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【ガイガンとエクス】
前半ガイガン視点、後半エクス視点
「おい。」
上空から瓦礫となった街を見渡す怪獣に俺は声を掛けた。
「……もっと、他にあったのかも知れない。」
振り向いたその顔は悲しみが溢れている。こいつ、エクスは「ゴジラ、、。」と呟いて、俺はそれが気に食わなかった。無性にイライラする。
「なんだ?そんなにあの怪獣が心配か?」
「当たり前だ。あの子は、アルバートが望む『最高傑作』だぞ。失う訳にはいかない。」
「………。」
本当にそれで良いのかと言いかけた言葉を飲み呑む。
「だがよぉ、あいつは俺らの敵だぜぇ?お前は嫌じゃないのかよ。」
エクスが顔を上げ、笑った。すっげー悲しそうな綺麗な笑顔がそこにあった。
「ああ、悲しいな。」
平然かつ淡々と答えるエクスに、「ほんとか?」と聞き返してしまった。
「お前も分かっているだろう?人間があの子を逃がし、あの子が人間と過ごした事によって、もう此方の味方ではないというのが。」
「…………それをお前は良いのかよ。」
「構わない。あの子がそれを選んだのだから。」
エクスは俺から顔を背けた。
こいつはいっつも嘘をつく。本当は嫌なくせに、1番傷付いてるのもお前なくせに。
「人間を信用したのがダメだったな、。」
「そうだな。……なぁ、聞いて良いか?」
「あぁ、、何だ?」
「お前は、今までこの数千万年の間『幸せ』だったか?」
こいつにとっちゃぁ、地雷かも知らんが、
「……………。」
エクスは面食らったような顔で俺を見て来た。その顔を俺は小突く(結構、力込めて)。
「ぃ”っ、、、、おい。」
「うっせぇ、早く答えろ。」
俺が答えを急かして、エクスは少し考える。
「ふふ、。」
「あ”っ?何笑ってんだぁ?」
俺は口を片手で抑えながらクスクス笑うエクスを覗き込む。そしたらエクスから、「すまんすまん。」と聞こえて来た。
「私は幸せだよ。」
「…嘘だな。」
「嘘じゃない。」
「嘘だ。」
「嘘じゃない。」
「お前は信用なんねぇ。」
「心外だ。」
エクスが顔を顰めて言う。
「良いのかよ、、。」
「何度目だ?」
「2回目。」
「私は、アルバートが望むのならそれで構わない。アルバートがそれで喜ぶなら私も幸せなんだ。」
自分の事は良いのか。
「………不満でもあるのか?」
「大有りだ。」
「そうか。まあ、お前と違って私は自由じゃない。太陽の光にも浴びる事が出来ないし、身体も病弱だからな。お前とは、物事の価値基準が違うんだろぉ。」
「……嫌味か?」
「まあな。……私も希望を完全に捨てた訳ではない。あの子がもし、、、もし、戻って来たら、私の『夢』に1歩近付く事が出来る。」
「本当にそう思ってるか?」
「まぁ、あの子がこちら側に来る事はないだろうが。私に似ているからな。」
ああ、お前も1匹で何かを抱え込むからな。
でもよ、もしゴジラが戻って来たらお前はあいつらにとって、もう要らなくなるんじゃねぇか?俺は心の中でそう思った。なんなら、アルバートもお前の事を愛してるか分かんねぇのに。
「そんな顔をするな、みっともないだろ?」
クスクスと笑いながらエクスが俺の顔を覗き込む。
「………お前ってほんと、あの蛾みてぇだ。」
「私は守り神ではなく侵略者だぞ?」
お前が俺の思いに気付く事なんて無い様に、『俺ら』もお前の気持ちを分かってやれねぇんだよな。
そしたらエクスがケホケホと咳き込んで、
「……アルバートが呼んでいる。」
あいつは飛行船の中へ戻ってった。
無性にイライラする、あいつがアルバートに着いて行くのも、ゴジラを優先するのも、自分を大事にしないのも。
あいつの傍に何千万年と居たから分かる。
「ゴジラ、、、お前は、こっち側に来てくれねぇかよ、。」
少しの希望も無いその願いに、俺は心の底から賭けた。あいつが少しでも幸せになれるよう。
「エクス。お前はずっと叶えたかった夢より、数百年しか生きてない奴を優先すんのか?」
“お前はそれで『幸せ』になれるのか?”
エクス視点
「…………。」
あいつの独り言が聞こえる。分かってるんだ、自分が1番。
「エクス、どうした。」
モニターからアルバートが私に話し掛ける。
「気にするな。」
「しかし、、お前はそれでいいのか?お前も身内と争うのは嫌だろう?」
そりゃそうだ。身内とだけじゃない、誰とだって争いなんてしたくない。
「………あぁ、、だが、これは私が決めた事だ。」
例え、ゴジラが敵になったとしても、私はこの計画を実行する。私にはもう『時間』が無い。
「………アルバート。」
「どうした?私の最高傑作。」
「私は、、、、待つのは疲れたぞ。」
アルバートは目を瞑って、「そうか」とだけ言った。私もそれ以上は何も言わなかった。
これを計画したのは私だ、
そして、この計画をアルバートは望んでいる
彼の、、彼等の為にも私はやらなければならない
しかし、、
私には出来るのか?
こんな事をして、
私は本当に満たされるのか?
誰も、私の事など考えてはくれないのに、
どれだけ私が『他』を愛したとしても、『他』は私を愛してくれやしないのに
「……私を望む者など、、この世には居ない。私は誰からも求められない。」
誰も愛してくれない
愛された事が無い
『しあわせ』を知らない怪獣
【しあわせ】
END
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