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幸せボケなママは、本当にあたしの好きなものだって、なんにも知らない。
「この色、いいでしょう? あなたも好きな色よね? もちろん着るでしょ?」
ショッピングに出かけて、あたしが着もしない服を、まるで当たり前のような顔で押し付けてくるママは、
「うん、好きだよ。着るね」
っていう肯定の返事しか、初めから求めてない。
『違う、そんなパステル調な明るい色じゃなくて、もっとモノトーンの落ち着いた色の方が、あたしは好きなの』
なんて、本音をもし言ったりすれば、
「そんな暗そうな色なんてやめて、こういう明るい色にした方が、断然可愛いらしいわよ」
とかって、ママからは決めつけの答えが返されるだけで。
そう、ママが娘と続けていたいのは、目がチカチカしそうなくらいにひたすら明るい色に囲まれた、ウソくさいアニメの中みたいな、ほのぼの家族のマネごと──
ウチはうまくいってるだなんて思ってるのは、パパとママだけ。
なんとかさんとこじゃ、ここ何年も夫婦で口もきいてないんだってとか。
ママは、そんな話を楽しそうにもして、
「だから、ウチはたまにケンカもするけど、全然マシな方よー」
とかって、笑ってるけれど。
このウチが、どこかとくらべてマシかどうかなんて、そんなことどうでもいい。
あたしにとって、ここは、
ただの、息苦しいだけの場所でしかない。
時々このウチの全部を、めちゃくちゃに壊してやりたい衝動に駆られる。
部屋の家具全てをひっくり返し叩き壊して、ぶっ潰したら、どんなに気もちがいいだろう。
バットでも思うままに振り回して、家中の物をぶち壊しまくって……ねぇ、そうまでしたら、パパもママも、あたしの思いに気づいてくれるのかな…?
こんな、上っ面ばっかりの家、気もち悪くて。
吐き気がしそうで、もう住みたくなんかないよ。
住みたくもないのに、無理して住む必要なんてないでしょ?
もともと、あたしのいる場所なんてなかったんだし。
あたしは、あたしの場所を見つけるから。
だからね、もうこのウチを出ていくの。
パパやママが自分たちの趣味にかまけてるうちに、あたしはひたすらバイトをして、けっこうお金もたまったしね。
どこに行くかなんて、教えてあげない。
せいぜい子どものいなくなった不幸でも、感じてみれば?