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69 ◇幼馴染の大林雅代
小桜哲司は元妻の温子の妹凛子と浮気をした上に、妻の温子に離婚を迫り
離婚した。
いや、少し違う。
実のところ、離婚は哲司の本意ではなかった。
温子に哲司との離婚を迫ったのは温子の妹、凛子である。
それを受け、温子が離婚を受け入れたことで哲司と温子は離縁してしまう。
家から追い出された温子だったが、縁あり、勤め先の工場の社長北村涼に
見初められ玉の輿に乗り、再婚する。
富裕層の北村涼は誠実で真面目な人柄であった。
そして温子のことをとても大切にしてくれ、愛してくれた。
温子は愛情にも財にもめぐまれ大層幸せになった。
片や、哲司は浮気相手の温子の妹の凛子とも上手くいかなる。
そして、寡夫となり惨めで寂しい暮らし向きになっていく。
凛子は家事もろくすっぽせず、また姉から義兄を寝取ったものの、家庭に
大人しく収まるような女ではなく、刺激を求めてその後すぐに他に男を作って
家を出で行ってしまった。
そのため、哲司には身の回りの世話をしてくれる者がいなくなり、着るものなど
身なりも構わなくなりやさぐれていく。
そんな折、哲司が実家に帰ることがあった。
そのときに、結婚していたのに「子なきは去れ」と婚家から離縁されて実家へと
出戻っていた幼馴染の大林雅代と久しぶりに再会することになる。
懐かしくて大林雅代を茶屋に誘う哲司。
雅代の話によると、実家に出戻ったものの仕事もなく実両親からは
邪険にされているらしく、毎日が辛いと打ち明けられる。
もうすでに離縁されてから1年半以上が経っていると聞く。
――――― シナリオ風 ―――――
1913年(大正2年)初春/東大宮市
◇回想/哀れな暮らしぶり
哲司哲司、ヨレヨレの背広で歩く。
家は散らかり、食事も粗末。
(N)「哲司は、元妻の妹・凛子と浮気の末に温子に離婚を迫ることとなる。
だが、それは哲司の本意ではなかった。
温子に離婚を迫ったのは……妹の凛子」
それを受け、温子が離婚を受け入れたことで哲司と温子は
離縁してしまう。
その後温子は良縁に恵まれ富裕層のお相手、北山涼と結婚する。
そして誠実で真面目な男性を伴侶とし、幸せな日々を過ごす。
◇ ◇ ◇ ◇
凛子、家事もせず勝手気ままに過ごし、母親との諍いが決定打で
すぐに別の男に走る。
このような形で、哲司は温子と凛子のどちらとも縁を繋ぐことが
できなくて結局は独り身となる。
(N)「取り残された哲司は……寡夫として惨めで孤独な日々を送ることに
なった。
そんな折、哲司が実家に帰ることがあった」
◇ 雅代との再会
〇東大宮/茶屋の座敷席
久しぶりに再会した哲司と幼なじみ・雅代。
湯呑みを手に、静かに語り合う。
雅代(伏し目がちに)
「……離縁されて、もう一年半。実家にいるけれど、仕事もなくて。
両親からも疎まれて……毎日が辛いの」
哲司、複雑な表情で黙って聞く。