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私
達は何かを失って初めて、新たな出会いを得ることが出来る。大切な人を失った痛みがあるからこそ、新しい希望が生まれるのだ。しかし失ったものを嘆いてばかりはいられない。失ったものの分だけ得たものがあるはずだ。失ったものに目を向ければ絶望しか生まれないが、そこから得られた経験や知識は必ず次の一歩を踏み出す為の力となる。失われた過去を振り返るのではなく、今この瞬間を生きる為にこれから先のことを考えよう。明日の為に今日を犠牲にすることなどあってはならない。命は常に輝いているものだからだ。その輝きを曇らせるような真似は決してしてはならない。それがどんな結末を迎えたとしても、最後まで全力で足掻こう。
たとえそれが、自分自身の命であろうとも―――。
それはまるで、夢の中の光景のように。
どこか現実味のない世界で、彼はただ呆然と立ち尽くしていた。
(……ここはどこだろうか?)
辺りを見渡すとそこは薄暗い空間が広がっていた。光源らしいものが見当たらないにも関わらず、周囲がはっきりと見えることに違和感を覚える。それに先程まで自分が何をしていて、何故ここに居るのかすら思い出せなかった。
『――――』
不意に声のようなものが聞こえた気がしたが、それを確かめる術はない。
何故か酷く懐かしさを感じるのだが、同時に胸を締め付けられるような苦しさが襲う。思わず自分の身体を見下ろすと、全身には無数の傷跡があり血塗れになっていた。特に右腕に関しては酷い有様で肩口から先が消失しており、断面からは肉の代わりに骨が見えている状態だった。
そこまで確認したところで激しい頭痛に襲われる。
(またあの夢を見た)
そんな思いと共に、彼は意識を取り戻す。
「お目覚めですか?」
ベッド脇に立つ女性が声をかける。
「ああ」
短く答えると、女性は笑顔を見せる。
「よかったです。丸一日眠ったままだったんですよ」
女性の言葉を聞いて、自分の置かれた状況を思い出す。
(確か俺は……)
記憶を辿る。
目の前の女性の名はリーゼロッテ=アーレンスバッハ。この国の第一王女にして王位継承権を持つ姫君。
俺の名前はアルフォンス=エーベルハルト。伯爵家の次男坊でありながら、何故か王国の騎士団に所属することになった変わり者。
「もう大丈夫よ!安心しなさい!」
「え?」
「今助けてあげるわ」
「ちょっと待ったあああ!!!!!!!」
「なに!?」
「なにやってんだお前はぁーッ!!!!」
「だってこのままじゃあの子可哀想じゃない!」
「だからってこんなことするか普通!?」
「いいじゃない別に減るもんじゃないし!」
「いやそういう問題じゃねえぇんだよぉおおお!!」
「うっさいなぁ~、さっきまで気絶してたくせに……」
「なんのことかな?ボクわからない」
「はぁ……。そんな事言ってる場合じゃないでしょ?」
「はい、すいませんでした」
「とりあえず、今はあの子を救い出すのが先決ね」
「そうだな、よし行くぜ!!」
『変身』
「あんたそれ好きだよね」
「うるせっ!ほっとけ!!」
「あらら~、随分とボロボロになって帰ってきたねぇ」
「どうしたんですか?その傷だらけの姿は」
「ちょいとヘマをしちまってな……」
「でも、おかげであの子は無事保護できたみたいだよ♪」
「そっか、よかったぜ……」
「うん、ほんとに良かった……」
「もうね、あの時のあたしたちはマジでヤバかったよねー!」
「あぁ!本当に一時はどうなる事かと思ったよ!」
「いやぁ~まさかあんなことが起こるなんてねぇ~!」
「「アハハッ!!……フゥ」」
「「は?」」
「おいテメェら今なんつった!?」
「そうだそうだ!!」
「お前らが俺らの事をそんな風に思ってたとはなぁ!?」
「そっちこそ何言ってんだよぉ!?」