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第16話 12年前の真実
「あなたたち三人を守るために、離れ離れにしたんです」
その言葉が、部屋に響いた。
「……守るため?」
湊音が聞き返す。
「どういうこと?」
静佳も母親を見る。
二人の母親は、しばらく黙っていた。
やがて――
静佳の母親がゆっくり口を開く。
「12年前……あなたたちがまだ小さかった頃」
「私たちの周りで、少しおかしなことが起き始めたんです」
「おかしなこと?」
「ええ」
湊音の母親が頷く。
「あなたたちが遊んでいた場所に、知らない大人が何度も現れるようになった」
「……」
「最初は偶然だと思っていました」
「でも、何度も続いた」
「そして――」
静佳の母親が拳を握る。
「ある日、あなたたち三人が公園にいることを知っている人しか知らないはずの場所に……その人がいたんです」
「……!」
心音が眉を寄せる。
「つまり」
おさでいが言う。
「誰かが三人を見張っていた?」
「……はい」
「なんで?」
湊音が聞く。
「俺たち、何もしてないよ?」
「そう」
母親は頷く。
「あなたたちは何もしていない」
「だったら……」
静佳が首を傾げる。
「なんで私たちなの?」
その質問に。
母親たちは顔を見合わせた。
そして――
「あなたたちの両親が、昔から知り合いだったからです」
「……え?」
湊音が固まる。
「私たちだけじゃない」
静佳の母親が続ける。
「蓮くんのお父さんも、昔から私たちと関わりがありました」
「じゃあ……」
心音が気づく。
「蓮の家族も、そのことを知っていた?」
「……はい」
***
「でも、それだけじゃないんですよね」
心音が静かに聞いた。
「だから、事故じゃなかったって話になるんでしょ?」
母親は黙った。
「……教えてください」
心音がもう一度言う。
「俺たちにも、知る権利があります」
「……」
やがて。
静佳の母親が頷いた。
「12年前のあの日」
「公園に来た自転車は――」
一度、言葉を止める。
「偶然、そこを通ったわけではありませんでした」
「……!」
湊音が息を呑む。
「じゃあ……」
「誰かが、あの場所に行くように仕向けた」
「そんな……」
静佳が口元を押さえる。
「じゃあ、私が……」
「違う」
母親がすぐに言った。
「静佳のせいではありません」
「でも……」
「あなたは何も悪くない」
「……」
静佳の目に涙が浮かぶ。
心音がそっと肩に手を置く。
「静佳」
「……うん」
「自分を責めないで」
「……分かった」
***
「じゃあ、蓮は?」
湊音が聞く。
「蓮は、そのことを知ってたの?」
「全部ではありません」
湊音の母親が答える。
「でも、何かがおかしいことには気づいていました」
「だから手紙を?」
「そう」
「……」
湊音は拳を握る。
「じゃあ蓮は、ずっと一人で調べてたの?」
「……そうかもしれません」
その時。
「違う」
突然。
部屋の入り口から声がした。
「……!」
全員が振り返る。
そこにいたのは――
蓮。
「蓮!?」
湊音が立ち上がる。
「どうしてここに……?」
蓮は少し息を切らしていた。
「ごめん」
「話を聞いてた」
「……」
静佳が蓮を見る。
「蓮くん」
「うん」
「何を知ってるの?」
蓮は黙った。
そして。
「……俺の父さんから、昨日聞いた」
「何を?」
「12年前のこと」
「……」
「父さんはずっと、俺にも話さなかった」
「でも昨日」
蓮はポケットから一枚の紙を取り出した。
「これを渡された」
「……?」
紙には――
古い新聞記事の切り抜きが貼られていた。
見出しには、
『地域イベント中、幼児を巻き込む事故』
とある。
「……これ」
静佳が震える。
「私たちの事故?」
「うん」
蓮が頷く。
「でも、記事には書かれてないことがある」
「何?」
「事故の直前」
蓮が写真を指差した。
そこには、公園の入り口が写っている。
「ここに――」
小さな人影。
「……誰?」
湊音が目を細める。
「この人」
蓮が言った。
「俺の父さんが探してた人物なんだ」
「……!」
心音が写真を受け取る。
「顔は見えない……」
「でも」
蓮が続ける。
「服装は分かる」
写真の端。
そこには、特徴的な――
青い腕時計が写っていた。
「……青い腕時計」
おさでいが呟く。
「それが何?」
「父さんが言ってた」
蓮の声が低くなる。
「12年前から、ずっと同じ腕時計をしている人物がいる」
「……誰?」
「分からない」
「じゃあ、どうして今?」
静佳が聞く。
蓮は答えなかった。
ただ。
ポケットからもう一枚の写真を取り出した。
「……これ」
写真には――
現在の、とある人物の後ろ姿。
そして。
その手首には。
青い腕時計。
「……!」
全員が息を呑んだ。
「この人……」
莉犬が写真を見る。
「まさか……」
「誰なの?」
ころんも不安そうに聞く。
蓮は首を横に振る。
「顔はまだ分からない」
「でも――」
「俺たちの近くにいる可能性がある」
「……!」
空気が一気に重くなった。
***
その日の夜。
事務所の廊下。
静佳は一人で歩いていた。
「……」
頭の中がいっぱいだった。
蓮。
12年前。
事故。
青い腕時計。
そして――
「……誰なんだろう」
静佳が呟いた瞬間。
「静佳」
「……!」
振り返る。
「心音?」
心音が立っていた。
「一人で考え込んでたでしょ」
「……うん」
「眠れそう?」
「たぶん」
「たぶん?」
「……」
「また無理してる?」
「してない」
「本当に?」
「……」
静佳は少し考えた。
「……怖い」
「……」
「初めて」
静佳が小さく言う。
「私、今まで怖くても一人でなんとかできるって思ってた」
「うん」
「でも今回は……」
静佳の声が震える。
「何が起きてるのか、全然分からない」
心音は何も言わず、隣に座った。
「……だから」
静佳が小さく続ける。
「今日だけ、隣にいて」
「もちろん」
「……ありがとう」
心音が笑う。
「妹なんだから、遠慮しなくていいよ」
「……それ、今言う?」
「だって本当だし」
「……ふふ」
静佳が少し笑った。
***
その頃。
別の部屋では――
湊音とおさでいが話していた。
「兄ちゃん」
「ん?」
「俺さ」
「うん」
「静佳を守りたい」
「……」
「昔もそうだったけど」
湊音が拳を握る。
「今度は、何があっても守りたい」
おさでいは少し驚いた顔をして。
「……そうか」
「うん」
「でもな、湊音」
「何?」
「守るって、一人で全部背負うことじゃない」
「……」
「周りを頼ることも、守るってことだ」
「……」
湊音は少し考えて。
「……分かった」
「よし」
おさでいが頭を撫でる。
「兄ちゃん……」
「ん?」
「もうちょっと強くなりたい」
「今でも十分強いよ」
「でも――」
「大丈夫」
おさでいが笑う。
「俺たちがいるから」
***
翌朝。
「おはよー!」
いつものように湊音が事務所へ入る。
「おはよう」
静佳も入ってくる。
「……?」
二人が同時に足を止めた。
事務所の空気がおかしい。
みんなが一箇所に集まっている。
「どうしたの?」
静佳が聞く。
莉犬が振り返った。
「……昨日の写真なんだけど」
「うん」
「青い腕時計の人」
「……」
「一つ、分かったことがある」
「何?」
莉犬が写真を机に置く。
「この写真――」
指を差す。
「昨日、事務所の近くで撮られたものなんだって。」
「……え?」
湊音の顔から笑顔が消える。
「じゃあ……」
静佳も写真を見る。
そこには。
事務所の前を通り過ぎる――
一人の人物。
そして、その手首には。
青い腕時計。
「……」
静佳が息を呑む。
その瞬間。
事務所の電話が鳴った。
「……はい」
マネージャーが受話器を取る。
「STPR ONLINE STOREですが――」
数秒後。
マネージャーの顔が青ざめる。
「……え?」
全員が振り返る。
「どうしました?」
「……今」
受話器の向こうから聞こえた声。
それは――
低く、冷たい声だった。
『――湊音と静佳を、蓮から離してください。』
「……!」
そして。
電話は切れた。
誰も動けない。
静佳が、震える声で呟く。
「……私たちを……?」
湊音が静佳の前に立つ。
「……大丈夫」
静佳が顔を上げる。
湊音は拳を握った。
「今度は、絶対に離れない」
その瞬間。
事務所の窓の外。
道路の向こう側に――
青い腕時計をした人物が立っていた。
そしてその人物は。
こちらを見ていた。
――まるで。
ずっと、二人を見張っていたかのように。
コメント
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うわあああ第16話読み終えたよ…!!😭💕 12年前の事故が“仕組まれたもの”だったって衝撃すぎるし、青い腕時計の人物が今も近くにいるってゾッとする…!! でも、静佳が「今日だけ隣にいて」って心音に頼むシーンがめちゃくちゃエモかった…普段強がってる子が素直に弱音を吐けるの、尊すぎるだろ…!! 湊音の「絶対に離れない」って決意も熱いし、兄弟の絆が光ってたよ…! 続きが気になって仕方ない、心音さんお疲れさま!!🔥