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佐藤力斗。これで2人め。
力斗さんのアカウントがLINEに追加された。正直ちょっと嬉しい。LINEの友達一覧がひとり増えるだけで、こんな陽気な気分になれるとは。いや、酔ってるからかもしれないけど。
力斗さんのトーク画面に行く。鳥の可愛いキャラクターのスタンプ。それとら何かのURLが送られていた。
「なんだすかこれ?」
「友達の証として教えといてやるよ」
妙にニヤニヤしている。なんだろうと思いながらURLをタップすると、掲示板サイトに移動した。
地域別にページがある。なんのページかわからず、適当に自分の住んでる地域の書き込みを見てみた。
「なんですかこれ!」
若干怒鳴り声になりながら力斗さんに聞く。
そこには出会いを求める女性たちの書き込みが溢れていた。
焦る様子を見て力斗さんは笑っていた。
「俺がよく使ってる出会い系サイト!楽しめよ!」
そう言って荒々しくズボンで手を拭きながら、力斗さんはトイレを出ていった。
最低。
西宮桃 7月19日 金曜日 22時
「好きです。桃さん」
それは、突然訪れた。
飲み会が終わり二次会が始まる流れになったのだが、田中店長に気まずく感じてそのまま帰宅しようとした。
すると凛さんが
「じゃあ私も」
というので2人きりで駅に向かう。
当たり障りのない会話を続けながら、途中の長い信号を待っている時、彼女は俺の腕をぎゅっと掴んで顔を赤らめ静かに言った。
告白されている。
明日何しようかとか、溜まっているゲームを消化しなくちゃとか、全く関係のないことを考えていたせいで、告白されていることに気づくのに5秒くらいかかった。
す、き、で、す、さ、と、み、さ、ん。
言葉遊びのように頭の中で単語が蠢き、ようやく凛さんが言ってることを理解した。
しばらく俺の目を見ていた凛さんが、途端に耳を赤くされて下を向く。顔もかなり赤くなっていた。これは酔ってるからじゃないだろう。
好き?
凛さんが、俺の子を好き?
信号が青になり、ゆっくりと人が流れていく。明日が土曜日だからか、こんな時間でもそれなりに人がいた。沈黙のまま向かい合う俺たちを、通りすがりの人達は不思議そうに見るが、すぐに興味をなくし過ぎ去っていく。
「凛さん、俺のこと好きなの?」
沈黙に耐えきれず聞くと、凛さんは目を背けながら小さく口を開く。
「好きです」
「それって、その、どういう」
「どういうって……」
「えっと、えーっと、ライクか、ラブか」
何を聞いてるんだ自分は。アホか。
凛さんは少しだけ緊張感が解けたのか。少しだけ笑っていた。
「ラブです」
その笑顔が頭の中を駆け巡るを
仕事中わならないことをよく確認しに来た。目が合うと時々笑いかけてくれた。それにさっきの飲み会の時、俺が田中店長に失礼な態度をとったあとでフォローを入れてくれていた。
そうか!好きだったのか。俺のことを。
その瞬間、紅のことな頭に浮かんだ。
昔、俺を残して死んでしまった、中学時代の恋人。
そう、死んだんだ。紅はもう死んでる。でも、俺だけが幸せになったら、紅に申し訳ないじゃないか。
だって紅は、1人で悲しい結末を迎えてしまったわけで。紅とは付き合っていたまま死別してしまったわけで。
その時突然耳鳴りがした。
思考が鮮明になる。
そうだ。俺がこの前見た夢の内容。思い出した。
映画館で見ていたのは、あの日の光景だったじゃないか。
紅との別れの瞬間の光景だ。
誰もいない映画館で独り寂しく、紅が死んだ日の出来事を見ていた。
頭の中の彼が囁く。
生きて、生きて、そして死ね。
彼はそう言っていた。俺を置いて先に死んだ彼。
彼を大切に思う気持ちは変わらない。俺が死ぬまで、きっと彼のことを忘れることは無いだろう。
でもあれから10年以上経つ。10年以上だぞ?
断ち切るわけじゃない。自分の心から切り離すわけじゃない。