゃ、捕まえられないし……」

「その協力者ってまさか……」

「そう、松村龍雅だ。知ってるのか?」

今藤が聞くと、歩美は無言で頷いた。

廊下の奥からコツコツと足音が聞こえてきた。

「警察か。随分仕事が早いんだな」

「雪ちゃん」

歩いてきたのは雪だった。

「どうも。今藤、あの男を殺した犯人は分かったかな?」

「いいやまだだ。咲田も脱走してしまったし、今はそれどころじゃない」

「……」

歩美は、例の事件の犯人を知っている。妃冴香だ。

「ねえ、冴香ちゃんは?」

「冴香か?アイツなら、今日見かけてないけどな」

「雪ちゃん、二人で話したいの。こっちに来て」

「お、おい」

歩美は雪の手を引いて行き、階段の裏へ移動した。


「どうしたんだよ歩美?」

「思い出したんだけどさ、雪ちゃん、この前、事情聴取を手伝った時、私達廊下で会った事あったよね?」

「そういや、あったなそんなこと」

雪は両手をズボンをの中に入れると、目を細めた。

「あの時雪ちゃん、冴香ちゃんが会っているのは松村じゃなく、海だって、言ってたでしょ?」

歩美は左手で人差し指を上に指した。

「行ってみたら、冴香ちゃん以外誰も居なかった。海くんが出ていく時間も無いだろうし、私達があの教室まで行く間に部屋から出てこれるとは思えない」

「……だから?」

「どうしてあんな嘘ついたのかってこと。それと、もう一つ。これは質問なんだけど、冴香ちゃんは、ラトレイアー直属の殺し屋だと本人が言っていた。ってことはつまり、雪ちゃんもラトレイアーの一員ということになる。だとしたら、話がこじれてくる」

雪は両手をポケットから出すと手を組んだ。

「CIAだった頃、ラトレイアーに潜入していたというのが、つじつまが合わなくなる。ってことだろ?」

「その通り」

「はあ、教えてやる。私と冴香、というかベルは、≪サジェス≫と呼ばれる裏世界で名を馳せる巨大な組織の一員だ。ラトレイアーではない。おそらく、ラトレイアー直属の殺し屋というのは、お前を仲間に入れるための嘘だったんだろう」

歩美は、雪に言った。

「ってことは、あの時、私達と利害が一致したと見せかけてってこと?」

「そう言う事だな。あの時、松村じゃなく、海だって言ったのは、適当に言っただけ、特に理由は無い。何とか冴香を合わせないようにしようと思ったんだけどな。やっぱうまくいかなかったぜ」

雪は飄々としていた。

「雪ちゃんは、覚えてるの?四年前の戦争」

歩美の言葉に、雪は冷静な顔になった。

「ああ、勿論。片時も忘れたことはない。CIAの仲間が何人も死んだあの、戦争なんて、一生忘れてなるものか……!」

雪は強く拳を握りしめると、歯を食いしばった。

「今の一年生の治安が悪いのは、命に対する考え方が甘すぎるからだ。あのフォリーといっている殺し屋が、どんなふうに命を捉えているのかは知らないけど」


保健室。愛川はそこで事情聴取を行っていた。

「なるほど。協力してくれてありがとう」

「いえ、そんな大したことしてないし」

ガラッ。カーテンが開く。そこには今藤が居た。

「愛川、どうだ?」

「順調」

「嘘つけ。全然進んでないくせに」

今藤はクスっと笑って言った。

「ねえ、あの女性を襲ったのは、薬物を所持していた女性を襲ったのは、咲田大地でしょ?証言では、復讐屋と言っていたみたいだけど」

「それが、一致しないんだよ。あの女の証言と、彼の証言が」

今藤は眼鏡を取り、ティッシュで拭いた。

「彼は、黙秘しているようだが、公安の調べによると、彼は殺し屋であることが判明。しかし、殺し屋と、復讐屋は全くの別物だから。証言が一致しないんだ」

「えっと、じゃあ、彼女を襲ったのは、彼ではないってこと?」

「そういう事」

愛川は少し俯き気味に言った。

「すみません。福浦さんはいますか?」

保健室の外から聞き覚えの声が聞こえてきた。

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