テラーノベル
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冬になった。桜子ちゃんの好感度数値は61%で、数値的には悪くないけど、エンディングを迎えられるほど高くはない。 出来れば卒業式までに、80%くらい欲しいのだけれど、ちょっと難しいかもしれない。
秋にはコレといった、好感度を上げる学校行事は無い。学校行事として体育祭はあるけど、あれはプレイヤーにミニゲームを楽しんでもらうイベントで、女の子達と交流する要素はほぼ無い。
残るは、クリスマスくらい。
バレンタインは、もう好かれてる女の子から、チョコが貰えるイベント。何のためのイベントかと聞かれたら、好感度確認のイベント。プレイヤーは、私みたいに数値で見える訳じゃないからね。
という訳で、クリスマスに決着させるつもりで、好感度を上げなきゃならない。最低でも70%、冬休みや正月イベントとかを加味しても、それくらいは欲しい所。
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は〜〜〜〜………、なんでそうなるかなぁ。
朝倉くんは当然、クリスマスには桜子ちゃんを誘うだろうと思ってたら、『佐伯さん、クリスマスの日に、調査をお願いしてもいいかな』だもの。
こんな時に調査してどうすんの。ここが本番であって、準備はその前に済ませておくべきでしょうが。
いや、断れない私も悪いよ? でもオッケーした段階では、何か策を講じて、デート相手をすり替えてやろうと思ってたんだよ。
後から、直接桜子ちゃんを誘わせた方が早いって気付いて、自分のバカさに呆れちゃった。
まあ、策は講じますけどもね。
朝倉くんには、桜子ちゃんを落としてもらわなきゃ困る。ここから、他のヒロインが攻略対象から外れないとも限らないし。
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クリスマスの当日。
結構、早く駅前に着いてしまった。
朝倉くんは、どうせ時間ピッタリにしか来ないのに、早く来てしまった。
ゲーム世界でも、冬は普通に寒いんだから、私も時間ピッタリで良かったじゃん。
協力を頼んでる、ミキちゃんと桜子ちゃんに連絡するにしても、こんなに早く来なくたって良かった。
早く来て良かった事なんて、フリフリドレス姿でデートする、さやマヤカップルを見れた事くらい。
暖かそうだったなあ、下ろしたての毛布みたいな、フワフワドレス。私ももうちょっと、暖かいの着てくれば良かった。
カーン……カーン……カーン……
やっと鳴った時報の鐘。いや、私が勝手に早く来ただけなんだけど、なんでか不満が湧いてくる。
「ごめん、待たせちゃったかな」
「私が早く来すぎただけ……ですが、こういう時は、男性が早く来るものでございますよ」
「ごめんごめん、次は早く来るから」
うむ、次からは是非そうしてくれ。私にじゃなくて、桜子ちゃんにだけど。
「それじゃあ、行こうか」
「はい、お伴いたします」
クリスマスだけあって、街はどこもかしこもカップルだらけ。
街路樹には電飾が巻き付けられてるし、そこかしこから小田和正とかマライアキャリーの歌声が聴こえてくる。
ショーウインドウには、サンタさんやトナカイの人形。チラシ配りや、客引きのサンドイッチマンまでサンタ帽を被ってる。
本当、なんでこんな日に調査依頼なんかしたのよ。
普通に桜子ちゃんを誘って、普通にデートしたら良かったじゃん。今の好感度なら、断られたりしないでしょうよ。
「クリスマスの町って、なんかいいよね。みんな幸せそうで、見てるとこっちまで幸せな気持ちになるね」
「そうですね、情報屋としても、幸せそうな人は大好物です」
願うならば、このカップルの群れに、朝倉くんとヒロインちゃんも加わってほしい。
渋い喫茶店でお茶をして、冷えた身体を温めた。
朝倉くんもなんだかんだ、気が利くようになってきたみたい。
イケメンで優しくて、その上そこそこ気が利く朝倉くんでも、桜子ちゃんを攻略するのは難しいんだから、この世界は理不尽だ。
「そろそろ行こうか」
「そうですね。行きましょう」
この後のデートプランもあるんだろうけど、それは実行されない。
店を出た所で、偶然を装ったミキちゃんに捕まって、私は無理矢理連れて行かれる。
更に偶然、桜子ちゃんが通りかかって、この後予定が無いのなら、一緒に行きましょうと誘う。
という、三文芝居を演じる手筈になっている。
カランカラン………
ベル付きドアを押して、表に出ると__
「あ、佐伯先輩!」
予定通り、ミキちゃんがやってきた。
「いーやーでーすーーー!!! 佐伯先輩は、ボクとデートするんですーーー!!!」
散々に駄々をこねまくってもらって、元々の予定を崩してでも、マヤちゃんとデートしてきゃならない状況を作らせる。
マヤちゃん、結構演技派だ。
三文芝居になるかと思ったら、そこそこ形になってる。結構才能あるんじゃない? 卒業したら、女優さんになってもいいんじゃない?
そこに『偶然』現れる、桜子ちゃん。
「あ、朝倉君。ふふふ、デート相手を取られちゃったなら、私と行く?」
桜子ちゃんも、お芝居上手いな。
ギャルゲー世界の標準装備なのか、たまたま才能のある2人なのか、とにかくやるじゃないの。
「も……申し訳ありません。こういう状況でございますから、私はここでお暇させていただきます」
私も結構、お芝居上手いと思うんですけど、そもそも『情報屋佐伯佳奈』の時点でガッツリ演技してるから、慣れてるっちゃ慣れてるけども。
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「うん、いってらっしゃい」
「佐伯さん、朝倉君を取っちゃってゴメンね」
「いいえー___
マヤちゃんに引っ張られて、朝倉くんから見えない所までやってきた。
「先輩。ボク、上手く出来てましたか?」
「ええ、それはもう。ミキさんは、女優の才能がありますよ」
「ありがとうございます。それじゃ、これからお礼に付き合ってもらいますね」
ミキちゃんは、私の手を引いて、浮かれる街に連れ出した。
桜子ちゃんも朝倉くんも、上手くやってくれよ。私が出来る事は、多分もうないから。
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