テラーノベル
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それぐらい、僕にとって身近に感じられる生々しい暴言だった。
画面の中の役者が演じるお芝居と言えども
その暴力的な言葉と怒号を聞いて
脳裏には、真っ先に浜崎くんと過ごしたあの絶望的な過去が浮上した。
「…ッ!」
瞬間、強烈なトラウマがフラッシュバックとして蘇り
手に持っていた皿が、震える指先からスルッと滑り落ち、布巾を離れて床に落ちてしまった。
パリンっ、と高い音が部屋に響き渡り
皿が床に落ちたのも、木々に散らばって割れたのも下を見ずとも音の衝撃ですぐにわかった。
なのに、僕の目線はテレビ画面に釘付けになったままで
そのドラマの音声がトリガーとなり
浜崎くに与えられた断片的なトラウマの記憶が、頭の中で映画のように再生されてしまう。
(…消さなきゃ、消さないとまた…っ)
恐怖で震える指で、咄嗟にリモコンの電源ボタンを強く押し込んで画面を真っ暗にした。
部屋に重い静寂が戻る。
ふと、自分の足元の床を見れば、皿の鋭い破片が散らばっていた。
早く片付けないとと思って慌てて床にしゃがみ込むのに
恐怖と動悸で手が激しく震えて、思うように動かない。
脳内で、あの声が直接響く。
〝昨日なんで電話出なかったんだよ〟
〝おい、スマホ見せろ〟
〝邪魔すんなゴミ〟
〝お前は俺の所有物だろ〟
過去に浜崎くんに言われ続け、心になすりつけられた罵倒の言葉たちが、鮮明に蘇って僕を呪う。
それはいつものことだ。
こうやって、いつだって僕の平和を脅かすのは、消えてくれない過去のトラウマだ。
それでも、いつだって敦がそばにいて抱きしめてくれるから
何とか正気を保ち、落ち着けていた。
だが今、敦はまだ仕事から帰ってきていない。
一人きりの空間。
それに、もうすぐ彼が帰ってくるにしろ
こんな醜く取り乱した場面を見たら、敦に無駄な心配と負担をかけてしまう。
あのトロフィーを落としたときの記憶が脳裏をかすめた。
あれと似ていた。
あのとき、敦は僕に
【次はね、何か失敗したら『怒られる』って怯える前に『敦なら一緒に何とかしてくれる』って考えてほしいんだ】
と、優しく教えてくれた。
でも、その温かい言葉も、パニックを起こしている今の僕にはなんの意味もなさなかった。
恐怖が思考を塗りつぶしていく。
多分、これくらいのことで敦は怒ったりしないし
きっと怒るどころか、心配してくれると思う。
それでも、それよりも、一刻も早く破片を拾って片付けておかないと
疲れて帰ってくる敦の仕事を増やしてしまう気がしてならない。
それだけは避けたかった。
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莉乃ちゃん
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