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「うちのクラスに転校生が明日来るからみんな快く受け入れてくれよ」
一瞬でクラス内がザワついた。それもそのはず。6クラスもある中自分のクラスに来るとなったら騒がずにはいられないだろう。
「先生!男と女どちらですか!」
「男だ」
その一言に余計にザワついた。特に女子だ。きっとこのクラスのほとんどの女子がイケメンなのかそうじゃないのかなどの妄想を膨らませているのだろう。それもこんな中途半端な時期に来ることになった転校生。それだけで十分なネタだ。でも私には関係の無いことなので窓の外にいる飛び立っていく鳥の群れを見ていた。
今日もいつもとなにも変わらない日を終えてベッドの上で小さくなった。
学校に向かっていると聞き覚えのある声に声をかけられた。
「おはようございます」
振り向くと一昨日会った男の子が私と同じ制服を着て立っていた。まさか転校生はこの人なのだろうか。
朝の挨拶をされたのは久しぶりすぎてなんて返せばいいか分からず動けずにいると何故かその男の子は優しく微笑んだ。その笑顔は何故か無性に心が暖かくなる気がして自然と言葉が出た。
「お、おはようございます」
そう返すと男の子は嬉しそうに笑った。
「学校、一緒に行きませんか」
「い、良いですよ」
断りたかったけどなんか断りづらくてつい承諾してしまった。
私が学校へ歩き出すとその男の子は私の歩くペースに合わせて横に並んできた。自分の横に人がいることが落ち着かない。
その男の子をみると綺麗な黒髪でよくみるとその人の瞳の色は青みがかった黒で目が離せなくなるほど綺麗な色だ。
「珍しい色でしょ」
「えっ」
「虹彩のなかのメラミン色素の量が少ないと青色になるみたいですよ」
「そ、そうなんですね」
目を見つめていたことがバレて恥ずかしくなった。
「貴方の目は綺麗な青色ですね」
「え、?」
この瞳を綺麗だと言われたことはなかったからどう反応したらいいか分からない。
「髪の毛も綺麗な白い髪ですね」
そう言って彼は足を止め私の髪の毛を触った。つい振り払おうとしたがその人はすごく悲しそうな顔をしていて振り払おうとした私の手は止まった。どうしてそんなに悲しい顔をしながら私の髪を見つめるのか分からなかったけどそんなこと聞くのは気が引けて聞けない。
「すみません、学校に行きましょうか」
「は、はい」
何事もなかったかのように歩き出すので私も歩き進めた。
学校に行く間彼はどうでもいいことを口にしていた。空が綺麗だとか、道端に咲いている花が綺麗だとか、白と青が好きな色だとか、綺麗な黒髪なのに自分の髪色が気に入っていないとか。私にはなにも聞かずただ自分の思ったことを口にするだけ、私は相槌も打たずなにも返答せずにいた。でも彼はなぜかそれが心地よさそうで、それにつられてか私もいつもより穏やかな気持ちで学校へ向かった。
学校が見える手前で私は足を止めた。
「どうかしたんですか?」
「ここからは別々に行かないですか?」
「え……?」
「な、なんで、俺なにかしちゃいました?」
すごく不安そうで今にも泣きだしそうな顔をしていて胸が傷んだ。
「私こんな見た目だから私と一緒に学校に行ったら貴方まで変に思われちゃうから……」
下を向いてそう告げると彼はなにも言ってくれなかった。不安になって顔を上げると悲しいような怒りも含まれているようなそんな顔をしていて、どうしてそんな顔をするのか気になったけど聞くことはできなかった。
「ごめんなさい……」
目の前にいるのにすごく小さい声で私には聞こえなかった。
「え?なんて、?」
「いいえ、なんでもないです」
「貴方と学校に行きたいんです」
そんなことを真正面から言われるなんて思ってなくて戸惑いを隠せないでいた。
「ダメですか……?」
そんな不安を隠しきれない顔で少し震え気味の声で言われたら断れるはずもなく承諾してしまった。
「分かりました、後悔しても知りませんからね?」
そう言うと彼はすごく嬉しそうな顔をした。
「はいっ!」