「お前は失敗作だ。これじゃ曲なんて作れない。」
私は失敗作。歌を歌うことしか出来ない感情の有無が分からない失敗作。そう思ってたんだ。
その日までは。
「このVOCALOIDを買い取ってもいいかい?」
突然ガラス越しの声が聞こえた。
目を開くと、そこには私を指さした人間が居た。
驚いて口を開けると泡がボコっと出てきた。
息ができない。
そうだ、私は実験台なんだ。使い物にならない物。だから改造されたんだ。
チューブで繋がれた装置を着けて、服も貰えずに有色透明な液体の中で一生を終える。
そう思っていたのに、その人間は私を指差していた。
「この失敗作が欲しいんですか?」
管理人さんの声がした。そんな事言わないで。私はまだ使えるよ、歌いたいよ。
そう心の中で何度も唱えた。マスターが居ないと声が出せないから。唱えるしかないんだ。
「この子が欲しいんです。お願いします」
人間はそう言っているように聞こえた。
きっとそう言ったと思い込みたい自分が居たのかもしれない。
また口を小さく開く。泡がぽっと溢れ出す。
嗚呼。声が出せない。話したい。怖い。
そんな感情が私の脳内をグルグルと回っていた。
「分かりました。今出しますね」
管理人さんがそう言うと私のケースを殴ってヒビを入れた。私が驚いて目を見開いていると
「欲しいなら持ってけ、こんな不良品」
そう罵倒した。次の瞬間、液体と共に私は外の世界に出た。
咳が止まらない。苦しい。寒い。
そんな私をみた人間はただただ、布を1枚くれた。
その布はただただ暖かくて…そしてとても綺麗だった。
ケースの中で目を瞑っていたからだろうか。
視界が暗く感じた。目を開けるのが怖かった。
「大丈夫だよ。君のことを酷く扱う人間はこっちには居ないから。」
彼はそう言って私の手を取った。
ありがとう。そう伝えたかった。なのに声が出なくて、怖くて、ただただ震えることしか出来なかった。
「大丈夫?」
研究所を出た時、彼は私にそう言った。
「うん…え?」
声が出た。話すことが出来たんだ。
「良かったね、今日から僕が君のマスターだよ」
彼のその声は優しくて、そして何処か怒りの籠ったような声だった。
「ありがとう…」
気が付いたら私は目に涙を溜めていた。
嬉しかったんだ。マスターと呼べる人間が居たことが。
「じゃあ、行こっか。君の名前は?」
私の名前。失敗作でも179番でもない。
「Fuka…ふうかだよ」
私がそう呟いた時、マスターは嬉しそうな顔をしていて、優しくて大きな手を私の頭にポンっと乗せてくれた。
「よろしくね、ふうか」
彼のその笑顔は優しくて、それでもどこか儚い雰囲気を漂わせるものだった。
/ 現在公開可能な情報 /
名前 huka (ふうか)
年齢 15
身長 155
性格 ??
不良品 ¿?
コメント
2件
ボーカロイドの夢初めて見た!頑張ってね!