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小さな矛盾に気づいた時、私は大きな勘違いをしていた事が分かった。ようやく気づいた得体の知れない恐怖は私の体を蝕むばかりで、気づくのに随分時間がかかってしまった故ここから逃げられないことももうわかっていたはずなのに、足は必死に出口を求め走り続ける。

行く先々で知ってる人も知らない人も含め大勢の人々が私の行く手を血眼になって阻止しようとする。

ここに居る皆は頭に頭がいかれてしまったようで、私がこの世界に居てはいけないと言う事を信じようとする人はいない。

そうやって世界の異物となった私は、ここに存在してしまっている弊害か頭が徐々に徐々に腐敗してゆく。

もう溶けたゾンビの脳みそみたいになった私の頭ではまともな考えが出て来なくなってきた。


頼むから…頼むから元の世界に返してくれ…






-私は何もおかしく無い-


          日帝













「おはよう日帝、調子はどうかな」


軽快な様子で話しかける。

先生曰く、病状を考えるにあまり不安や緊張感、恐怖感を与えてはいけないのだと。


「ナチスか…調子はまぁまぁだな…」


言葉とは裏腹に青ざめた顔をしているのを見て、なんて嘘が下手なんだと思う。

たった一週間前の話だった。

日帝が俺の家で深夜に暴れ始めた。

枢軸国メンバーを出来るだけ集め、俺と日帝、イタ王、フィンランド、タイの5人で久しぶりに会ってや第二次世界大戦当時の思い出を語り合っていた矢先の話であった。

暴れた時はPTSDかとも思ったが翌日起きた日帝の話的にそうでも無いらしい。

この世界は偽りだったんだとか訳の分からない話をしていた。

一週間も経てば妄想も随分と落ち着き暴れた事について謝って来た。


「安静にしとけよ。ほら、みんなからの見舞い品」


そう言って差し出したのはA4用紙サイズの紙袋である。

中身は面会に来れないイタ王とフィンランドとタイ、そして俺からの心ばかりの品だった。

精神状態を安定させるためにあまり面会には人を呼んではいけないとの事だ。

そこであの中から一番落ち着いてそうな者を代表として面会に行くことにしたのだ。

これは精神病院の先生の判断である。


「あぁ…悪いな」


そう言って見舞い品を受け取るとベットの真横である棚の上に置いた様だ。


「もう容態は安定して来たようだな。すぐみんなと再会出来そうだ」


「そうだな。嬉しいよ」


嬉しいという言葉とは裏腹に日帝は何やら考え込んでいる。

嫌な予感がする。

まだ日帝はこの世界を偽物とでも考えているのか?


「あー、日帝?何を考えているか知らないが、人生楽に生きるコツは物事を深く考え過ぎない事だぞ。俺たちはもう現役じゃないんだしそれくらいいいだろう」


「…」


は…?

私が先程の言葉を放って数瞬。

彼は俺に向かって殺気を放った。

イタ王達では気づくことすら出来ないほど一瞬であった。

あぁ。ミスったか。

日帝は今からは俺を警戒すべき対象として見るんだろうな。

いや…こいつは殺気を隠すのが妙に上手い。

元より私の事は警戒していたのかも知れない。

日帝の言っている妄言で考えると私は偽物世界で生きているナチスは偽物であり、この世界の真実に気づいた日帝を留めようとする役割ということになる。

深く考えすぎるなと言う言葉が日帝には敵として見るに正しい奴と言う判断をさせたんだろうか。

やらかしたな…容態は全く持って良くなっていないようであった。

手洗いに行ってくると言い残し一旦私は部屋から出た。

あまり今一緒にいるべきでは無いだろう…

そう思ったのだが………






「先生!!日帝さんの姿があません!!」


その声が廊下から聞こえたのはお手洗いを済ませ出ようとしている時であった。

焦って病室に戻ると、最初から居なかったように忽然と姿を消していた。

やはり退役したと言えども帝国軍人。

気配やら何やらを全て消して去っている。

だが俺もまた帝国軍人である。

今の疲弊しきり散々走って息が荒い日帝を見つけだすなど造作もない。

俺は先生に自身が見つけられることを伝え急いで駆けるのであった。






「日帝…見つけたぞ……はぁ…はぁ…」


そう呼びかけると日帝は怯えたようにこちらを見やる。


「あぁナチス。我が友よ…頼むから見逃してはくれないか…」


「それは無理なお願いだ。日帝、お前の精神状態は不安定すぎる。一緒に治そう…な?」


病院から少し離れた錆びが多い路地の中で必死にそう呼びかける。


「嫌だ…あそこは…いや、この世界は私のいるべき場所では無い。頼むよ…ここからもう出してくれ」


「さっきからずっと何言ってるんだ!?日帝には居場所が無いとでも言いたいのか!?ここにあるだろ!?俺がいる。お前が未だに他の国々に責められていることは知っている。でもそれは俺もそうだ。それに日帝から見たらたとえこの世界が偽物だったとしても私は本心で日帝を心配している。大丈夫だ。他のどこにも居場所が無くとも俺の所にある。なぁだから頼むよ。病院に戻ってくれ」


「………悪いナチス。やはり病院やこの世界に残るのは嫌だな。俺は本物のナチスと会いたいんだ」


気づいた時にはもう遅かった。

日帝はそう言い残して爆煙を投げ去った。


見失ってしまった。


「あぁ日帝…なんでこんなことに…偽物ってなんだよ…頼むから俺の元に帰ってきてくれよ…」


願い虚しく私の呟きは空を切った。

あの妄想はどうしたら止められるのだろうか。

どうしたらまた仲のいい友人に戻れるのだろうか…

脱力感に身を任せると私はすぐに意識を手放した。











日帝が交通事故に遭ってもう1ヶ月となる。

日帝は時々「ナチス…」と俺の名を呼んでいた。

その度に返事を返していたが日帝には聞こえていないようでうなされるばかりであった。

随分と長い悪夢を見させられているようである。

ある日、「この偽りの世界から早く出たい」などと口にしているのを見て必死にこっちに戻って来ようとしている事が分かった。

夢の中の俺と日帝が話している時のを聞いて分かるのは、俺が夢の世界に引き止めようとしている事だった。

その度に俺は彼の体を揺らし頼むから出てきてくれと懇願するばかりである。

日帝にこの言葉は届いてない様だったが、断ったらしい。

安藤の中、必死に起こす手段はないか模索する。

インターネットでも図書館でも行き回った。

だがそれらしい記事は一切見つからなく無駄に時間を浪費するばかりである。


頼むよ日帝…俺にはもうお前しかいないんだ。

全世界が未だに俺を恐怖の対象として見ている以上この世界に俺の居場所はない。

唯一である居場所は日帝なのだ。

その日帝すら居ないとなると俺はどうすればいい。

頼むよ日帝。

早く起きてくれ…

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